キラ・ヤマトは焦っていた。残りエナジーの表示が、あと残り3ゲージでレッドに明滅している事実に。ストライクのフェイズ・シフト装甲と、ビーム兵装に要するエナジーは共用だ。どちらか一方を使い過ぎれば、無くなるのは自明の理だった。

 『いいぞいいぞ、その調子で撃って来い! ほらほらどうした、俺はここだぞ! 』
 「う、うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ! 」

 ロックオン表示が出たと同時に、反射的にヤマトはビームライフルを撃っていた。だが、難無くヤザンの駆るナハトは、何故か紙一重のタイミングで避けて行くのだ。

 『まだ解からんのか? 撃つ時にストライクに妙なポーズを取らせている事を!』
 「そんな…ことッ! 知るかっ! 落ちろ、落ちろ、落ちろよォォォォォ! 」

 衝撃で舌を噛みそうに為るのをこらえながら、ヤマトはビームライフルを撃ちながら叫ぶ。何故、何故当たらない? 一発ぐらい…! キラ・ヤマトの目尻に涙が生まれた。

 『さあ、今度は俺の番だ。死ねよ! 』
 「アグゥッ! グボぉ…」

 ヤザンのナハトが両手に握らせたアーマーシュナイダーの柄尻でストライクを腹側とストライカーパック側との両側から殴る。PS装甲が吸収し切れない、筆舌に尽くし難い衝撃がキラを襲う。モニターの中のナハトを追うため、上下失調気味に為っていた所の衝撃だった。横隔膜が刺激され、キラ・ヤマトは胃の中身をコーディネーターの優れた味覚で味わう羽目に為った。

 『そらそらそらそらぁ! 吐けよ! 小僧が! 』

 絶望的な気分の中、キラ・ヤマトは脳裏に『水面に浮かぶ桃色の種』が微粒子に為って弾けるのを『観た』。その途端に頭が冴え、何でも出来る全能者に為った『気がした』。もう自分を縛る物は無いのだ、と。彼はただ微笑んでいた。…胸元を反吐塗れにしながら。

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最終更新:2007年01月05日 00:10