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第4章 緊急時モニタリング

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第4章 緊急時モニタリング


環境放射線モニタリング指針
平成 20年 3月 原子力安全委員会
p15
第4章 緊急時モニタリング

  環境放射線モニタリング指針

4-1 目的


緊急時モニタリングは、原子力施設において緊急事態が発生した場合に、避難、飲食物摂取制限等の放射線防護対策(以下「防護対策」という。)に必要な情報を収集し、原子力施設に起因する放射性物質又は放射線の周辺住民等への影響の評価に資することを目的とする。

4-2 各機関の役割


緊急事態の発生後においては、国、地方公共団体、指定公共機関及び原子力事業者は、防災基本計画等に基づいて放射能影響の早期把握のための活動を行うことが求められる。

4-3 計画及び実施


緊急時モニタリングは、原子力緊急事態が発生した場合、直ちにその体制が組織され実施に移すことができるようになっていることが極めて重要である。このため、あらかじめ緊急時モニタリング計画を立案し、
(1) 緊急時モニタリング体制の整備、
(2) 緊急時モニタリング用資機材の整備、
(3) 緊急時モニタリングの実施方法等について
定めた緊急時モニタリングマニュアルを作成しておく必要がある。

緊急時モニタリングは、原子力緊急事態の発生時に迅速に行う第1段階の緊急時モニタリング(以下「第1段階モニタリング」という。)と、周辺環境に対する全般的影響を評価する第2段階の緊急時モニタリング(以下「第2段階モニタリング」という。)からなる。具体的な目的は次のとおりであり、①②③は、第1段階モニタリングに、4、5、6は、第2段階モニタリングに区別される。

  1. 原子力施設周辺の空間放射線量率及び周辺に放出された大気中の放射性物質(放射性希ガス、放射性ヨウ素、ウラン又はプルトニウム等)の濃度の把握
  2. 放射性物質の放出により影響を受けた環境試料中の放射性物質の濃度の把握
  3. 適切な防護対策に資するための周辺環境における予測線量の迅速な推定
  4. 1 を継続し、さらに対象とする核種を増やすなど、より詳細な大気中の放射性物質の濃度の把握
  5. 2 を継続し、さらに対象とする核種を増やすなど、より詳細な環境試料中の放射性物質の濃度の把握
  6. 周辺住民等が実際に被ばくしたと考えられる線量の評価

各種情報伝達が、緊急時に混乱することなく正確かつ迅速に行えるよう、あらかじめ伝達すべき情報の内容や伝達の方法等について可能な限り具体的に定めるなど、報告様式、通信連絡手段等を確立しておくことが必要である。また、要員、測定機器等の運搬手段を確立しておくことも必要である。

4-3-1 体制の整備*17


緊急事態が発生した場合、国においては、原子力災害対策本部及び原子力災害現地対策本部が設置される。原子力災害現地対策本部のモニタリング情報の把握を担当するグループ(以下「原子力災害現地対策本部放射線班」という。)は以下のような業務を担う。
  1. 緊急時モニタリングデータの収集、整理
  2. 地方公共団体の災害対策本部への緊急時モニタリングの指導・助言
  3. 緊急時モニタリングに必要な要員、資機材等に関する調整
  4. SPEEDIネットワークシステム(解説K(未作成)参照)等を活用した住民の被ばく線量予測の実施
  5. 周辺住民の被ばく線量の評価
  6. 屋内退避、避難等の実施(解除)区域案の作成
  7. 飲食物摂取制限の実施(解除)区域案の作成
  8. 飲食物摂取制限等の措置案のとりまとめ
  9. 原子力災害対策本部及び地方公共団体の現地災害対策本部のモニタリングに関する業務を担当するグループ(モニタリングセンター等)との連絡・調整
  10. 緊急時モニタリング等に関する合同対策協議会、記者発表資料の作成

地方公共団体においては、緊急時モニタリング作業を的確かつ円滑に遂行するため、モニタリングセンターとその指揮下のモニタリングチームから成るモニタリング実施組織を設置して対処することが機能的かつ効果的である。この実施組織の役割・機能が十分発揮されるようにあらかじめモニタリングセンター長の任命、モニタリングセンターの設置予定場所、各組織の役割と分担、通信連絡系統等をできるだけ具体的かつ簡明に定め、常に迅速に対応できるようにしておく必要がある。

