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刊行にあたって

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刊行にあたって


  このたびの『「懲安婦」問題調査報告』刊行にあたって、「女性のためのアジア平和国民基金」(以下、基金という)内に設置された『「慰安婦」関係資料委員会』の活動と本書の内容とを簡単に紹介しておきたい。

  基金の設立を前にして、1995牛6月日本政府は、「基金の事業内容」のひとつとして、「政府は、過去の従軍慰安婦の歴史資料を整えて、歴史の教訓とする」と発表した。そして、基金は同年7月の発足当初から、、「資料の収集と整備」を掲げ、「慰安婦」問題が二度と繰り返されることのないよう、「歴史の教訓として未来に引き継いでいくこと」を活動の主要な柱とした。

  その目的を具体化するために、基金関係者のうち歴史学者を中心に、①基金独自の資料調査、②それに基づく調査報告集の発行、③『「慰安婦」関係文献目録』の発行、④これまでに日本政府が調査した「慰安婦」関係資料の影印本化を計画した。また、基金関係者のみならず、外部の学者の参加も得て、1996年10月に『慰安帰』関係資料委員会を設置した。顧問は衛藤慎瀋吉、委員は饗庭孝典、浅野豊美、我部政男、倉沢愛子、後藤乾一、高崎宗司、高橋祥起、秦郁彦、波多野澄雄、橋木ヒロ子、和田春樹の各氏である。

  委員会では上記諸計画の実現のために会議を重ねる一方、「慰安婦」問題に関する研究会も随時開いてきた。委員会の開催回数は1998年12月末日までに21回を数えている。

  その間、委員自ら、あるいは委員以外の学者に委托して、防衛庁・沖縄・インドネシア・オランダ・ドイツ・アメリカ・ミクロネシアで資料を調査した。本書はそれら調査報告の成果の一部である。

  なお、③の『「慰安婦」関係文献目録』は1997年9月に出版社「ぎょうせい」から、④の『政府調査「従軍慰安婦」関係資料集成』(全5巻)は1997年3月から1998年7月にかけて龍渓書舎から刊行されている。

  さて、今回の『調査報告』は、研究会で報告された資料の紹介・解説・分析を中心とした論文などで構成されている。

  以下、それぞれの論文の簡単な意昧づけを行っておきたい。

  和田論文は、先に紹介した『政府調査「従軍慰安婦」関係資料集成』を通読することによって知りうる実相を整理している。マスコミなどを通して広く問題になっている「『慰安婦』の募集」などの諸問題について史料に.基づく見解が示されている。さらに、「渡航手続き関係資料が示すもの」「渡航証明書発給資料の検討」などは、新しい視角から「慰安婦」問題を照明することによって、今後の研究課題をも明らかにしてくれる。

  波多野論文は、「金原節三業務日誌」と「陸軍省業務日誌摘録」とを照合した結果などを報告している。「金原節三業務日誌」は本書によって初めて紹介されるものである。また、「軍医部長会議二於ケル軍軍医部長指示」の紹介も貴重なものである。

  高崎論文は、これまであまりよく知られていなかった「半島女子勤労拠身隊」の実態を検証することで、「挺身隊」と「慰安婦」が違うものであることを実証的に明らかにしている。

  浅野論文は、写真資料と文献資料を併用し、動態的に分析することを通して、戦場という局限状況の中で見えてくる「慰安婦制度」の本質のひとつを突いている。比較的よく知られたミチナの「慰安婦」関係写真の見直し、米軍兵士が朝鮮人「慰安婦」などに行った尋問記録の読み直し、「宮本キクエ」の尋問調書の紹介などによって、新たに付け加えられた知見も多い。

  倉沢論文は、インドネシアにおいて「慰安婦間題」がどのように認識されているかを明らかにしている。そして、元「慰安婦」として名乗り出ている女性40人に対する面接調査をもとに、インドネシアにおける「慰安婦」問題の歴史的実態に迫っている。

  山本・ホートン論文は、インドネシアでの「慰安婦」に関する史料をオランダの公文書館で調査した結果を報告している。オランダ史料に基づく各地城別の実態の紹介は、これまでほとんどなされていなかったものである。「補'足」の「関連公文書一覧表」ともども、貴重な報告である。

  なお、本書に掲載した論文の文責は各筆者にあることをお断りしておく。

  本書が「慰安婦」問題の真相究明に少しでも役立っことを願っている。

1998・年・12月
編集代表・高崎宗司

ソースは

財団法人女性のためのアジア平和国民基金(アジア女性基金)
http://www.awf.or.jp/
(内)書庫・慰安婦問題
http://www.awf.or.jp/6/01-1.html
(内)「慰安婦問題」調査報告・1999
PDFファイル1
http://www.awf.or.jp/pdf/0062_p001_005.pdf

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