「おう、来たか暴れん坊? …かぁいい餓鬼連れてきてどうした? 」
 「何の祭りだコイツは? 」
 「あのキラの坊主がシミュレーターで無傷のジン10機抜きをしてるんだよ」
 
 マードックの親爺さんが目聡く俺達を見つけ、手招きする。ギャラリーが道を開けてくれた。どうやら外部映像出力で大型モニターを接続して、観戦を始めたらしい。エールストライクが鮮やかに回避運動をし、ビームライフルを放った。
 ジンの持つマシンガンに命中し、爆散する。コイツ…!!

 「…随分な真似してくれるな、あの餓鬼…! 」

 こんな腕が有れば、ラウ・ル・クルーゼを名乗るウラナリ坊やの指揮官機を狙う事など朝飯前だったに違い無い。実戦とシミュレーターは当然環境は違う。が、要求される反射神経は変わらない。わざと殺さず、生かして置いたのだろう。

 「親爺さん、今からナハトで乱入出来るか? それも内緒でだ」
 「あん? ああ、並列接続だからな? 向こうの表示消しときゃいいだけだ」
 「ストライク! 俺の方が先…の筈ですが…」
 「済まんなイザーク。馬鹿な部下の教育が先だ。戦場の唯一のルールを教育
  してやる必要が生まれた。…階級の無いZAFTには分からんだろうがな…」

 俺はナハトに駆け寄り、脚部に付いているだろうコントロールパネルを探す。だが、存在しない。…コイツは規格外品だった事に俺は気付き、忌々しさに装甲を殴った。するとハッチが開き、コックピットに上がるワイヤーが射出された。
 気の利き様に呆気に取られつつも俺はワイヤーを掴み、金属環に片足の爪先を突っ込む。ワイヤーが巻き上がって行く。

 「気に入らないんだよ! 気障な真似する糞生意気な餓鬼ってのは…」

 コックピットに潜り込むと、ハッチがオートで閉まる。モニターには人工の宇宙が即座に表示される。…何か憑いてるのか? この機体には? 微かな疑念と共に俺はメニューを開く。ダメージショックのチェックボックスをONにする。コイツはショックアブソーバを利用した振動機能や、空調機構を利用した酸素漏れ等を復活させる機能を持つ。慣れない人間なら5分も経たずに反吐を吐き、低気圧や酸欠に苦しむ仕様でもある。
俺がごり押ししてMSシミュレーター開発時に付けさせた機能だった。

 「殺られる恐怖がまだ解からんのでは成長は見込めん。痛みを教えてやるよ、小僧…」

 シミュレーターでは恐怖も半減するだろうが、そこは遣り方だ。貴様は間違いを犯しつつある。武器を壊して得意げにご満悦なんざテメエには百年、いや、一千万年早いんだよ!

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最終更新:2007年08月15日 10:34