また、地方公共団体と国が適切に連携できるよう、防災訓練等を通じてより実効性の高い体制を構築していくことが必要である。

モニタリングセンター及びモニタリングチームの主な役割・機能はそれぞれ次のとおりである。

(1) モニタリングセンター
[1] 計画立案、指揮及び総括
モニタリングセンター長を置き、そのもとで緊急時モニタリングの計画、立案を行うとともに、緊急時モニタリング作業の指揮及び総括を行う。

[2] 要員、資機材の配置等
緊急時モニタリングチームの編成、資機材の分配等を行う。その際、国等から派遣される専門家又はモニタリング資機材の受入れ、配置について十分円滑かつ効果的になるよう配慮する必要がある。

[3] モニタリング情報及び気象情報の収集及び解析
各モニタリングチーム等の測定結果を受けて解析作業を行う。なお、各モニタリングチームとの連絡・通信手段を無線又は有線により確保する必要がある。また、緊急事態の発生地区の気象データ(原子力事業者の観測データを含む。)を収集し、これとさらに広域の気象データ(地方気象台の観測データ)等をもとに、周辺住民等の被ばく動向の予測に役立つ情報を迅速に提供する。

[4] 原子力災害現地対策本部への報告
モニタリングセンター長は、必要に応じて地方公共団体の現地災害対策本部を経由し、原子力災害現地対策本部放射線班から緊急時モニタリングの指導・助言を受けるとともに、モニタリング結果等の報告を行う。

[5] 地方公共団体の現地対策本部への報告等
モニタリングセンター長は、地方公共団体の現地災害対策本部に対し、モニタリング結果及び原子力災害現地対策本部放射線班による予測線量の推定結果等の必要な事項を迅速かつ的確に報告するとともに、取るべき対策に関して意見を具申する。

※17 国、地方公共団体、指定公共機関及び原子力事業者の役割については、防災基本計画第10編第2章第1節2(3)放射能影響の早期把握のための活動を参照のこと。


(2) モニタリングチーム

[1] 緊急時モニタリングの実施
空間放射線量率の測定、大気中の放射性物質濃度の測定、環境試料の採取及び放射能の測定等の緊急時モニタリング作業を実施する(解説L(未作成)参照)。
これらの作業は、その目的・内容ごとにモニタリングチームを編成して行うことが適切である。さらに、環境試料の分析及び精密測定を行う施設をあらかじめ定めておく必要がある。

[2] モニタリングセンターへの報告
各モニタリングチームは、それぞれの作業結果を迅速かつ的確にモニタリングセンターに報告する。
指定公共機関は現地へ緊急時モニタリング要員及び機材を動員し、地方公共団体の行う緊急時モニタリング活動を支援する。

4-3-2 実施方法


緊急時モニタリングを迅速かつ有効に実施するためには、被ばくの経路(解説M(未作成)参照)等を考慮し、モニタリング段階毎に測定項目、測定地点又は試料採取地点、測定方法等についてあらかじめ可能な限り具体的に定めておくことが必要であり、発生した緊急事態に応じて、効果的なモニタリングを実施する。

なお、実施に当たっては機動性を高めるため、車両及び可搬型モニタリングポストを有効に利用し、さらに地点、状況等によっては、船舶、航空機による緊急時モニタリングが必要になる場合もある(解説N(未作成)参照)。

以下に(1) 第1段階モニタリング、(2) 第2段階モニタリングに分けて述べる。

(1) 第1段階モニタリング

第1段階モニタリングは、原子力緊急事態の発生直後から速やかに開始されるべきものであり、この結果は、放出源の情報、気象情報及びSPEEDIネットワークシステム等から得られる情報とともに、予測線量の推定に用いられ、これに基づいて防護対策に関する判断がなされることとなる。したがってこの段階においては何よりも迅速性が必要であり、第2段階で行われる測定ほど精度は要求されない。

