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産経:【社説検証】空自トップ更迭

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【社説検証】空自トップ更迭

2008.11.17 08:18


■産経「異なる意見の尊重を」

■読売「資質に大いなる疑問」


 航空自衛隊の田母神俊雄空幕長が、先の大戦を日本の侵略とする見方に疑問を示す論文を発表したとして更迭された。論文の内容はもちろん、定年退職となった経緯でも議論を呼び、参院外交防衛委員会は同氏を参考人招致した。一連の動きについて各紙は社説に取り上げたが、産経と他紙との論調は大きく分かれた。

 産経は、更迭を受けて「第一線で国の防衛の指揮に当たる空自トップを一編の論文やその歴史観を理由に、何の弁明の機会を与えぬまま更迭した政府の姿勢も極めて異常である。疑問だと言わざるを得ない」と早期の幕引きを図ろうとする構えを批判したうえで、政府見解となっている「村山談話」のあいまいさを指摘した。

 「談話は政府の歴史への『見解』であって『政策』ではない。しかも、侵略か否かなどをめぐってさまざまな対立意見がある中で、綿密な史実の検証や論議を経たものではなく、近隣諸国へ配慮を優先した極めて政治的なものだった」

 これに対し、朝日、毎日は同じような書き出しで田母神氏を断罪した。

 「こんなゆがんだ考えの持ち主が、こともあろうに自衛隊組織のトップにいたとは。驚き、あきれ、そして心胆が寒くなるような事件である」(朝日)

 「航空自衛隊のトップがゆがんだ歴史認識を堂々と発表する風潮に、驚くばかりだ」(毎日)

 読売は軽率と位置付けた。

 「田母神氏は自衛隊の最高幹部という要職にあった。政府見解と相いれない論文を発表すれば重大な事態を招く、という認識がなかったのなら、その資質に大いに疑問がある」


 日経も更迭を当然とし、田母神氏はもともと空幕長の任に着く人材ではないと決めつけた。

 「同期には『将来の空幕長・統合幕僚長』ともいわれたパイロット出身者がいたが、なぜか失速した。このために本来は適格とは思われていなかった田母神氏が選ばれた」

 11日に行われた参考人招致を受けての読売と朝日の社説は別表のように見出しまで、ほぼ一致した。

 読売は「『言論の自由』を完全にはき違えた議論だ」と次のように突き放した。

 「空自トップが政府見解に公然と反旗を翻すのでは、政府も、自衛隊も、組織として成り立たなくなってしまう。政治による文民統制(シビリアンコントロール)の精神にも反している」

 朝日は田母神論文によって、旧日本軍とは隔絶された新しい組織を築き上げようとしてきた自衛官の努力が水泡に帰しかねないと訴えた。

 「航空自衛隊を率い、統幕学校の校長も務めた人物が、政府方針、基本的な対外姿勢と矛盾する歴史認識を公然と発表し、内部の隊員教育までゆがめる『自由』があろうはずがない」

 毎日は参考人招致を「儀式」と捉(とら)え、民主党の追及の甘さを指摘したうえで、「文民統制の問題も隊内教育の疑惑も解明されたとは言い難い。麻生太郎首相が出席した審議は必須である。田母神氏再招致も検討してしかるべきだ」と主張した。

 産経は与野党の思惑によって、的を射ない論議に終わったことに「本質を避ける政治の態度が、憲法論や安保政策のひずみを生んできたのではないか」と、決着を急ぐ姿勢を改めて批判した。

 「政府は田母神氏を更迭する際にも本人に弁明の機会を与えなかった。政府見解や村山談話を議論することなく、異なる意見を封じようというのは立法府のとるべき対応ではない」


 文民統制の確保はもちろん、空幕長だった田母神氏が部外への意見発表の手続きを完璧(かんぺき)に踏まなかったことの責を負うのは当然である。その一方で、安全保障政策や歴史認識に対する自由闊達(かったつ)な議論が求められていることも忘れてはならない。(津田俊樹)


≪空自トップ更迭に関する各社の社説≫


 朝日

 ・ぞっとする自衛官の暴走(2日)

 ・「言論の自由」のはき違え(12日)

 読売

 ・立場忘れた軽率な論文発表(2日)

 ・「言論の自由」をはき違えるな(12日)

 毎日

 ・トップがゆがんだ歴史観とは(2日)

 ・隊内幹部教育の実態究明を(12日)

 産経

 ・歴史観封じてはならない(2日)

 ・本質的議論聞きたかった(12日)

 日経

 ・田母神空幕長の解任は当然(3日)

 ・田母神氏だけなのか心配だ(12日)

 〈注〉日付はいずれも11月


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