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今週の本棚・本と人:『沖縄・久米島から日本国家を読み解く』著者・佐藤優さん

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今週の本棚・本と人:『沖縄・久米島から日本国家を読み解く』 著者・佐藤優さん

 ◇佐藤優(まさる)さん
 (小学館・1680円)

 ◇共同体を守る精神とは
 著者の母の故郷は、沖縄・久米島だ。沖縄は、他地域とは別の歴史を歩んできた。基地被害などを背景に、日本国家への反発を深め、独立論を唱える人もいる。逆に他地域には、沖縄に違和感を覚えて、いわば「同化」を求めるような声もある。

 「どちらも現実的な解決策ではない」。そこで、久米島出身、明治生まれの歴史家、仲原善忠に目をつけた。「仲原は戦前、『方言を一切使うな』と言いつつ、方言の収集、研究をした。この二つの立場を両立させたのが、現実の日本との力関係を踏まえた、古里への思いだった」。仲原の考えは、かつての久米島のリーダー「堂のひや」に近い。堂のひやは、琉球王朝に面従腹背して島の利益を守った。また、仲原の古里は実在の久米島と重なるが、同じではない。著者が幼いころ母の話から思い描いた「青い海」のように、現実を超越しており、それへの思いが支える集団のあり様が大切なのだ。

 「久米島の共同体のように、国家と個人の間にある中間的な集団を強くすべきだ。企業でも地域のボランティアでもいい。そこが強ければ、国家のファシズム化も、集団自決や企業犯罪のようなことも防ぎやすい」

 「普天間基地の移設問題に、沖縄の人は、堂のひや精神で対応しているのだろう」とも言う。表面上、「支配者」の言うことを聞き、自分たちの利益を極大化する。だが、ある一線は絶対に越えさせない。「補助金や大型施設で地元が満足すると思った日本の政治家や官僚は、愚かなんです」

 他地域の側も、日本の国家統合を維持するため、沖縄の人の気持ちが離れないよう考えるべきだという。「沖縄との関係をきちんとできれば、アイヌや在日外国人との関係も解決できる。多様性の中の一体性を維持できるかどうか。この問題は、いちばんの試金石です」<文・鈴木英生/写真・小林努>

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毎日新聞 2009年11月1日 東京朝刊


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