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第3・8 争点8(損害の回復方法及び損害額)について

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pipopipo555jp

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沖縄集団自決裁判大阪地裁判決
事実及び理由
第3 争点及びこれに対する当事者の主張

第3・8 争点8(損害の回復方法及び損害額)について





第3・8(1) 原告らの主張


ア(慰謝の必要性)*

(ア)(損害の大きさ)*
本件各書籍は,原告梅澤の社会的評価を著しく低下させ,その名誉を甚だしく毀損し,もって原告梅澤の人格権を侵害し,筆舌に尽くし難い精神的苦痛を与えた。

本件書籍(2)は,赤松大尉の社会的評価を著しく低下させ,その名誉を甚だしく毀損してその人格権を侵害した上,原告赤松が実兄である赤松大尉に対して抱いていた人間らしい敬愛追慕の情を内容とする人格的利益を回復不能なまでに侵害した。

(イ)(訂正、広告、慰謝料)*
原告らの名誉回復と精神的苦痛を慰謝するためには,被告岩波書店は,本件各記述に対して訂正,謝罪広告を掲載し,原告らに慰謝料の支払いをする必要があり,被告大江は,沖縄ノートの各記述に対して訂正,謝罪広告を掲載し,原告らに慰謝料の支払いをする必要がある。

(ウ)(慰謝料の請求額)*
被告岩波書店が支払うぺき慰謝料は,各原告に対してそれぞれ1000万円であり,被告大江が支払うぺき慰謝料は,各原告に対してそれぞれ500万円である。

イ(出版差し止め)*

また,前記アのとおりであるから,人格権に基づく本件各書籍の出版,販売,頒布の差止めがなされる必要がある。



第3・8(2) 被告らの主張


ア(慰謝の必要性)*

否認し,争う。

イ(出版差し止め請求の根拠は無い)*

名誉毀損を理由として出版を差し止めることは原則として許されず,特に公共の利害に関する事項については,表現内容が真実でないことが明白であるか,または専ら公益を図る目的のものでないことが明白であって、かつ,被害者が重大にして著しく回復困難な損害を被るおそれがある場合に限り,例外的に認められるものである(最高裁昭和61年6月11日大法廷判決・民集40巻4号872頁)。また,同判決は,名誉は生命,身体とともに極めて重大な保護法益であり,人格権としての名誉権は物権の場合と同様に排他性を有する権利であるという理由により,人格権としての名誉権に基づき例外的に侵害行為の差止めを求めることができるとしているのであるから,死者に対する敬愛追慕の情を侵害することを理由に出版を差し止めることはできないと解される。死者に対する敬愛追慕の情の侵害は,排他性を有する名誉権を侵害するものではなく,単なる不法行為にすぎず,差止請求の根拠とはなり得ない。


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