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二、沖縄本島の再配備変更

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戦史叢書 沖縄方面陸軍作戦
第7章 第32軍の作戦準備と航空基地問題

二、沖縄本島の再配備変更



配備変更の経緯


第九師団の抽出に伴って十九年十一
月末から十二月上旬にかけて沖縄本島配備の大変更が実
施されたことは既述のとおりである。
配備変更後、第三十二軍高級参謀八原大佐は、つぶさ
に各部隊の陣地配備を視察し、主陣地帯の正面と兵力の
関係を検討して正面過広と感じた。少なくとも歩兵一大
隊の占領正面を二粁程度に緊縮しなけれぱならないとの
結論に達し、一月中旬ころから配備変更の研究を始め
(10)
た。
独立混成第四十四旅団を島袋付近に配置した第三十二
軍の真意は前述のように中央に対する申し訳けの意味が
あったが、戦術上の要求は偽装や虚飾を許さないとの結
論に達し、軍は混成旅団を主陣地内に後退させるととも
に北、中飛行場方面への軍主カの出撃企図を放棄する部
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1
署を採った。軍は一月二十目ころ、配備変更について関
(10)
係兵団に内示した。
一月二十一目~二十二目南西諾島は米機動部隊の空襲
を受け、第三十二軍は、あるいは米軍の沖縄上陸作戦か
(52)
と懸念した。一月二十三目第三十二軍は大本営陸軍部か
ら第八十四師団の派遣内報の電報を受け、次いで中止電
報を受けたことは前述のとおりである。
一月二十六目軍司令官は配備変更の軍命令(球作命甲
(33)
第九十八号)を下達した。
第三十二軍参謀部陣中目誌は二十六目「球作命甲第九
八号ヲ下達シ軍ハ沖縄本島二於ケル防衛部署ノ一部ヲ変
更セントシ第六十二師団ヲシテ歩兵第六十四旅団ヲ新防
衛作戦地域内二転移シ其主陣地帯ノ劃期的増強ヲ命ス
又独立混成第四十四旅団ヲシテ知念方面二転位シ新防衛
作戦地域ノ防衛二任セシムルト共二同方面二於ケル第六
十二師団作戦準備ヲ継承セシム」と記述している。
沖細本島の新配備新配備の部署の概要は次のとおり
である。(付図第三の5参照)
一中頭地区の独立混成第四十四旅団主力を知念半島方面の
旧第六十二師団の防衛担任地区に配置する。
二知念半島の歩兵第六十四旅団を第六十二師団主力方面に
移動させて第六十二師団の防衛担任区域を緊縮して陣地を
堅固にする。
三中頭地区に第六十二師団の一部(約一大隊)、を配置して警
戒に当たらせるとともに所在部隊と鴇同し、同方面の防備
ぎへん
が厳重であるように敵を歎編する。
四第二十四師団及ぴ國頭支隊の配備はおおむね現状のとお
りとする。
五配備交代の責任転移の時期は二月一日一八○○とする。
配備変更後の二月上旬の沖縄本島の配備は「付図第三
の5」のとおりである。
第六十二師団は前方部隊として約一コ大隊を中頭地区
へ配置することを命晋られた。本郷師団長はその任務を
考え、練達の大隊長賀谷興吉中佐の指揮する独立歩兵第
十二大隊を選定し、賀谷支隊と呼称して中頭地区に配置
した。
賀谷支隊の任務は「中頭郡内の警戒に任ずるとともに
所在軍直部隊と協同し同方面の防備が厳重であるように
敵を欺鰯する」ことであった。二月一目ころ「付図第
五」のように配備された。・


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1
第六十二師団及び猿立混成第四十四旅団の各主カは二
(86)
月一目夕刻までに新配備地へ転移した。
混成旅団特に独立混成第十五聯隊は沖縄到着以来次の
ように配備を変更されて転々とした。
1+九年七月空輸されて主カは中頭地区に配傭
もとム
2第二十四師団の到着に伴って八月上旬本部半島に移動し
て防禦配備
3九月中、下旬飛行場設定のため伊江島に移動
4+月上旬伊江島から本部半島に復帰
5+月中旬飛行場補修のため伊江島に移動(一コ大隊は本部
半島残置)して補修作業
6+月下旬本部半島に復帰
7+二月上旬第九師団の抽出により中頭地区に配備変更
いままた知念半島への転移を命菅られ、まさに東奔西
走である。数回にわたる配備変更は部隊に徒労感をいだ
かせ、資材を消費し、また上級司令部への不信感ともな
って作戦準備の意欲にブレーキをかけた。同聯隊は精鋭
うた(10)
を調われていたが、十二月上旬配備変更後の聯隊本部
陣中目誌(十二月七目)には「島袋二於ケル設営作業ハ
ルィジ
屡次二亘ル宿営地変更二妨ゲラレ遅々トシテ進行セズ
明確ナル上級司令部ノ意図下達ノ要ヲ痛感スLと記述さ
れていることから、その一端を知ることかできる。
独立混成第四十四旅団長は十二月上旬の移転時悲痛な
製亦をしたが、今回もまた部下の心情に訴える訓示をし
た。その一節に次のように述べている。
惟フニ旅団主カガ國頭方面ヨリ移駐シテ蓮二ニケ月部隊
ハ本職統率ノ下数次三旦ル敵機来攻二備ヘツツ励精克ク作戦
クノ
準備ヲ整へ以テ待ツアルヲ侍メリ然ルニ今又移駐ヲ行ハザ
イエド
ルベカラザルハ情二於テ忍ブベカラザルモノアリト難モ軍全
般ノ為ニハ如何ナル難事ヲモ廿受シ益々志気ヲ昂揚シ愈々準
備ノ優越卜訓練ノ精到ヲ期セザルベカラズ



配備変更と築城

配備変更により新陣地についた各部隊は、旧部隊が構築した既設陣地の利用に努めたが、陣地編成の変更及び兵カ、装備の差異などから全面的に利用することはできなかった。既設陣地を利用するため部隊の配備が拘束された点もあった。(230)

宿舎の新設、築城材料の取得困難は陣地構築の障害となり、築城作業の労カを補うため、各部隊は防衛隊の支援、労務者の利用(有料)、勤労奉仕(無料)などの援助

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によって陣地の強化に努めた。(43)

第六十二師団及び独立混成第四十四旅団は、昨年夏以来沖縄本島に到着しておりながら、確定した陣地配備についたのは米軍上陸のニカ月前ということになった。

新配備に伴う砲兵の射撃準備は特に第六十二師団正面が不十分であった。(150)


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