以下に[1]測定項目、[2]測定地点又は試料採取地点について述べる(測定方法については文部科学省放射能測定法シリーズ参照)。

[1] 測定項目*18
1)空間放射線量率
2)大気中の放射性物質の濃度
  • 大気中の放射性ヨウ素等濃度の測定
  • 大気中のウラン又はプルトニウムの濃度の測定
3)環境試料(飲料水、葉菜、原乳及び雨水)中の放射性物質の濃度
  • 環境試料中の放射性ヨウ素等の濃度の測定
  • 環境試料中のウラン又はプルトニウムの濃度の測定*19
4)積算線量

[2] 測定地点又は試料採取地点
気象条件、SPEEDIネットワークシステムによる予測結果等を考慮し、次の各地点において空間放射線量率の測定、大気中の放射性物質及び環境試料の採取を行う。
  1. 最大空間放射線量率出現予測地点*20とその近傍 数点
  2. 大気中の放射性物質の最大濃度の出現予測地点とその近傍 数点
  3. 風下軸を中心とした約60゜の範囲において、大気中の放射性物質の最大濃度の出現予測地点を通り、風下軸と直交する線上 数点
  4. 風下方向の人口密集地帯、集落、退避施設等 地点数は当該地域の人口分布等を考慮して適宜決める。

また、退避等の措置が実施された場合には、退避施設等における環境モニタリングを実施すること。

なお、車両を利用して走行しながら空間放射線量率を連続測定した結果や適切な場所に車両を一定期間停車させて連続測定した結果は、空間放射線量率の分布を知る上で有効となる。

※18 第1段階モニタリングにおいては、1Gy=1Svとする。
※19 アルファ線表面汚染密度を簡易測定し、必要に応じて行うものとする。
※20 地点の選定にあたっては、直接線及びスカイシャイン線による線量率も考慮することが重要である。(解説M(未作成)参照)


(2) 第2段階モニタリング

第2段階モニタリングは、事故状態の予測が確実になり、放射性物質又は放射線の放出が減少してきた段階において開始される。同モニタリングについては、第1段階モニタリングで要求される迅速性より正確さが必要となり、周辺住民等の実際の線量の評価と環境中に放出された放射性物質又は放射線の状況の把握に必要な情報の収集活動を行う。

そのため、第2段階モニタリングにおいては、積算線量及び人体の被ばく評価に必要となる環境中に放出された放射性物質が対象となる。また、環境モニタリングの実施範囲は、第1段階モニタリングよりさらに広く、その実施頻度については、放射性物質又は放射線の放出の終息以降においても、1日~数日の間隔で行われる。放射性物質又は放射線の放出が継続しないような事故の場合には、第1段階モニタリングから直ちに第2段階モニタリングに移行することもある。

なお、この環境モニタリングの結果は、各種防護対策の解除に用いられる。以下に[1]測定項目、[2]測定地点又は試料採取地点、[3]環境試料に対する経時変化の追跡について述べる(測定方法については文部科学省放射能測定法シリーズ参照)。

[1] 測定項目
1)空間放射線量率
2)大気中の放射性物質の濃度
3)次の環境試料中の放射性物質の濃度
(イ)第1段階モニタリング試料と同じもの
(ロ)土壌、植物
(ハ)農畜産物
(ニ)原水(河川、浄水場等)
(ホ)魚介類(河川又は海洋への放出がある場合)
4)積算線量

[2] 測定地点又は試料採取地点
第1段階モニタリングの結果を参考とし、必要と考えられる地点

[3] 環境試料に対する経時変化の追跡
環境中へ放出された放射性物質の状況が、時間的にどのように変化しているかを追跡するため、[1]3)で対象となっている環境試料のうち、経時変化の追跡が必要と考えられる試料の採取及び測定を一定の時間間隔で行う。

4-4 線量等の推定と評価

緊急時においては、基本的には防護対策の決定に当たって、先ず計算等により周辺環境の予測される放射性物質の濃度及び周辺住民等の予測線量等を推定し、さらに、モニタリング結果により実際の放射性物質の濃度及び線量の評価を、以下の原子力施設から主として放出される放射性物質又は放射線について行う。

[1] 原子炉施設等については、放射性の希ガス及びヨウ素
[2] 核燃料施設における火災、爆発、漏えい等については、ウラン又はプルトニウム等
[3] 核燃料施設における臨界事故については、核分裂生成物に加え、中性子線及びガンマ線ここでいう予測線量とは、放射性物質又は放射線の放出量、気象情報等をもとに、何の防護対策も講じない場合に、その地点に留まっている住民が受けるであろうと考えられる線量の推定値のことであり、個々の住民が受ける実際の線量とは異なるものである。したがって、予測線量は、状況の推移とともに変更され得ることを考慮する必要がある。

