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人魚姫

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匿名ユーザー

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だれでも歓迎! 編集
深夜の散歩。暑くて寝苦しい夜は無理に眠ろうとせずに、星でも眺めながら散歩するに限る。
敷地の外れにあるプールは暑気払いに丁度いい。
祖父の代に整備され、父の代に今時の設備が整えられたのだが
維持に費用が嵩むので父が手放したものだ。
夜の営業時間外だけは息子の僕が自由に使わせてもらっている。

パシャ

深夜に水音が響く。誰もいない時間帯の泳ぎを楽しんでいる人がいるようだ。
照明は点けていないところを見ると、こっそり侵入しているのかな?
まあ、暑い夜だし。

月を映す水面が揺れている。綺麗なフォームだ。
あのシルエットは……髪の長い……女性か

水から上がり、プールサイドに腰掛け
髪を絞る。
綺麗だな……泳ぐ姿といい、髪を弄ぶ姿といい
おとぎ話の人魚姫はこうだったに違いない。

声を掛けるのも躊躇われ、暑さを忘れて魅入っていたが
彼女が水着を着けていないことに気が着いた。
裸ですか……

きれいだな……
均整の取れたプロポーション
艶めかしい白い肌
濡れた長い髪
遠めで誰かは判らないけど
本当に人魚姫みたいだ……

見蕩れている自分に気がつき、申し訳ない気分になってきた。
マナー違反だよね
後ろ髪を引かれつつ、その場を離れようと歩く。
枯れ枝を踏んで音を立ててしまうなんて、ベタな展開で自分にがっかりする。

「誰ですか?!」

女性が驚いた声を上げる。そりゃ、裸なんだもの。驚くさ。
と、冷静に思いつつ 聞き覚えのある声にハッとする。

「! ペリドットか?」
「マスター?! マスターなんですか?」
「どうしてここに?」
「暑かったものですから……マスターこそ」
「暑かったからね……」
「もしかして……ずっと見ていらしたのですか?」
「い、いやぁ……ずっとなんて見てないよ。ほ、本当だよ」
「嘘のつけない人ですね。ふふ。見られたのがマスターですから、いいことにします」
「他の人だったら?」
「そうですね、ちょっとショックを与えて記憶を――」
「おいおい、それはどうかな?」
「冗談ですよ。このあたりに夜に来る人がいないことを調べたうえですから。でも、マスターが来る可能性を失念してました」
「ま、まあ、それはともかく。何か着たらどうかな。僕も、目のやり場に困る」
「あら、いいじゃありませんか。マスターも一緒に泳ぎませんか」

人魚姫が僕を水に誘う。服を着たまま、手を引かれて飛び込む。

「さすがに泳ぎずらいなぁ」
「脱いでしまえばいいのですよ。昔は水着なんて着ませんでしたよ」
「いつの話ですか……、まあ、いいか」

生まれたままの姿で泳ぐ二人。
月明かりで白く輝く彼女を追って泳ぐ。

「捕まえることができたら、ご褒美をあげますね」

マーメイドかセイレーンか、そんな顔で挑発されたら断れないじゃないか。
右へ、左へ、水の中を自在に泳ぐ彼女は本当に綺麗だ
弄ばれながらでも、ずっと見ていたいと思う。

必死の努力の末に、彼女を捕まえることに成功。
逃がさないように強く抱き締める。

「体が冷たいじゃないか。夏とは言っても、冷やしすぎは良くないよ」
「あら、マスターが温かくしてくれるのでしょう?」

触れた唇だけは熱かった。
これは、真夏の夜の夢。
人魚姫との一夜の夢。

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