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読売 「沖縄ノート」めぐる名誉棄損訴訟、元少佐らの請求棄却

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pipopipo555jp

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沖縄ノート訴訟、集団自決「軍深く関与」…大江さんら勝訴




 沖縄戦で住民に集団自決を命じたと著書で虚偽の記述をされ、名誉を傷つけられたとして、旧日本軍の元少佐らが作家の大江健三郎さん(73)と岩波書店(東京)に出版差し止めと2000万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が28日、大阪地裁であった。

 深見敏正裁判長は「集団自決には旧日本軍が深くかかわった。元少佐らの関与も推認できる」と指摘。自決命令があったかどうかは断定を避けたが、「記述には合理的な根拠があり、真実と信じる相当な理由があった」として名誉棄損の成立を否定、原告の請求をすべて棄却した。原告側は控訴する。

 訴えていたのは、座間味島の守備隊長だった元少佐・梅沢裕さん(91)と、渡嘉敷島の守備隊長だった元大尉・赤松嘉次さん(故人)の弟秀一さん(75)。

 問題とされた著作は、大江さんの随想記「沖縄ノート」(1970年出版、約30万部発行)と、家永三郎氏の歴史研究書「太平洋戦争」(68年出版、約18万部発行)。沖縄ノートは他の文献を引用する形で集団自決を「日本人の軍隊の命令」とし、梅沢さんと赤松さんの名前を伏せ、「事件の責任者はいまなお、沖縄にむけてなにひとつあがなっていない」などと記述した。太平洋戦争は梅沢さんの実名を出し、「自決せよと命令した」と記した。

 深見裁判長はまず旧日本軍の関与について検討。〈1〉軍から、自決用の手榴(しゅりゅう)弾を受け取ったとする住民らの証言が多数ある〈2〉沖縄で集団自決が発生したすべての場所に軍が駐屯し、軍のいない島では自決がなかった――などから「軍が深くかかわった」と認定。梅沢さんと赤松さんについても、「島では原告らを頂点とした上意下達の組織が築かれ、関与は推認できる」と指摘した。

 しかし、原告らが命令を出したかについては、命令の伝達経路などがはっきりしないため、「命令したと認定するには躊躇(ちゅうちょ)を覚える」とした。

 そのうえで、「記述は原告らの社会的評価を低下させるが、集団自決に関する学説の状況、文献の存在などを踏まえると、真実と信じる相当の理由があった」と結論づけた。

 原告側は「原告らによる自決命令は住民の遺族が戦後に補償を受けるため捏造(ねつぞう)された虚構」と主張したが、深見裁判長は「捏造は認められない」と述べた。

 この訴訟は、2006年度の教科書検定で「軍による強制」の記述に意見がつく理由の一つとなり、判決が注目されていた。

(2008年3月28日10時29分 読売新聞)
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