宝石乙女まとめwiki

ある日の人助け

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匿名ユーザー

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とある時代のとある日。
私は、いつものように姉妹の所へ遊びに出かけていた。
その日は、ある姉妹といつもより話し込んでしまって、帰りが遅くなってしまった。
林道を通り抜ける私に頼れるのは、沈む夕日、それと逆に昇ってきた月明かりだけ。

昼と夜で全く違った景色を見せる林。
周りを見渡せば、先の見えない暗闇。
上を見れば、僅かに空が見える。
正直に言ってしまえば不気味で早く帰りたかった。
だがそんなときに限って余計なことが起こりやすい。



「そこのお嬢さん」

急に声を掛けられたものだから、ビックリして声が出なかった。
辺りを見回す。すると、右手の叢から人が出てきた。

「済まないね、驚かせてしまったかな?」
「ええ、レディを脅かすなんて紳士のすることではありませんわね」
「それは済まないことをした。この通りだ」

そう言ってその人は深く頭を下げる。
外見と頭の生え具合からして初老の男性、といったところか。
「で、何の用ですの?私は今とても急いでいましてよ」
「ははは、これは手厳しい。簡潔に言ってしまえば、道に迷った。
 だから、町まで道案内をして欲しい。私の用はこれだけだよ」
「簡単でありながら、とても厄介ですわね……」

ここで言う「厄介」とは、今来た道を戻らなければ町まで行けないこと、
案内すれば日は完全に暮れ、余計に不憫な思いをしてこの道を通らなければいけないこと、
そして、そもそもこの人物に関わってしまったことを内包している。

「仕方ありませんわね……」

関わってしまった以上、無視することも出来ない。
それに、この林道に不慣れな人物を1人残すことがどれだけ危険なことか。
道を教えても、この暗闇では余計に迷うだけであろう。

「私に着いてきなさい」
「道案内してくれるのかい?かれこれ半日以上は迷って――」
「……黙って着いてきなさい」
「厳しいねぇ」

どうしてこう、私の周りには余計な口数が多い人が集まるのでしょう。

「ここは……」
「ここは私の屋敷ですわ」
「町には?」
「今更町へ案内したら私の帰りが遅くなりますわ。淑女を危険に晒すおつもりですか?」
「いやいや、そんなつもりは毛頭もないよ。それに助かるのならどっちでもいいさ」
「召使いに部屋の用意をさせますから、しばらく客室で寛いでいなさい」

やるからにはさっさと済ませてしまおう。
手始めにマスターに部屋の準備をさせて、夕食も1人分追加で用意させる。
後はマスターに任せておけば、私のお役御免ですわね。






「変わらないのう……」

後ろから呟かれた言葉、私には何のことかわからなかった。

「ああ、お帰り鶏冠石」
「出迎えが無いとは、教育不足のようですわね」
「いつもの時間には玄関先で待ってたんだけどね。
 あまりにも遅いから、先に用事を済ませていたところだよ」
「そもそも私を1人で帰らせることが間違っていますわ。
 次からは姉妹の屋敷まで迎えに来なさい」

我ながら無茶な注文だとは思う。
でも、言葉が湧いてくる以上、発言せずにはいられない。

「自分でも無理難題だとは解っているんだろう?僕だって仕事がある。
 何なら爺に送り迎えをさせることも出来るが、君は嫌なんだろう?」
「ええ、宝石乙女たる者、マスター以外の人間と必要以上に関わるわけには行きません」

というのは建前で、実際はマスターと時間を共有したいなんてことは無い。断じてない。

「それよりも、部屋を用意しなさい。客人が来ていますわ」
「客?僕以外の人に関わらないと言ったはずでは?」
「これは不可抗力の上に人助けですわ。つべこべ言わずにさっさと用意なさい。
 客人を待たせることは、この家の恥に繋がりますわ」
「先に長話を吹っ掛けたのは誰だよもう……」
「お黙りなさい」
「はいはい」
「用意出来たってさ・・・・・・あれ?」
「久しぶりじゃのう、ボウズ」
「どうして爺さんがここに居るんだ?」
「そこのお嬢ちゃんに連れられてきた」
「2人とも知り合いですの?」
「ああ、ちょっとした腐れ縁でな」
「相も変わらず生意気じゃのう」
「何しに来たって言うんだ、早く帰れよ」
「この暗闇の中に老人一人を放り出そうとは、ボウズも酷い大人になったのう」
「アンタよりかは幾分かマシだ」
「それにしても、こんな可愛い子を連れ込んで、偉くなったもんだ」
「だから何の用だってんだ」
………
……



「どうりで何処か似ているような気がしましたわ……」

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