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パートII 5 日本一を目指せ

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5 日本一を目指せ


 第2次大戦後の40数年間の冷戦において、最終的に米国を中心とする西側陣営がソ連を中心とする東側陣営を圧倒し、ソ連の崩壊という結果になった。経済的側面では自由競争を原則とする西側が、統制経済を柱とする東側に勝ったということだ。何故ソ連が成功しなかったのかと言えば、努力してもしなくても結果が同じ競争のない社会では、努力する人がいなかったからといえるだろう。我が国ではJRやNTTが旧国鉄、旧電電公社から民間の会社になってどれほどサービスが良くなったかは国民が肌で感じている。JRもNTTも民間会社との競争にさらされることになったからである。

 さて自衛隊も国内において何をやっていようが潰れることはない。だから油断していると部隊がどんどん弱体化してしまうことがあるのだ。気が付いたら国民の期待に応えることができなかったでは自衛隊の存在価値がない。国民に対し申し訳がない。そこで我々も競争する対象が必要である。幸いにも自衛隊の場合は同じ形の部隊が複数存在し、戦技競技会などが定期的に実施されるので個人の戦技に関しては競争状態に置かれている。しかしながら指揮官としての指揮統率能力や作戦における指揮能力はあまり競争にさらされることがない。本人が競争意識を持って努力しない限り競争のない状態に置かれている。

 そこで6空団司令を拝命したときに、司令部の部長、各群司令、各隊長等に対し、「私は日本一の航空団司令になるよう努力するので諸君もそれぞれ日本一の部長、日本一の群司令、日本一の隊長になるよう頑張って欲しい」と要望した。何が日本一か評価基準はそれぞれの人に任せていたが、少なくともそれぞれの人が隣の航空団等を見ながら日本一になろうとして頑張ってくれたのではないかと思う。基地内の視察の折りに若い空曹が「司令、日本一になります」などと言って話しかけてくることがあったが、みんながあいつには負けないと思って努力してくれることが第6航空団を精強にしてくれることだと思っていた。また空自の全部隊長がそれぞれ日本一を目指して頑張れば航空自衛隊の精強性はより一層向上することになろう。

 もう一つは各人の努力目標を常に明確に意識させておくことが大切であると思う。そこでこれも6空団司令の時に、部隊の練成訓練目標とは別に、全隊員に対し当該年度の仕事上の目標と私生活上での目標をペーパーに書いてもらうことにした。もちろんその全てを団司令が見るわけではなく、各隊或いは班、小隊等で管理してもらっていた。若いパイロットや隊員を例に取れば、仕事上の目標はエレメントリーダーの資格を取るとか7レベルの特技試験に合格するとかいうようなことである。また私生活上の目標でいえば今年中に100万円の貯金を貯めるとか今年は車の免許を取るとかいうもので良いと思う。タテマエ的な目標ではなくホンネの目標を掲げることが大切である。目標が展示用の立派過ぎるものであると達成の困難さにやがて努力することを止めてしまうことになる。

 人間は目標に向かって努力するよう神様によって造られている。目標を持つと人は生き甲斐を感ずると思うし、またつまらないことで事故を起こしたりすることもなくなる。目標を持つことは若い隊員にとって服務事故をなくすという副次的効果もあるのではないかと思う。具体的な目標を持って、常に自分が負けてはいけない対象を見ながら日本一を目指して頑張ることだ。もちろん我々は外敵と戦うことが本務であり、比較の対象として外国軍人や外国軍隊を視野に入れておくことが必要であろう。特に自衛隊の1佐以上の高級幹部を目指すような立場にある人は、米国、韓国、中国、露国等の軍人の力量を把握し、これに負けない識見、徳操を身につけなければならない。しかしながら多くの隊員にとってはもう少し国際交流が盛んにならなければそれは困難であるので、当面は国内において日本一を目指すことで良いだろう。


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