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沖縄タイムス:『教科書検定実相は遠く』(下)揺り戻し

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http://www.okinawatimes.co.jp/spe/syudanjiketsu/jisso_wa03.html
教科書検定実相は遠く(下)

揺り戻し (12月29日朝刊総合2面)


強まるタカ派の動き/県民の強い意志重要

 「検定意見が間違っているとは思わない」。今月四日午前、東京・丸の内の文部科学省で、教科書検定意見の撤回を求める都内の市民団体などの要請行動に対応した布村幸彦審議官は、強い口調で反論した。

 市民団体関係者は「九月二十九日の県民大会以後は丁寧な応対が続いていた。何があったのか」と驚いた。教科書検定問題の調査、研究を続けている俵義文さんもその場に立会い、「背景に何かある」と感じた。

 調べると、十一月二十八日、超党派の保守系議員でつくる「日本会議国会議員懇談会」が「教科書記述の変更に断固反対」などとする決議を採択していた。

 決議では「事実に反する『軍命令による沖縄住民に対する自決の強制』が教科書に記述されるのは許されない」、「外部の圧力で、日本史教科書の記述に軍強制を加えるための訂正を文科省が認めようとしている」などの主張が盛り込まれた。

 その五日後に開かれた教科用図書検定調査審議会の日本史小委員会では、「(沖縄戦の『集団自決』では)住民に対する直接的な軍命があったとは、確認できていない」などとした沖縄戦と「集団自決(強制集団死)」の教科書記述に関する「基本的とらえ方(=指針)」が決められた。

 同懇談会には安倍晋三前首相や麻生太郎前外相らが名を連ね、強い影響力を持つ。俵さんは「同懇談会の決議が、文科省や教科書審議会の強い後ろ盾になった可能性がある」と指摘する。

 沖縄側からの動きが止まった十一月以後、検定意見撤回や記述回復に反対するタカ派の動きが強まっている。「新しい歴史教科書をつくる会」は文科省への申し入れや、国会内での集会を繰り返した。

 今月二十七日には、自民党有志でつくる「日本の前途と歴史教育を考える議員の会」が、沖縄戦の「集団自決」に関する記述訂正について文科省の説明を求め、記述訂正の内容に対する反対意見を述べた。

 琉球大の高嶋伸欣教授は「沖縄戦に触れた教科書の記述から、日本軍に不利な記述を消し去ろうとする動きは今後も強まる。一方で、沖縄側への理解も深まっている。教科書執筆者は来年度以後も『軍強制』の記述を戻そうと訂正申請を続ける考えだ」と話し、「ここで沖縄が折れたら揺り戻しが起きる。超党派の実行委を中心に、県民が強い意志を見せ続ける必要がある」と指摘した。(社会部・吉田啓)
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