第3・4(1)ウ(カ) 自決命令を記載していた文献の絶版等について
「沖縄問題20年」が昭和49年に出庫終了となったのは,「ある神話の背景」により赤松大尉の自決命令が虚偽であることが露見したからではない。「沖縄問題20年」の著者である新崎盛睴と中野好夫は,昭和40年6月に「沖縄問題20年」を出版した後,昭和45年8月に「沖縄・70年前後」を出版した。その後,両者は,昭和51年10月,「沖縄問題20年」と「沖縄・70年前後」を併せて「沖縄戦後史」を出版した。「沖縄問題20年」は,このような経緯から昭和49年に出庫終了となったのである。
また,「太平洋戦争」の第2版は,渡嘉敷島の記載を完全に削除したのではなく,「沖縄の慶良間列島渡嘉敷島に陣地を置いた海上挺進隊の隊長赤松嘉次は,米軍に収容された女性や少年らの沖縄県民が投降勧告に来ると,これを処刑し,また島民の戦争協力者等を命令違反と称して殺した。島民329名が恩納河原でカミソリ・斧・鎌などを使い凄惨な集団自殺をとげたのも,軍隊が至近地に駐屯していたことと無関係とは考えられない。」と記述しており,自決命令がなかったとしているわけではない。