良い兵器とはどんな兵器なのだ、と俺に問うならば答えは一つしか無い。それは…
『稼働率の高い兵器』の事だ。いくらスペックで高性能でも、1ソーティ、一回の出撃で
使い物に為らなくなるのでは意味が無い。兵器、特にMSは整備性の良さが必要不可欠とも
言える。各部アポジモーターや関節のアクチュエーターとて、無期限に使えるワケが無い。
必ず交換する必要が何時かは来るのだ。逆説的に言えば、交換部品が無い兵器はトイレット
ペーパー同然である、と言うことだ。どんな意味かって? 一回使えば終わりって事だよ!
だからこのGAT-Xシリーズも、実は技術立証機以外の何物でも無い。試作機は飽くまで
試作機であり、この後に出て来る、試作機の『無駄に豪華な部分』がブラッシュアップされた
量産機こそが戦争の真の主役なのだ。どんなに無茶をしても、換えのパーツが幾らでもある。
その安心感が大胆さを生み、戦場での生を拾う結果と為るのだ。

 「量産機を創るって結構、大変なんだぞ? 数と質のバランスも考えなきゃならんしな? 」
 「このナハトは『質』の最たるモノだからな…で、コレを見てくれヤザン」
 
 若いコーディ二人に、ひとくさり兵器に対する『思い』を語りながら俺は親爺さんにコックピットに
案内される。ナハトの機体状況を表示するモニターには所狭しと各種英数字、ハイフン等が暗号の如く
並んでいた。困惑する親爺さんと俺は、顔を見合わせた。システムが暴走したらしい、と意見の一致を
見た俺は、取り合えず画面をスクロールさせて行く。意味の無いと思える英字と数列の中、見覚えの
ある記号と英数字の組み合わせを俺と親爺さんは発見する。

 「…こいつは…MAにも使ってる…」
 「推進剤、だな? 連合規格の奴だ。その隣は冷却剤。比較的粘性の高い奴だ。するとコイツは…」
 「パーツリストって奴だろうな、ストライク…アたァッ! 」

 美味しい所を持って行ったイザークの刈り上げたばかりの頭を、俺と親爺さんは同時に叩いていた。
ヤマト2等兵が早速、解読に移る。結局判ったのは、切れ目、スペースや他のソフトウェア、アプリの
連動を度外視して表示した結果が、この『暗号表』と言うワケだった。キチンと連動させてやると、
機体ワイヤーフレーム、分解図、三面図等に詳細に部品番号が対応し、表示された。

 「…やるじゃないか、少年…」
 「坊主、ウチに来るか? ウチなら間違い無くイジメは無いぞ? 」
 「親爺さん、パイロットが足りないんだよ今は…」 
 「フラガ大尉にお前とこの銀髪の三人で何とかなるだろ? えぇ? 」
 「悪いがコイツは捕虜なんだがな? 知ってるだろ? あのオカッパだよオカッパ!」
 「ああ、『ははうぇ~』な? 髪型変えただけで見違えたぞ! はっはっは!」
 「く、糞ぉ…この俺がナチュラル風情に馬鹿にされるとは…」

 何故こんな事をこの機体、ナハトがやってのけたのか? そいつが俺には喉に刺さった魚の骨の
如く引っ掛かっていた。何か有る。いや、この機体には確実に『何か』が潜んでいるに違いない。
以前に昇降ワイヤーを出した時もそうだった。俺が脚を殴っただけなのに昇降ワイヤーを出したりする。
そんなサービスの良い機体など有るものかよ!

 「…コックピットでちと作業したいんだがな、親爺さん? 」
 「5分やる。その間に済ませよ? 坊主ども、ヤザンの一人遊びタイムの始まりだ、さあ出た出た!」

 豪傑笑いとともに少年二人の背をバシバシ叩いて出る親爺さんに苦笑いを返し、俺はハッチを閉鎖する。
さあ、ゲームの始まりだ。出て来い。俺の予想通りなら…多分…十中八九…これで出て来る筈だな? …来い!
 

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最終更新:2007年03月01日 00:12