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北海道新聞:卓上四季・教科書

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卓上四季 ・教科書(12月28日)


沖縄戦での集団自決は「広い意味では、住民が追い込まれた背景全体が強制と呼べるが、審議会は強制を軍命令という狭義でとらえた」。日本史教科書の検定に携わる小委員会メンバーが言っていた▼「広義・狭義」は、従軍慰安婦問題での安倍前首相の発言にも似る。今回の修正は「強制的な状況」「軍の関与」といった記述は容認したが、「強制」は認めなかった。沖縄県民の怒りは消えていない▼運動会では、「ヨーイ」で構え、号砲が鳴ったら走る。口で「走れ」と命令しなくても、そう教えられている。米兵が迫り、手りゅう弾が配られれば、住民は自決しなければならなかった▼だから「強制」の用語を排除する結果には違和感がある。国家とは軍の不名誉を認めたがらないもの、ということか。それでも一連の論議は、沖縄戦に関心を高める機会となった。生々しい証言に胸を熱くした人もおられよう。語り継ぐ機運が育った▼考えてみれば、直接の命令がない自決があったとは、むしろ恐ろしいことだ。学校や地域も、軍や政府と一体になり、「軍国」日本として戦争に加わった。その宣伝や教育の結果だろう。集団自決を強いたのと同じ熱病は、沖縄だけでなく全国にまん延していた▼集団自決、従軍慰安婦、南京虐殺。今年は戦争をめぐる論議が沸騰した。目の前で繰り広げられる現代の歴史も、またよい教科書だった。
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