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「証言軽視」に批判 歴博「集団自決」軍関与削除

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「証言軽視」に批判 歴博「集団自決」軍関与削除

2010年3月17日

【写真】
解説文から沖縄戦における「集団自決」への日本軍の関与が削除されたまま公開された沖縄戦展示=千葉県の国立歴史民俗博物館


 国立歴史民俗博物館(千葉県)の新展示室「現代」は沖縄戦における「集団自決」(強制集団死)の解説文から日本軍の関与を削除したまま16日に一般公開された。同館は大江・岩波訴訟や教科書検定を理由に挙げ、解説文を「文字資料から検証できるレベル」にしたと説明する。証言を重視しない展示の在り方を専門家は「住民不在」と指摘し、自主規制とも取れる同館の対応を批判した。

■沖縄戦の本質


 「沖縄戦をどうとらえるか、その視点が欠けている」と問題点を指摘するのは1978年に県平和祈念資料館の展示刷新を手掛けた中山良彦さん。当時の資料館は軍服や短刀が並べられ「皇軍顕彰、住民不在だった」。沖縄戦の本質を「日本軍による住民虐殺」ととらえ直し、住民視点の展示を目指した。

 そこで重要になったのが体験者証言だ。記憶には濃淡があり、あいまいな点もあるが、研究者たちは大量の証言を重ね、文章資料と照合することで沖縄戦の実相に迫った。こうした成果を踏まえて資料館は住民中心の展示に刷新された。

 「現代」は「同時代を生きた人びとの生活史をベースに『戦争と平和』を描く」とテーマを掲げる。中山さんは「住民を主役に沖縄戦を描くなら証言を無視することはできない。住民不在だ」と批判する。

■館の判断


 訴訟や教科書検定が展示に影響を及ぼしたことに、中山さんは「博物館は研究・教育機関として政治から独立した存在であるべきだ」と話す。同館の展示は館外のリニューアル委員から助言を受け、館内委員が決めた。安田常雄副館長は助言の詳細を明らかにしておらず、削除決定の過程は不透明なままだ。

 ある委員は「館長は文部科学省との関係でいろんなことがあるんだと思う」と配慮が働いた可能性を示唆する。安田副館長は圧力や配慮を否定し「軍関与をなかったとする委員はいないが、館の判断で表現をぼかした」と説明した。沖縄戦を研究する沖縄国際大の石原昌家教授はこの判断を「面倒だからと臭い物にふたをしている。思考停止としか思えない。研究者にあるまじき行為だ」と断じる。

 同館は今後、委員会を開き展示内容を議論する。安田副館長は「意見を聞き、展示に反映させたい」と話すが「集団自決」に軍関与はなかったとするグループの働き掛けも予想される。同館が掲げる住民視点に回帰できるか。対応に注目が集まる。(荒井良平)


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