「マスターさんっ!」
「マスターっ、たた、大変……なのですよぉーっ!!」
……今、俺の耳がおかしくなった。
何だ何だ? 金剛石と鶏冠石ちゃんに呼び止められたのは分かるんだが。でもなんだ、ものすごい違和感があった。金剛石が、え?
とりあえず振り返ってみるが、いつも通りの二人が並んでいるだけだ。
「えっと、とりあえず、うん、どうした?」
まぁ、とりあえず事情を聞いてみよう。そうすれば何か分か――。
「金剛石のミスでちょっとしたトラブルに巻き込まれてしまいまして」
そう言うのは金剛石。
「ち、違うでしょーっ、元はといえば鶏冠石がっ」
そう言うのは鶏冠石ちゃん。
「……ねぇ、もしかしてからかってる?」
「そんなわけありませんわ。こちらは真剣に困っているのですから」
「そ、そうだ……そうですよぉ、なんか鶏冠石と頭の中が入れ替わっ……入れ替わってしまってぇ」
……はぁ?
「マスターっ、たた、大変……なのですよぉーっ!!」
……今、俺の耳がおかしくなった。
何だ何だ? 金剛石と鶏冠石ちゃんに呼び止められたのは分かるんだが。でもなんだ、ものすごい違和感があった。金剛石が、え?
とりあえず振り返ってみるが、いつも通りの二人が並んでいるだけだ。
「えっと、とりあえず、うん、どうした?」
まぁ、とりあえず事情を聞いてみよう。そうすれば何か分か――。
「金剛石のミスでちょっとしたトラブルに巻き込まれてしまいまして」
そう言うのは金剛石。
「ち、違うでしょーっ、元はといえば鶏冠石がっ」
そう言うのは鶏冠石ちゃん。
「……ねぇ、もしかしてからかってる?」
「そんなわけありませんわ。こちらは真剣に困っているのですから」
「そ、そうだ……そうですよぉ、なんか鶏冠石と頭の中が入れ替わっ……入れ替わってしまってぇ」
……はぁ?
「つまり、鶏冠石ちゃんの家に遊びに行って、廊下を走っていたら鶏冠石ちゃんと頭ぶつけ合って……アニメみたいだ」
どうやら、演技ではなく本当に二人の中身が入れ替わっているらしい。そりゃそうだよね、金剛石が乙女らしい口調を自然に喋るはずないし。
「マスター、なーんかものすごく失礼なこと考えてない?」
「金剛石、私の体でそのように下品な言葉遣いはやめなさい」
「下品ってなによぉー」
そしてなんか二人とも仲悪いし。まぁ、こんな事態になったら当然か。
まぁ、中身が入れ替わったことについてはいちいち驚かない。宝石乙女を見てからどんな超常現象も受け入れられるようになった気がする。
それにしても、今回は明らかに金剛石が悪いよなぁ……。
「はいはい、二人とも落ち着いて。金剛石、いつも無駄にエネルギー使うなって言ってるだろ?」
「マスターさん、私は鶏冠石ですが」
「え、あれ? あぁ……そ、そういうことだ。今回はお前が悪いから謝れ」
「マスターさん、わたくしはけーかんせきだ……ですが」
「中身は金剛石だろ!」
「う……ごめんなさい」
鶏冠石ちゃんの姿をした金剛石がうなだれる。まったく、ややこしい。早く何とかしないとな。
「とりあえず、今までこんな前例はなかったのか?」
「慌て者の金剛石ならどうかは分かりませんが、私は身に覚えがありません」
「ちょっとー、余計なこと言わないでよぉ。あたしだってそんなの全然知らないってば」
「だから私の体でそのように下品な――」
「はいはいストーップ。とりあえず前例はないんだな」
なんだかいつもの倍疲れるな、この会話。
しかし、前例がないとなると、ペリドットさんや真珠さんに助けを求めたいところか。
「姉様たちならいませんわよ。何でも昔のマスターの墓参りということですが」
自力でやらないとダメなのか……何で考えてること分かったんだ。
「やっぱりここは同じ衝撃を与えてみるってのが妥当なのかな」
