「おい玉ヌケの銀髪オカッパ、生きてるか? 」
 「誰が玉ヌケだとぉ! …貴様は…す、ストライクゥゥゥ! 」
 「…俺はヤザン・ゲーブル大尉だ。いい加減覚えろやコラァ!」
 「うぎゃああああああああぁぁぁぁぁ! …あ…」

 AAの独房内で不貞腐れて寝ていたイザーク・ジュールに、俺が声を掛けたらこの体たらくだ。鉄子掴んでガタガタ遣り始めたので、タマを握ってやったら痛がったのは最初だけで、最後に恍惚とした表情をしてくれた。…もしや変な道に目覚めるんじゃないだろうな?

 「対戦シミュレーション遣るんだが、面子が足らん。出してやるから協力しろ」
 「…? 対戦、だと…? 」
 「ストライク、デュエル、メビウスゼロ、ナハトのコンピューターユニットを擬似接続して、コックピットを筐体にした戦闘シミュを行う。MSを扱える奴の面子が俺とヤマトだけではつまらんのでな? 」
 「ナハト? なんだそれは? MSか? 」
 「まあ、そんなモンだ」
 
 見る見るうちに銀髪オカッパの額に縦皺がよる。悩んでいるのか、理解して居ないかのどちらかだろう。…タマを握られたままでそう言う表情されても困る。間抜け過ぎて堪らん! 噴き出したくなる。 

  「それで俺に何をしろ、と? 」
  「お前もその仲間に入れてやるってんだよ! デュエルに乗りたいんだろう?」
  「貴さ…いえ、ヤザン様もまたストライクに乗って頂けるのでしょうか? 」

 分かって来たな餓鬼? 上位者であるお前の飼い主である俺にはこうでなくてはイカン! やる気に為ったと言う事か? オイ? 俺はコリッ、とオカッパの睾丸を鳴らすと悶絶させる。いや、良いねえ! 思わずプチッと潰したく為るくらいだ!

 「リターンマッチがしたいってか? 考えて置いてやらんでも無い。だが、今俺が聞いているのは、参加するかどうかのお前の意志だけだ。ど・う・だ? 」
 「します! しますからぁ! コリコリ、コリコリはやめ…ぎゃああああああ! 」
 「ありゃ…何スッキリした顔してるんだよ…? もしや…」
 「い、言うな! 言わないでくれ…! お願いだからぁ! 」
 
 俺は罪な男だ。どうやらイザークを被虐の道へと『目覚め』させてしまったらしい。
栗の花の匂いにも例えられる、イカ臭さが独房内を満たし始めた。…まずは手を洗おう。   


 「く…ヒグッ…母上ぇ…イザークは…汚れてしまいました…」
 「コレ位で落ち込むな! お前はエースの赤服、ザフトレッドで士官学校…いや士官アカデミー出だろうが! メソメソ泣くな! キビキビ歩け! 」
 
 手を念入りに洗った俺は、肩を竦め、泣いて俯くイザークを追い立てて前を歩かせる。…萎縮させるつもりは無かったのだが、これは一生モノのトラウマだろう。見るからに癇の強そうな目をしていると言うのに…少々やり過ぎたな?

 「お前は今は捕虜だ。俺に虐待されて恥を掻いただけだ。自分の人権を否定されてそのまま萎える男にお前は育てられたのか? エザリア・ジュールに? 」
 
 俺はイザークと並び、首を抱えて横顔を見る。…まったく、真面目に考え込む奴だ…。

 「母上は言うだろうぜ? 一時の恥は忍べってな? 生きて復讐する機会が来るまで生き延びろって! 情けなかろうが何だろうが、最後に生きてる奴が勝つ!死んだ奴は文句も恨み言も言えん。だから、お前がその…何だ…溜まってただけ」
 「俺は…甘えて弱く為りたくない…! 強く為りたい! 誰よりも! 」

 イザークが俺の目をしっかりと見据える。いい目じゃあ無いか! 悍威に優れた目をやっと取り戻したな! 若い奴の目はこうでなければいかん! …仕込み甲斐があるぞ。

 「そうだ。男の顔に為って来たぞ、イザーク・ジュール! 挫折から這い上がれる者こそ勝利者の資格が有るってモンさ。お前は敗北の味を知った。これからもっと、強くなれる。この俺が言うんだ、間違い無い。…俺が少し鍛えてやればの話だがな」
 「ナチュラル風情がよく言う! うぐぅッ!」
 「生意気なんだよ、コーディの悪餓鬼ぃ? 絞め落とすぞ? 失神して糞漏らしたいか?」 

 早速憎まれ口か! 復活したな? だが増長されても困るのが俺の立場だ。新兵は生かさず殺さずだ! しょうがないから少しの間だがこの俺が面倒見てやるぜ、イザーク・ジュール君よォ!

 「ミッドナイトブルーのストライク…? あれが…ナハトか! 」
 「あれでお前の乗ったデュエルと相手してやる。やれるかイザーク? 」
 
 俺達は格納庫に着く。巨人三体とMAのメビウス・ゼロが並ぶ様は壮観であり圧巻だろう。
 目を輝かせる少年は絵になる。俺の腹を読めずに喜ぶイザークに少々、罪悪感を覚えてしまう。
 俺の目的はただ一つ。デュエルに積んだOSの有用性を認めさせ、ZAFTに普及させる事だ。そうすれば…俺の仕込んだ『爆弾』の威力も増すと言うものだ。俺の仕込み育てる悪意。気付く奴は皆無だろうさ。 

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最終更新:2006年11月22日 22:21