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再論・沖縄集団自決

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【正論】藤岡信勝 再論・沖縄集団自決

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05:10更新

 ■検定再審を渡海文科相に問う
 ■制度否定の記述訂正を認めるな

≪歴史に汚名を残すのか≫


 拝啓 渡海紀三朗・文部科学大臣殿


 率直に申し上げます。このまま推移するなら、福田首相と渡海文科大臣はあの悪名高い「近隣諸国条項」を推進した宮沢官房長官と同じ、拭(ぬぐ)いがたい汚点の刻印を文教行政に刻んだ政治家としてその名前を後世に記憶されることになります。

 渡海大臣は「9・29沖縄県民大会」直後に方針を大転換し、高校日本史教科書に「沖縄集団自決」で日本軍の「命令・強制」があったとの記述を回復しようとする教科書会社の訂正申請があればこれを「真摯(しんし)に検討」すると言い出しました。

 教科書会社各社は早速、検定意見をつけられた5社7冊のみならず検定意見をつけられなかった1社1冊までもが便乗して、11月上旬までに訂正申請を提出しました。

 例えば実教出版は、【検定前】「日本軍のくばった手榴弾(しゅりゅうだん)で集団自害と殺し合いをさせ」→【検定後】「日本軍のくばった手榴弾で集団自害と殺し合いがおこった。」→【訂正申請】「日本軍は、住民に手榴弾をくばって集団自害と殺し合いを強制した。」と変遷しています。

 この訂正申請が承認されるなら、文科省が一度つけた「沖縄戦の実態について誤解を与える表現である」という検定意見は完全に否定され、検定前よりもさらにあくどい反軍イデオロギーに基づく歴史の虚構が教科書に載ることになります。目の前でこのような歴史の再偽造が行われ子供に提供されるのを見るのは到底耐えられません。

≪異例ずくめの展開≫


 大臣もよくご存じのとおり、「軍の命令」とは「司令官の命令」にほかなりません。下士官や兵士が何を言おうとそれは「軍の命令」ではありません。そして、慶良間諸島の集団自決で司令官たる2人の隊長が命令を出したという確かな証拠は何一つありません。教科書記述から「軍の命令・強制」の要素を取り除いた検定意見と検定実務には何一つ瑕疵(かし)はないのです。それなのにこれまでの事態は異例ずくめの展開です。

 第1に、実数2万人以下の沖縄県民大会が「11万人」と誤報された直後に方針転換したことです。「集会で歴史を書き換えさせる」という前例をつくることは法治国家の基礎を揺るがす最悪の「政治介入」です。

 第2に、沖縄戦については昭和57年にも日本軍による住民の「虐殺」の記述に検定意見がつき、今回と同じ撤回運動が起こって文部大臣が妥協した前例がありますが、その時でも、次期検定で県民感情に配慮すると答弁したのであって、今回のように同一検定期間内に検定意見の事実上の撤回に踏み切ったのは初めてです。

 第3に、文科省は訂正申請を出させる際、その理由を「学習をすすめる上に支障となる記載」とするよう教科書会社に示唆しました。しかし、教科用図書検定規則第13条に定められた訂正申請制度の趣旨は、検定終了時点から使用開始にいたる約1年の間に発見された誤記・誤植・脱字などについて教科書会社からの訂正申請を認めるもので、検定意見を否定するような訂正は認められていません。ところが、今回は文科省みずから教科書会社をたきつけて「学習上の支障」というこじつけで検定意見を否定する訂正申請をさせているのです。

≪見識ある人物を入れよ≫


 第4に、訂正申請を受けて教科用図書検定調査審議会が開催されたことです。本来、訂正申請の審査はあくまで検定意見の範囲内で行われるべきものであり、検定審議会を開催する必要はありません。それなのに、11月5日には、この問題を審議する日本史小委員会が開催され、集団自決に関して沖縄戦の専門家から意見を聞くこと、人選はこれから詰めることなどを決めたとされています。

 これでは、検定意見撤回運動を推進してきた特定勢力の4つの目標、すなわち、(1)検定意見の撤回(2)「軍の命令・強制」記述の復活(3)沖縄条項の制定(4)検定審議会の改組-のすべてに対して全面的に屈服・容認することになります。

 そこで具体的な提言をさせていただきます。日本史小委員会の特別委員またはヒアリングに少なくとも秦郁彦、中村粲、曽野綾子の諸氏など集団自決問題に見識と実績のある学者・研究者・作家をくわえねばなりません。そして、年内に結論を出すなどという無謀な拙速主義はやめて、結論を次回検定以降に持ち越し、時間をかけた検証と公開の討論を組織すべきです。国民の歴史認識の成熟を甘く見た対応をなさらないよう切にご忠告申し上げておきます。敬具

 (ふじおか のぶかつ=拓殖大学教授)
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