「そうそうっ、それだよそれー」
「なっ……」
金剛石と鶏冠石ちゃんでまったく違う反応を見せる。まぁ、鶏冠石ちゃんはあまり力業は好きじゃなさそうだしな。
「わ、私はもっとソフトな方法がよろしいのですが……第一金剛石のように廊下を走るなどというはしたない行為は……」
「鶏冠石さっきから一言余計っ! そんなに言うんだったらあたしがぶつかるから」
「私の体でそのような行為はやめてくださらないかしら。貴女と違って無駄に頑丈ではありませんから」
……戻る気あるのかな、二人とも。
どうやら、演技ではなく本当に二人の中身が入れ替わっているらしい。そりゃそうだよね、金剛石が乙女らしい口調を自然に喋るはずないし。
「マスター、なーんかものすごく失礼なこと考えてない?」
「金剛石、私の体でそのように下品な言葉遣いはやめなさい」
「下品ってなによぉー」
そしてなんか二人とも仲悪いし。まぁ、こんな事態になったら当然か。
まぁ、中身が入れ替わったことについてはいちいち驚かない。宝石乙女を見てからどんな超常現象も受け入れられるようになった気がする。
それにしても、今回は明らかに金剛石が悪いよなぁ……。
「はいはい、二人とも落ち着いて。金剛石、いつも無駄にエネルギー使うなって言ってるだろ?」
「マスターさん、私は鶏冠石ですが」
「え、あれ? あぁ……そ、そういうことだ。今回はお前が悪いから謝れ」
「マスターさん、わたくしはけーかんせきだ……ですが」
「中身は金剛石だろ!」
「う……ごめんなさい」
鶏冠石ちゃんの姿をした金剛石がうなだれる。まったく、ややこしい。早く何とかしないとな。
「とりあえず、今までこんな前例はなかったのか?」
「慌て者の金剛石ならどうかは分かりませんが、私は身に覚えがありません」
「ちょっとー、余計なこと言わないでよぉ。あたしだってそんなの全然知らないってば」
「だから私の体でそのように下品な――」
「はいはいストーップ。とりあえず前例はないんだな」
なんだかいつもの倍疲れるな、この会話。
しかし、前例がないとなると、ペリドットさんや真珠さんに助けを求めたいところか。
「姉様たちならいませんわよ。何でも昔のマスターの墓参りということですが」
自力でやらないとダメなのか……何で考えてること分かったんだ。
「やっぱりここは同じ衝撃を与えてみるってのが妥当なのかな」
「そうそうっ、それだよそれー」
「なっ……」
金剛石と鶏冠石ちゃんでまったく違う反応を見せる。まぁ、鶏冠石ちゃんはあまり力業は好きじゃなさそうだしな。
「わ、私はもっとソフトな方法がよろしいのですが……第一金剛石のように廊下を走るなどというはしたない行為は……」
「鶏冠石さっきから一言余計っ! そんなに言うんだったらあたしがぶつかるから」
「私の体でそのような行為はやめてくださらないかしら。貴女と違って無駄に頑丈ではありませんから」
……戻る気あるのかな、二人とも。
ここは鶏冠石ちゃんの住んでいる屋敷。ちなみにマスターさんは今出かけているそうだ。そして、現場と思われる廊下。ホント長いな……金剛石が走りたくなるのもよく分かる気がする。
「さて、それじゃあ鶏冠せ……金剛石がこっちから走ってきて、鶏冠石ちゃんにぶつかる。いいな?」
「はーいっ」
長いスカートを持ち上げ、臨戦態勢は万全の金剛石。ちなみに鶏冠石ちゃんには、三十分間説得を続けて納得してもらった。これが終わったらお詫びしないとな。
「わ、私も万全でしてよ」
その顔に緊張の面持ちを浮かべる鶏冠石ちゃん。金剛石の顔でこんな表情を見ることになるとは今まで思いもしてなかった。
「よぉーっし、思いっきり行くからねーっ」
対する金剛石は相変わらず明るい。鶏冠石ちゃんの顔でこんな表情を以下略。
