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雷追っかけ娘

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jewelry_maiden

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 灰色の空に、まるでカメラのフラッシュのような強烈な光が点滅する。そのあとに響く轟音。雷だ。
「きゃーっ!」
 で、蛋白石はテーブルの下に隠れる。
「雷、苦手なんだね」
「そそ、そうですよぉ……うぅ、早く収まって……」
 落雷。
「いやーっ!!」
 叫ぶのはちょっと抑えて欲しいけど、嫌いなものは嫌いだから仕方ないか。それに、女の子らしくてなんだか可愛いし。
「……主様、何をにやけておられるのですか」
 背後から、気配もなく僕を見下ろしている殺生石。同時に落雷。稲光が殺生石の顔に強烈な陰影をつけ、険しい顔にさらなるインパクトが加わる。
 蛋白石が悲鳴を上げたのは分かるが、それよりもこの重々しい気配の方が気になって仕方ない。まぁ、さすがといえばそれまでだけど、殺生石は雷が平気みたいだ。
「せ、殺生石……別に、笑ってないよ?」
「そうですか。それならばよいのです……それならば」
 僕の隣に腰を下ろす殺生石。
「殺生石は、その、雷怖くないんだね」
 空気を変えるために話題を振ってみる。
「ええ。鬼の太鼓で慣れましたから」
 ……言うことのスケールが全然違うから、話を繋げられないけど。
「あはは……あれ、電気石は?」
「あの子なら、今しがた雨合羽を着てどこかへ行きましたが」
 雨合羽を着て、か。
「んー……ちょっと見てくるよ」

 傘を差して雨のひどい外へ。電気石の歩幅だったら多分それほど遠くへは……と、道の角に消える電気石のスカートが見える。やっぱりそれほど遠くに行ってなかったか。とりあえず電気石のあとを追う。
「電気石っ、一人で歩いちゃ危な――うわああぁっ!?」
「んー?」
 驚いた。去年僕が買った雨合羽を着ている電気石。だけどそれだけじゃない。肩には細くてやたらと長い鉄の棒を持っている……何に使うんだろう、これ。
「な、何持ってるの? そんなの持ってたら危ないよ?」
「……避雷針?」
「いや、首をかしげられても……って、避雷針っ!?」
 避雷針というと、あの雷を落ちるようにし向ける鉄の……。
「ああ、危ないから離しなさいっ」
「やー」
 電気石から避雷針を取り上げようとするが、なかなか渡そうとしない。こんな雷のひどい中、こんなのを持ってたらいつ落ちてくるか……と、そこに雷鳴がとどろく。
「うわっ!」
 近くにこんな長い棒があったら、いくら雷が平気でも身がすくんでしまう。
「……こわい?」
「怖いとかそういうのじゃなくてぇ、いったいそれ持って何しに行くの?」
「……おいしいよ?」
 お、美味しいって……まさか。
「で、電気石……まさか、雷浴びに行くの?」
「んー……充電」
 頭が痛くなってきた。
「マスター……危ないから、来たら……めー」
「は、はぁ……でも、電気石は」
「私……平気。雷……ぴかーんどーん……大好き」
 ぴかーんどーんって、なんか原爆みたいな……って、大好きなんだ。しかも平気って言うのは怖くないとか言うことじゃなく、体のことなんだろうなぁ。
「えっと、本当?」
「嘘……じゃない」
「そ、そう……」
「うん……」
 再び落雷。今度はちょっと遠ざかってるかな?
「……行っちゃう。マスター……お話、あとで」
「え、あ……うん。き、気をつけて……」
 駆け足で音の方へ向かう電気石。その後ろ姿を、僕はただ見守るだけだった。

「もう雷嫌ーっ!」
「……だんな様は、雷を怖がるぐらいの子がいいのでしょうか」


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