緊急時における予測線量の推定を行うに当たっては、[1]及び[2]については、4-4-1に述べる予測線量分布図等を有効に利用しつつ、空間放射線量率の実測結果と併せて総合的に判断することが望ましい。

4-4-1 予測線量分布図等の作成

大気中に放出された放射性物質について、防護対策の決定に資するための周辺環境の予測される放射性物質の濃度、予測線量等の情報を得るための計算手法には、[1]電子計算機を用いて大気中の放射性物質の挙動を計算し、大気中の放射性物質の濃度、周辺住民等の線量等を予測する詳細計算法、及び[2]図表等を用いて放射性物質の濃度、線量等を予測する簡易計算法がある。詳細計算法のためのシステムとして、主に原子炉施設等を対象とした国及び地方公共団体を結ぶSPEEDIネットワークシステムが運用されている(解説K(未作成)参照)。

簡易計算法は、平坦地形における一様な風による拡散計算であることから、このような条件を満たさない場合には、その地勢等地域に固有の特徴を考慮した上で利用することが必要である(解説O(未作成)参照)。これに対し詳細計算法は、その時刻における実際の気象情報を用い、地形の影響を考慮して計算しているため、より精度の高い予測を行うことができる。

なお、これらの計算手法によって得られた予測線量等の分布図は、[1]固定式モニタリングポスト等の測定値の補完、[2]空間放射線量率のサーベイ実施地点の検討、[3]大気及び環境試料のサンプリング実施地点の検討、[4]積算線量計や可搬型モニタリングポストの特別配備の検討にも有効に利用することができる。

(1) 詳細計算法による予測線量分布図等の作成

詳細計算法は、SPEEDIネットワークシステムを用いて、主に気体状の放射性物質の大気中の移流・拡散状況から放射性物質の濃度分布、線量分布等を計算する手法であり、この結果を用いて周辺環境の予測される放射性物質の濃度、予測線量等を推定する(解説K(未作成)参照)。

SPEEDIネットワークシステムは、定常的に気象庁の気象情報を収集し、緊急時に備えている。緊急時には、この気象情報、放出源情報及びあらかじめ作成・保存されている各種データベースをもとに、計算を行い、大気中の予測される放射性物質の濃度分布図、予測線量分布図等の計算図形を作成する。

緊急時には、放出源情報を迅速かつ正確に入手する必要があるが、場合によっては、放出源情報を仮定して計算を行うこともある。

なお、あらかじめSPEEDIネットワークシステムにより風向の方位別に計算しておいた分布図等の結果を利用することは有効である。

(2) 簡易計算法による予測線量分布図等の作成

事故時においては、その兆候が現れてから環境に影響が及ぶまでにはある程度の時間的余裕がある場合とない場合が考えられるが、SPEEDIネットワークシステムによるオンラインの計算結果が入手できない場合には、簡易計算法における大気拡散式に基づいた計算結果を透明プラスチック板に図示したものから分布図を作成する(解説O(未作成)参照)。

簡易計算法における計算結果の利用に際しては、詳細計算法と異なり、比較的平坦な場所以外ではその結果に対し地形の影響を考慮して評価することなどが必要である。

4-4-2 予測線量の推定

放射性物質又は放射線の影響を可能な限り避けるために、屋内退避、避難等の防護対策について検討する必要がある。防護対策を講ずる観点から以下の項目について予測線量の推定を迅速に実施する。

[1] 原子炉施設等

原子炉施設等においては、多重の物理的防護壁により施設からの直接の放射線はほとんど遮へいされ、また、固体状、液体状の放射性物質が広範囲に漏えいする可能性も低い。したがって、周辺環境に異常に放出され広域に影響を与える可能性の高い放射性物質としては、気体状のクリプトン、キセノン等の希ガス及び揮発性のヨウ素を考慮すべきである。また、これらに付随して放射性物質がエアロゾル(気体中に浮遊する微粒子)として放出される可能性もあるが、その場合にも、上記の放射性物質に対する対策を充実しておけば、所要の対応ができるものと考えられる。