「だから私の体でそのような下品な言葉遣いは……」
「まぁまぁ。それじゃあ、いいぞー」
「はいっ! よーいっ、ドン!」
自分でかけ声をかけて、勢いよく走り出した金剛石。と、思ったのだが、その足取りは想像以上に遅い。普段の金剛石からは想像もつかないスピードだ。
……あぁ、体は鶏冠石ちゃんだから運動能力に優れていないのかも。
「か、体が、重い……」
「なっ、おお、重いとは何ですか!!」
「落ち着いてっ。金剛石の体は鶏冠石ちゃんよりパワーがあるからそう感じるだけなんだって!」
「そ、それもそうですわね……って、それはつまり……」
鶏冠石ちゃんの表情に焦りが表れる。まぁ、そうなんだよね。つまり鶏冠石ちゃんが思いっきり走らないと、ね。
「ひぃ、ふぅ……あうぅ、なんかいつもより何倍も疲れるんだけど……体、重い」
「こ、金剛石っ! ちょっと表に出なさい!」
「だぁーっ、頼むから落ち着け!」
「さて、それじゃあ鶏冠せ……金剛石がこっちから走ってきて、鶏冠石ちゃんにぶつかる。いいな?」
「はーいっ」
長いスカートを持ち上げ、臨戦態勢は万全の金剛石。ちなみに鶏冠石ちゃんには、三十分間説得を続けて納得してもらった。これが終わったらお詫びしないとな。
「わ、私も万全でしてよ」
その顔に緊張の面持ちを浮かべる鶏冠石ちゃん。金剛石の顔でこんな表情を見ることになるとは今まで思いもしてなかった。
「よぉーっし、思いっきり行くからねーっ」
対する金剛石は相変わらず明るい。鶏冠石ちゃんの顔でこんな表情を以下略。
「だから私の体でそのような下品な言葉遣いは……」
「まぁまぁ。それじゃあ、いいぞー」
「はいっ! よーいっ、ドン!」
自分でかけ声をかけて、勢いよく走り出した金剛石。と、思ったのだが、その足取りは想像以上に遅い。普段の金剛石からは想像もつかないスピードだ。
……あぁ、体は鶏冠石ちゃんだから運動能力に優れていないのかも。
「か、体が、重い……」
「なっ、おお、重いとは何ですか!!」
「落ち着いてっ。金剛石の体は鶏冠石ちゃんよりパワーがあるからそう感じるだけなんだって!」
「そ、それもそうですわね……って、それはつまり……」
鶏冠石ちゃんの表情に焦りが表れる。まぁ、そうなんだよね。つまり鶏冠石ちゃんが思いっきり走らないと、ね。
「ひぃ、ふぅ……あうぅ、なんかいつもより何倍も疲れるんだけど……体、重い」
「こ、金剛石っ! ちょっと表に出なさい!」
「だぁーっ、頼むから落ち着け!」
二回目。今度は鶏冠石ちゃんが金剛石にぶつかる番だ。しかし……。
「わ、私、思いっきり走るなんて初めてですわ」
「大丈夫だよ、体は金剛石だから。ただ落ち着かないと、想像以上にスピード出るかも」
「ええ……本当、エネルギーばかり有り余ってるのですね」
「鶏冠石ぃ~っ」
今にも向かっていきそうな金剛石を押さえる……仲悪いなぁ、ホント。
「むぅー、早くしてよぉ。この重い体じゃあ疲れるんだからー」
「なっ……」
金剛石、それはわざと言ってるのかな? 仏の顔も三度まで。鶏冠石ちゃんの顔はみるみるうちに赤くなっている。怒ったね、確実に、本気で。
「ふ、ふふ、ふふふふふふふ……こ~ん~ご~お~せぇ~きぃ~」
「え……何? もしかして……」
「金剛石、口は災いの元って言葉、知ってる?」
まぁ、もう遅いけど。
「そこまで、そこまで言うんでしたら……私、本気で……本気で、参りますわよっ!」
そう言う鶏冠石ちゃんの顔は、まるで獲物を追いつめるライオンのような。金剛石の顔だけど。
で、恥ずかしさも怒りで吹っ飛んだ様子で走り出したわけ……って、いきなりトップスピード!? なんかほこりが舞い上がって土煙みたくなってるぞ!
