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安定ヨウ素剤による効果

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3.安定ヨウ素剤による効果


放射性ヨウ素は、呼吸により吸入され気道に沈着し、気管支及び肺から迅速に体循環に移行し、また、吸入された放射性ヨウ素の一部は、咽頭部にも沈着し、食道を経て消化管から吸収され、体循環に移行する(※19,20,21)。取り込まれた放射性ヨウ素の約10~30%は、24時間以内に甲状腺に選択的に集積し、残りの大部分は主に腎臓より尿中に排泄される(※21)(参考資料-図Ⅰ)。

なお、我が国においては、医療現場などでの放射性医薬品であるヨウ素の服用による知見等から、日常の食生活において、コンブ等からヨウ素を摂取する頻度が高いため、放射性ヨウ素の甲状腺への取込みは少なくなることが知られている(※22)。

甲状腺に集積した放射性ヨウ素は有機化され、一定期間、甲状腺内に留まる。一般に、成人の甲状腺でのヨウ素の生物学的半減期は約80日で、19歳以下の若年者では成人のそれと比べて短い(※23)。

健康な成人が安定ヨウ素剤を服用すると、服用後1ないし2時間以内に、その尿中排泄濃度は最大となる。その後、時間とともに尿中ヨウ素排泄量は漸減し、72時間後には、服用した安定ヨウ素剤のほとんどが体内から排出される(※24)。

安定ヨウ素剤予防服用による、放射性ヨウ素の甲状腺濾胞細胞への取込みを低減させる効果は、高濃度の安定ヨウ素との共存により、血中の放射性ヨウ素の甲状腺濾胞細胞への取込みと競合すること(※25,26,27,28,29,30,31,32)や細胞内へのヨウ素の取込み抑制効果(※33)により、放射性ヨウ素の甲状腺濾胞細胞への選択的な集積を減少させる(参考資料-図Ⅱ)。成人では、安定ヨウ素剤として広く用いられるヨウ化カリウムの製剤は、少なくとも30 mg の服用量で、放射性ヨウ素の甲状腺への集積の95%を抑制することができる(※34)。

放射性ヨウ素が吸入あるいは体内摂取される前24時間以内又は直後に、安定ヨウ素剤を服用することにより、放射性ヨウ素の甲状腺への集積の90%以上を抑制することができる(※25,26,27,28,34)。また、すでに放射性ヨウ素が摂取された後であっても、8時間以内の服用であれば、約40%の抑制効果が期待できる(34)。しかし、24時間以降であればその効果は約7%となることが報告されている(※34)。

また、この効果は、安定ヨウ素剤服用後、少なくとも1日は持続することが認められている(※25)。


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