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11.9沖縄戦裁判本人尋問報告集会の弁護団報告

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11.9沖縄戦裁判本人尋問報告集会の弁護団報告

『梅澤・大江氏は何を語ったか』



近藤卓史弁護士

梅澤さん、赤松さんの反対尋問から報告します。


 梅澤さん本人が、この法廷で、「私が直接命令を出した」と言うわけがないので、当然主尋問ではこの点を否定しました。では、反対尋問ではどうだったのか、注目すべき点をあげましょう。

  1. 座間味島住民に、「日本兵から手榴弾を渡され、いざとなったら自決せよと言われていた」という証言は元々ある。さらに教科書問題以降、座間味島住民でそれを裏付ける証言をされた人もいる。梅澤さん本人は、(宮城)初枝がそういうふうに自決しなさいと言われてたという事実は知っていたがそれ以外は知らないと主張。しかし、手榴弾は重要な武器だから自分の許可なしに住民に渡すことはないと認めた。日本軍兵士から住民がこれで自決せよと手榴弾を渡された事実は知らないと言ったが、自分の許可なしに配られることはないということは認めた。本人は、最高指揮官だから、日本軍の強制・責任・命令したことを間接的に認めたと言ってもいい。
  2. 梅澤さん本人は、主尋問では、自分には全く責任がないと主張。自分は宮城さんが来たときに自決するなと言ったんだから、全く責任がないと言っていた。しかし本人は、昭和55年に宮城晴美さんに手紙に書いている。その手紙を自分が書いたことを認めた、そこには、座間味の集団自決について軍の責任があると書いている。それを示されると、梅澤さんは「一番悪いのはアメリカ軍だ」と言ったが、55年当時書いていることは間違いないとし、集団自決が軍に関係がないとは言えない、と認めた。
  3. 沖縄ノートを読んだのは昨年ということ。ノートにはあなたが自決命令を出したと書いてありますかと聞いたら、ありませんと答えた。なぜ訴えたのかという意図が明らかになったと思う。
  4. 赤松さんの弟さんですが、そもそも赤松隊長から具体的に集団自決については聞いていないと確認された。具体的なことを聞いていない、知らないまま提訴している状況がはっきりした。
  5. 『沖縄ノート』については兄のことをかいてあるところをぱらぱら読んだだけ。敬愛追慕の情が侵害されてるという主張について、果たしてそういうものがあるのかと思わせる証言だった。
  6. 二人の証言が、今日の証言で原告側として新たに何か特別に訴えるものはなかった。

秋山幹男弁護士

大江さんの尋問


  1. 『沖縄ノート』のテーマは、沖縄が戦前、太平洋戦争、戦後において本土のために犠牲になってきた、それをまず取り上げたものだ。太平洋戦争における本土の犠牲になった例として集団自決を取り上げた。そして、沖縄が本土のために悲惨な犠牲を強いられてきたことについて、本土の人たちは十分な自覚がないことを取り上げた。その例として、渡嘉敷島の守備隊長が1970年に「おりがきた」と考えて、那覇空港に降り立ったところ沖縄の人々の拒絶反応にあったという出来事を取り上げた。沖縄の人の受け止め方と本土の人の受け止め方の大きな裂け目として取り上げ、日本人壮年男性一般の沖縄に対するあり方として、渡嘉敷の守備隊長をの内面を、想像した。
    その意味で、『沖縄ノート』は大江氏を含む日本人としての自己批判の書である。守備隊長の名前を挙げてないが、それは、日本人の一般的な沖縄に対するあり方を批判することが目的であって、隊長個人を非難するつもりではないからだ、と大江氏は述べた。
  2. 「あまりに巨きな罪の巨塊」と書いたことについて、曽野綾子氏は、大江氏が赤松隊長を大悪人であると非難していると、『ある神話の背景』の中で書き、それを原告が訴訟で引用しているが、まったくの誤読である。集団自決により死んだ多数の島民のことを「巨塊」(おおきなかたまり)といっているのであり、隊長のことを「巨魁」(悪人)といったのではない。
  3. また、原告は、「座間味島の守備隊長・渡嘉敷島の守備隊長が自決命令を出した」と書いているから名誉毀損だと訴えているが、『沖縄ノート』は、「日本軍の自決命令」としており、「隊長の自決命令」とは書いていない。鉄の暴風などの文献には、隊長命令があったと書いてあったが、日本国-日本軍-沖縄の第32軍-慶良間の各守備隊のタテの構造が住民に自決を強いたことが本質であったので、「日本軍の自決命令」とした。軍官民共生共死の一体化という第32軍の牛島司令官が出した方針に基づいて、軍が自決を命じたという構造がはっきりある、手榴弾が配られたということが動かぬ証拠になる、と大江氏は述べた。
  4. 曾野綾子氏が、「美しい心で死んだ人たちのことを命令で強制されたとするのは清らかな死を貶める」との富野元少尉の言葉を引用しているが、このようなとらえかたは全くの間違いだと述べた。
  5. また、大江氏は反対尋問に対しては、堂々と冷静に対応し、証言が崩れることはまったくなかった。
  6. 12月21日の口頭弁論期日で、双方が最終準備書面を陳述し、結審し、3月ごろまでには判決となる見通し。
  7. 裁判の構造を再確認すると、原告梅澤氏は、『沖縄ノート』と、家永三郎著『太平洋戦争』を名誉毀損で訴えている。しかし、『沖縄ノート』には梅澤氏が自決命令を下したとは書いてないから、前提を欠いている。『太平洋戦争』には梅澤隊長が自決命令を下したと1行程度だが書いてある。これについては真実性の証明が必要であるが、日本軍の自決命令があったことは立証されており、軍の命令はすなわち最高指令官である隊長の命令にほかならないと考えられる。原告赤松氏は、『沖縄ノート』が、故人である赤松隊長について自決命令を出したとの虚偽の事実を書いて敬愛追慕の情を違法に侵害したと主張しているが、『沖縄ノート』には、赤松隊長の名前は出していないし、隊長が自決命令を下したとも書いていない。だからこちらも成り立たない。
  8. 教科書検定問題以降、新たな証言が出るなど、立証を重ねてきた。座間味島でも日本軍が住民に対して手榴弾を渡したという証言がたくさんでている。日本軍の強制はかなり立証されている。助役が命令したのではないということも、生き残った妹さんの証言でわかった。

 この裁判を受けて教科書検定の問題が起きた。この裁判の勝敗だけでなく、教科書検定は間違っているということははっきりとさせたい。軍の命令・強制に関しては絶対勝たないといけないと考え、一生懸命主張立証を行ってきた。
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