「そこ! ミストラルくらい満足に扱えんのか! 」
 『…僕達カレッジの学生だったんですよぉ…』
 「今言ったのバスカークだな? …帰ったら3時間の強制サイクリングがいいか? それとも修正2発か? んぅ? 」
 『ヒぃ! 済みません、すみませんからぁ! 』
 「修正だな、楽しみにしていろよ」
 
 泣き言を散々ほざいてくれる「元」学生連中に俺は軽く檄(げき)を飛ばすが、情けない口答えが帰って来たのでニンマリ
する。まだ口答えをする元気があるだけマシだ。各種残骸が漂う要塞の一部区域に案内され、ヤマト2等兵を除く『元』
学生連中を連れて『お宝探し』に洒落込んでいた。外壁から隔壁を開けて入ると、凄い船の残骸の山だ。所々弾痕に血痕
が残っていたりするのはご愛嬌で、中には水分を失ったノーマルスーツのままの死体、真空中に突然さらされた死体やら
そのまま漂っていたりして、中々のワンダーランドぶりだった。アルスター2等兵なんぞミストラル内で反吐を吐いてしまい、
アーガイル2等兵が慌てて始末した程だ。……死体が残るだけマシな死に方なんだぞと言ったが、お嬢様には解らんだろうな。

 『…ゲーブル、手元のカメラをもう少し先に向けてくれ。そう、そこだ』
 「ミオ、あれか? 」
 『…十中八九、ヤタガラス在中のコンテナだ。レーザートーチを使った後があるだろう?』

 ナハトに『居る』ミオに見せるためリアルタイムで連動させたヴィデオカメラをあちこちに向ける。出所はミリアリア・ハウ2等兵が
ヘリオポリスの半壊したショッピングモールで拝借して来た奴だ。拝み倒して借りた俺に「絶対に傷を付けるな」との注文で渋々貸して
くれるタマなのだから、トールよ、貴様は絶対尻に敷かれるぞ…。それを空間内のあちこちに向けていたのだが、オーブの国籍徽章の
入った丈夫そうなコンテナを発見する。コンテナにはこじ開けようとして失敗したのか、所々焦げ目やら破砕孔やらが残っていた。

 「よおし、俺のお宝は見つけた。貴様等は何か見つけたか? 」
 
 新兵連中に呼びかけると、収穫は0だと言う。ま、こんなモンだろう。…値打ちものなら要塞駐在の奴等がとっくに拝借済みだからな。
ここに保管してあるのは基本的にこれらが『表沙汰に出来ない廃棄物』であるからだ。撤退を呼びかけようとした俺にカズィから連絡が入る。

 『ゲーブル大尉、船外活動してもいいですか? 船の中にはまだ『灯』が点いてるものもあります』
 「同乗者に聞け。ケーニヒ2等兵、操縦を換わってミストラルの姿勢を保ちつつ、カズィを待っていられるか? 」
 『は、はい! やってみます! 』
 「努力する奴は、俺は好きだぞケーニヒ2等兵」
 『や、やっぱり…』
 「何だアルスター2等兵? アーガイルの奴も中々スジがいいんだがな? 」
 『だ、駄目ぇ! サイは許して! 』

 二人一組で3機のミストラルを運用している。サイとフレイ、トールとカズィ、俺とミリアリアでチームを組んでいる。俺はカズィと
組む予定だったが、ヴィデオカメラの件で無理矢理ミリアリアが俺の機に乗り込んで来たのだ。…俺はトールと組ませたかったんだがな。
ミストラルのマニピュレーターでコンテナを捕まえ、隔壁へと急ぐ。『閣下』に中身を知られては非常に困るからだ。先のデータの件も、
デュエルのデータをブリッツと偽って渡したが、あの狸親爺め、いけしゃあしゃあと信じたフリをしやがった。…己の警備兵すら信用して
いないのがこの事例で解かる。誰も居なければ絶対にデュエルであることを指摘していただろう。ジェラード・ガルシア。喰えない男だ。

 「カズィ、30分くれてやる。船に航海日誌や、船内カメラのデータが残っていたら…」
 『わかってますよ大尉、僕に抜かりはありませんから。個人端末を持ってきました。片っ端から記録します』
 「急げよ。俺に自分が漢であるところを見せたいならな? 」
 『期待してて下さいよ、クックックッ…』

 …死体に耐性が出来ているのはコイツだけだった。普段、ウェブでグロテスクなものを見慣れている御蔭だろう。ヤマトとは別の意味で
『壊れている』人間だ。データ収集はガルシアの首に鈴を付けるのには持って来いだ。俺はクロック表示を呼び出し、25分のタイマーを
セットする。5分前行動は新兵となったこいつ等にも叩き込んである。30分後にアークエンジェルが存在していれば御の字だが、な!

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最終更新:2008年08月27日 09:07