これらの放出された放射性物質は、プルーム(気体状あるいは粒子状の物質を含んだ空気の一団)となって風下方向に移動するが、移動距離が長くなるにしたがって、拡散により濃度は低くなる。

原子炉施設等については、主として放射性希ガスからの外部被ばくによる実効線量及び放射性ヨウ素からの甲状腺の等価線量を推定する(解説I参照)。

[2] 核燃料施設

*1) 火災、爆発等による核燃料物質の放出
核燃料施設においては、火災、爆発、漏えい等により施設からウラン又はプルトニウム等がエアロゾルとして放出されることが考えられる。これらの放射性物質は上記①と同様にプルームとなって放出、拡散されるが、爆発等により、フィルタを通さずに放出され、量的に多いとみられる粗い粒子状のものは、気体状の物質に比べ早く沈降すると考えられる。また、フィルタを通して放出される場合には、気体状の物質とほぼ同様に振る舞うと考えられる。

火災、爆発等による放射性物質の放出については、主としてウラン又はプ
ルトニウムによる骨表面又は肺の等価線量を推定する(解説I参照)。

*2) 臨界事故
臨界事故が発生した場合、核分裂生成物の放出に加え、反応によって中性子線及びガンマ線が発生し、周囲に放出される。

核分裂生成物の放出は、主として放射性の希ガス及びヨウ素を考慮すればよく、その潜在的な総量は原子炉施設等に比べ極めて少ない。

一方、施設の遮へいが十分な箇所で、中性子線及びガンマ線が放出された場合には、これらの影響を無視できるが、遮へいが十分でない場合は重要となる。施設内外の遮へい条件にもよるが、放射線の強度は施設からの距離のほぼ2乗に反比例して減衰するため、その影響は近距離に限定される。臨界事故については、主として中性子線及びガンマ線に対する外部被ばくによる実効線量を推定する。また、事故の形態によっては、放射性希ガスからの外部被ばくによる実効線量及び放射性ヨウ素からの甲状腺の等価線量も推定する。

大気中に放出された放射性物質の予測線量等の推定は、4-4-1において作成された計算図形を基本とし、必要に応じ、気象情報、放出源情報、モニタリング情報等により補正することにより行う。

予測線量等の推定に当たっての注意点は次のとおりである。
  1. 推定作業と並行して、正確な放出量、放出核種組成、性状、放出継続時間等の放出源情報の入手及びその確認に努めること。
  2. 計算を行った時点では必ずしも放出源情報が十分に得られているとは限らず、幾つかの仮定のもとに計算されていることがあるので、このような場合には予測線量等が不確実性を伴っていることに注意すること。
  3. 計算図形を作成する際に用いた情報の多寡、推定値の確実性等を念頭に置いて、推定の迅速性に対する要求と精度に対する要求との兼ね合いを配慮して行うこと。
  4. 推定の際にモニタリング値が得られている場合には、最大放射能濃度又は最大空間放射線量率の出現地点、分布のパターン等に関して計算図形とモニタリング値との比較検討を行うことにより、計算図形からモニタリング値を補完すること、及びモニタリング値から計算結果を逐次修正することができる。
  5. 推定結果には何時の時点におけるどのような情報に基づく推定であるか、その使用目的は何かなどを明記するなど、防護対策決定の判断に資するために必要十分な情報を付記する必要がある。

放射性物質の放出が終了し、放射性プルームが通過した後は、予測地表蓄積濃度分布図等とともにモニタリングの実測値等に基づき、その後の周辺住民等及び環境への影響の推定、飲食物摂取制限等の検討に重点が移行する。

なお、緊急時モニタリングの体制、測定項目等についての継続・強化等に関する評価も併せて行う必要がある。

4-4-3 線量の評価

周辺住民等の実際の線量の評価については、モニタリングの結果に基づき、外部被ばく及び内部被ばくによる実効線量を算定し、高線量が予想されるときには、これらに加え内部被ばくによる等価線量を、周辺住民等の行動を考慮し、平常時モニタリングの手法にしたがって算定する(解説I(未作成)参照)。さらに必要に応じ、環境中に放出され地表に蓄積された放射性物質による線量を評価する。


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