「な…」
 「どうかしたか? 」

 ブリッジに上がった俺の姿を見て、艦長以下ブリッジクルーの眼が点になる。軍服のデザインは
ティターンズタイプで同じだ。だが、配色が違う。黒ベースに赤の配色だったのが、俺の趣味で黄色
ベースの首周りが黒、袖口が赤の配色の、酷く目立つものだ。そんなに可笑しいか? 俺の趣味が?

 「ゲ、ゲーブル大尉…その軍服は」
 「なんだ? 裸の方が良かったか? バジルール少尉?」

 おずおずと目元を染め話しかけて来たバジルール少尉の顔が、また瞬時に紅潮し、見事に動揺する。
そのザマを見たアーノルド坊やが俺を睨んでいる。気に食わんな? 俺に言いたい事があればハッキリ
そう言えば良いんだよ! 俺は床を蹴り、ノイマン曹長の席に流れる。…誤解は解いて置かねばな?

 「詳細は聞いていないとは思うが、俺が少尉に何かした訳では無いぞ? むしろ被害者だ。
 少尉を送り出す前のブリッジの様子が知りたい。…協力してくれるな? アーノルド? 」

 小声で奴の耳元で囁いてやると、アーノルド坊やは一瞬硬直し、それから頷く。…フム、保護者を自ら
任じていると言う事か。ま、近くて遠いは男女の仲だ。貴様の様な優しい男が、いい父親に為れるのだ。
 途端にノイマンの表情が柔らかくなる。尤も、いい父親に為れてもイイ恋人に為れるかは別問題だがな!

 「フラガ大尉がゲーブル大尉の衣嚢(イノウ:衣類用バッグの軍での名称)を見つけて、カズイ君に
 行く様に命じたのですが、少尉が行くと言い出して…。少尉は何処で大尉と逢ったのですか? 」
 「シャワー室の脱衣所だ。俺は全裸だった。バジルール少尉は俺の全てを見た。それだけだ」
 「道理でフラガ大尉がニヤニヤしていた訳ですね…。済みません、ゲーブル大尉。てっきり…」
 「謝罪はいい。これからも少尉を頼むぞ? 」

 俺はラミアス中尉の隣に居るムウ坊を振り向いた。ムウ坊は俺と眼が合った瞬間、背中を向けて逃走を
計ろうとする。そこらへんは機を見るに敏なのは良いが、この俺相手には少々、遅かったようだな!

 「ムガッ…! 」
 「ほーれ、タップリと味わえ! 嬉しいんだろうが、アァ゛ン? コラァ! この母性至上主義者が! 」

 俺は強く床を蹴り、逃げるムウ坊の首根を捕まえ、マリューの豊満な胸に顔をグリグリと押し付ける。
宇宙での艦内白兵戦も対テロ訓練で鍛えて有る俺からそう簡単に逃げられると思ったのが間違いの元だ!
 マリューが照れ、赤面する。叫び声も上げないのは…内心憎からず思っているからなのか? 俺は
マリューの視線の先を追う。…ムウ坊よ? 男の身体は…哀しいな? さあ、復讐するは我に有り! 行くぞ!

 「ハンッ! もう勃ってやがる! デカ乳好きは業が深いな? エディプスの鷹とでも改名したらどうだ? 」

 これで笑う奴はノイマンとダリダ、トノムラ、他部署からやっと戻れたロメロと、なんと新兵ではミリアリアだ。
正しくはオイディプスなのだがな! ムウ坊…親父が嫌いだったのは解るが…ヘンな方に捻じ曲がったな? 

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleの プライバシーポリシー利用規約 が適用されます。

最終更新:2006年09月22日 21:53