あの背中を想い ◆FGluHzUld2
――こんな醜悪な姿を見せたくない。
そんな思いで彼女は地を蹴る。
だけどそれは正しいのか、彼女には分からなかった。
だけどそれは正しいのか、彼女には分からなかった。
走って、走って、彼女は何度も振り返った。
後ろを見た。
何もない、誰もいない。
真山は現れないって分かっていても、彼女は落ち込んだ。
真山は決して、彼女だけのヒーローじゃないのは知っている。
それでも、彼女は真山の姿を思い描いて、勝手に傷ついた。
後ろを見た。
何もない、誰もいない。
真山は現れないって分かっていても、彼女は落ち込んだ。
真山は決して、彼女だけのヒーローじゃないのは知っている。
それでも、彼女は真山の姿を思い描いて、勝手に傷ついた。
前にもこんなことがあった。
いつかのお花見の日。
お祭り騒ぎも終わりを迎えようとしたその時、
「どこかに連れてって」なんてお姫様のような言葉を合図に始まったオニゴッコ。
王子様は追って来てくれなかった。
王子様にはもっと大事な人がいるから。
――王子様には、お姫様を追う資格はなかったから。
いつかのお花見の日。
お祭り騒ぎも終わりを迎えようとしたその時、
「どこかに連れてって」なんてお姫様のような言葉を合図に始まったオニゴッコ。
王子様は追って来てくれなかった。
王子様にはもっと大事な人がいるから。
――王子様には、お姫様を追う資格はなかったから。
この気持ちは、その時のそれに似ていた。
「どうしてお前はこんなことをしたんだよ!」って、怒鳴りながら近づいてきてくれた方が、よっぽどよかった。
頬を叩かれようが、踵落としをされようが、彼女は彼に追ってきてほしくて、それでもやっぱり叶わなくて。
今頃彼は彼女に対し失望しているのだろう、そう思うと、目の前の視界がドロリと歪む。
「どうしてお前はこんなことをしたんだよ!」って、怒鳴りながら近づいてきてくれた方が、よっぽどよかった。
頬を叩かれようが、踵落としをされようが、彼女は彼に追ってきてほしくて、それでもやっぱり叶わなくて。
今頃彼は彼女に対し失望しているのだろう、そう思うと、目の前の視界がドロリと歪む。
――こんな姿は見せたくない
――こんな姿でも見てほしい
――こんな姿でも見てほしい
相反する二つの気持ちを抱いて、彼女は我武者羅に走った。
辿りつく果てには海があった。
朝日が反射して、キラキラと輝く眩い海。
淀む彼女の瞳には、その海は皮肉しか映さない。
辿りつく果てには海があった。
朝日が反射して、キラキラと輝く眩い海。
淀む彼女の瞳には、その海は皮肉しか映さない。
かれこれ走って二時間が経った。
大きく上下する肩が、その疲労を表している。
気持ちが揺らぐ走りは、必要以上に体力を奪った。
大きく上下する肩が、その疲労を表している。
気持ちが揺らぐ走りは、必要以上に体力を奪った。
荒くなった息を整えようと、彼女は腰を砂浜におろす。
膝を抱えて静かに海を眺める。――殺し合いと言うのが嘘に思えるぐらい綺麗な眺めだった。
風が吹いた。髪が風にそよいだ。
いつかの冬、水上バスで浴びた風よりは大分穏やかで温かくて。
だけど、一人で浴びる風は何処か冷たかった。
そう、彼女の身体が震えるほどに、その風は少なからず彼女にとっては冷たいものだった。
膝を抱えて静かに海を眺める。――殺し合いと言うのが嘘に思えるぐらい綺麗な眺めだった。
風が吹いた。髪が風にそよいだ。
いつかの冬、水上バスで浴びた風よりは大分穏やかで温かくて。
だけど、一人で浴びる風は何処か冷たかった。
そう、彼女の身体が震えるほどに、その風は少なからず彼女にとっては冷たいものだった。
何時からだろう。
彼女の眦には、雫が浮かんでいた。
いつもみたいに。
恋が破れていく、あの時のように。
彼女の眦には、雫が浮かんでいた。
いつもみたいに。
恋が破れていく、あの時のように。
――私は、結局どうしたいんだろう。
頭によぎった自問。
見て見ぬふりをしていた自問が降りかかる。
頭によぎった自問。
見て見ぬふりをしていた自問が降りかかる。
最初は、迅八と名乗った参加者と、共に行動をしようとしていた。
だけど彼女はそれを止めた。
どうして? 愛しき彼の為に。
だったら、この凶行がその彼にばれてしまった今は――どうすればいいんだろう。
だけど彼女はそれを止めた。
どうして? 愛しき彼の為に。
だったら、この凶行がその彼にばれてしまった今は――どうすればいいんだろう。
しばしの逡巡の結果。
彼女は叩きだした結論を言葉にする。
彼女は叩きだした結論を言葉にする。
「……このままで、いい」
選んだのは、人殺しの道だった。
決断したけれど彼女の顔は晴れるわけではない。
泣き腫らした顔で、何遍も何遍も、「このままでいい」と呟いた。
自分に言い聞かせるように。
自分の心を縛りつけるように。
決断したけれど彼女の顔は晴れるわけではない。
泣き腫らした顔で、何遍も何遍も、「このままでいい」と呟いた。
自分に言い聞かせるように。
自分の心を縛りつけるように。
「……私は真山の為に頑張るんだから」
既に彼女の凶行は、愛しの彼にばれている。
――彼女は恋の為に頑張ることはできなかった。
もう、実らない恋だから。
今まで以上に決定的な決別だから。
恋の為に頑張ろうだなんて言葉は、ただの戯言でしかない。
もう、実らない恋だから。
今まで以上に決定的な決別だから。
恋の為に頑張ろうだなんて言葉は、ただの戯言でしかない。
――それでも、山田あゆみは真山巧に生きていてほしいから。
自分の為じゃなくて、大好きな彼の為に、彼女は修羅になりたかった。
人を殺すことが、必ずしも真山の命を紡ぐことになるとは限らないけれど。
彼女は、その道を選んだ。
人を殺すことが、必ずしも真山の命を紡ぐことになるとは限らないけれど。
彼女は、その道を選んだ。
「――私は人を■さなくちゃ」
――だけどそれは、人の命を奪ってまでのものなのかな。
決意の言葉は、正しく言えなかった。
決意が偽物だからか。決意が薄弱だからか。
決意が偽物だからか。決意が薄弱だからか。
彼女の嗚咽は、しばらく続いた。
【E-8/砂浜/午前】
【山田あゆみ@ハチミツとクローバー】
[状態]:精神的消耗、疲労(中)
[装備]:グロック26@現実
[道具]:基本支給品一式、予備弾薬(9mmパラベラム弾)
[基本行動方針]:真山巧を生き残らせるために殺し合いに乗る?
[思考]:……
【山田あゆみ@ハチミツとクローバー】
[状態]:精神的消耗、疲労(中)
[装備]:グロック26@現実
[道具]:基本支給品一式、予備弾薬(9mmパラベラム弾)
[基本行動方針]:真山巧を生き残らせるために殺し合いに乗る?
[思考]:……
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