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(原)8 争点8(損害の回復方法及び損害額)について

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(原)8 争点8(損害の回復方法及び損害額)について

(判決本文p92~)

  • (引用者注)当サイトでは、原審判決に大阪高裁が付加あるいは判断を改めた部分等は, 区別しやすいようにゴシック体で表示し, 削除した部分は薄い色で削除した部分示しました。



第3・8(1) 控訴人らの主張


ア(慰謝の必要性)*

(ア)(損害の大きさ)*
  本件各書籍は, 控訴人梅澤の社会的評価を著しく低下させ, その名誉を甚だしく毀損し, もって控訴人梅澤の人格権を侵害し, 筆舌に尽くし難い精神的苦痛を与えた。

  「沖縄ノート」は, 赤松大尉の社会的評価を著しく低下させ, その名誉を甚だしく毀損してその人格権を侵害した上, 控訴人赤松が実兄である赤松大尉に対して抱いていた人間らしい敬愛追慕の情を内容とする人格的利益を回復不能なまでに侵害した。

  {そして, 文部科学省が教科書検定意見で軍の命令や強制を認めない立場を堅持することが示され, 梅澤命令説及び赤松命令説に真実性が認められないとした
原判決が言い疲された後も, 被控訴人岩波書店は「太平洋戦争」の, 被控訴人らは「沖縄ノート」の, 各出版, 販売を継続し, 特に「沖縄ノート」については平成20年4月24日に第58刷, 同年5月7日には第59刷と増刷を重ねており, さらに控訴人らの人格権や人格的利益を侵害して, 控訴人らに対し精神的苦痛を与えた。}


(イ)(訂正、広告、慰謝料)*
  控訴人らの名誉回復と精神的苦痛を慰謝するためには, 被控訴人岩波書店は, 本件各記述に対して訂正, 謝罪広告を掲載し, 控訴人らに慰謝料の支払いをする必要があり, 被控訴人大江は, 沖縄ノートの各記述に対して訂正, 謝罪広告を掲載し, 控訴人らに慰謝料の支払いをする必要がある。


(ウ)(慰謝料の請求額)*
  被控訴人岩波書店が控訴人梅澤に支払うぺき慰謝料は,各控訴人に対してそれぞれ1000万円であり, 被控訴人大江が支払うぺき慰謝料は,各控訴人に対してそれぞれ500万円2000万円(本件各書籍の原審口頭弁論集結時までの発行分1000万円, 原判決言渡後の発行分1000万円), 控訴人赤松に支払うぺき慰謝料は1000万円(「沖縄ノート」の原審口頭弁論集結時までの発行分500万円, 原判決言凌後の発行分500万円), 被控訴人大江が支払うぺき慰謝料は, 各控訴人に対してそれぞれ1000万円(「沖縄ノート」の原審口頭弁論集結時までの発行分500万円, 原判決言渡後の発行分500万円)である。


イ(出版差し止め)*

  また, 前記アのとおりであるから, 人格権に基づく本件各書籍の出版, 販売, 頒布の差止めがなされる必要がある。



第3・8(2) 被控訴人らの主張


ア(慰謝の必要性)*

  否認し, 争う。

イ(出版差し止め請求の根拠は無い)*

  名誉毀損を理由として出版を差し止めることは原則として許されず, 特に公共の利害に関する事項については, 表現内容が真実でないことが明白であるか, または専ら公益を図る目的のものでないことが明白であって, かつ, 被害者が重大にして著しく回復困難な損害を被るおそれがある場合に限り, 例外的に認められるものである(最高裁昭和61年6月11日大法廷判決・民集40巻4号872頁)。また, 同判決は, 名誉は生命, 身体とともに極めて重大な保護法益であり, 人格権としての名誉権は物権の場合と同様に排他性を有する権利であるという理由により, 人格権としての名誉権に基づき例外的に侵害行為の差止めを求めることができるとしているのであるから, 死者に対する敬愛追慕の情を侵害することを理由に出版を差し止めることはできないと解される。死者に対する敬愛追慕の情の侵害は, 排他性を有する名誉権を侵害するものではなく, 単なる不法行為にすぎず, 差止請求の根拠とはなり得ない。


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