やばい、本能がそう悟る。このまま金剛石を押さえた状態だと、俺の身にも危険が及ぶ。そこまで考えたところで、俺の体は左側に飛び退いていた。
どうやら俺の本能は正解だったようだ。金剛石と鶏冠石ちゃんの距離はすでに一メートルを切っている。視界がスローモーションで進む。顔面蒼白の、中身が金剛石の鶏冠石ちゃん。怒りで我を忘れている、中身が鶏冠石ちゃんの金剛石。
飛びかかる鶏冠石ちゃん。金剛石に身を守る術はない。このまま頭がガチンコでぶつかれば、きっと二人の中身……もっ!?
……視界、ブラックアウト。
「わ、私、思いっきり走るなんて初めてですわ」
「大丈夫だよ、体は金剛石だから。ただ落ち着かないと、想像以上にスピード出るかも」
「ええ……本当、エネルギーばかり有り余ってるのですね」
「鶏冠石ぃ~っ」
今にも向かっていきそうな金剛石を押さえる……仲悪いなぁ、ホント。
「むぅー、早くしてよぉ。この重い体じゃあ疲れるんだからー」
「なっ……」
金剛石、それはわざと言ってるのかな? 仏の顔も三度まで。鶏冠石ちゃんの顔はみるみるうちに赤くなっている。怒ったね、確実に、本気で。
「ふ、ふふ、ふふふふふふふ……こ~ん~ご~お~せぇ~きぃ~」
「え……何? もしかして……」
「金剛石、口は災いの元って言葉、知ってる?」
まぁ、もう遅いけど。
「そこまで、そこまで言うんでしたら……私、本気で……本気で、参りますわよっ!」
そう言う鶏冠石ちゃんの顔は、まるで獲物を追いつめるライオンのような。金剛石の顔だけど。
で、恥ずかしさも怒りで吹っ飛んだ様子で走り出したわけ……って、いきなりトップスピード!? なんかほこりが舞い上がって土煙みたくなってるぞ!
やばい、本能がそう悟る。このまま金剛石を押さえた状態だと、俺の身にも危険が及ぶ。そこまで考えたところで、俺の体は左側に飛び退いていた。
どうやら俺の本能は正解だったようだ。金剛石と鶏冠石ちゃんの距離はすでに一メートルを切っている。視界がスローモーションで進む。顔面蒼白の、中身が金剛石の鶏冠石ちゃん。怒りで我を忘れている、中身が鶏冠石ちゃんの金剛石。
飛びかかる鶏冠石ちゃん。金剛石に身を守る術はない。このまま頭がガチンコでぶつかれば、きっと二人の中身……もっ!?
……視界、ブラックアウト。
「……ターっ、マスターっ!」
「しっ……してくださいっ、マスターさん!」
……あれ、ここは。
「マスターっ!」
抱きつかれる感触。
えっと、俺は確か……。
「私を避けようとして壁に頭をぶつけてしまわれて……申しわけございません」
……あぁ、そうか。俺は鶏冠石ちゃんを避けるために。
「マスターのおかげで、何とか元に戻れたよっ。ありがとう!」
そうか、二人とも元に戻ったのか……。
「よかったな、金剛石」
そう言って、金剛石の頭を撫でる。
「……あの、私は鶏冠石ですが」
「は? 何言ってるんだよ。その赤いドレスは金剛石だろ?」
何だ? 実はまだ戻ってないってオチか?
でも、何でだろう。俺に抱きついてきている鶏冠石ちゃんが呆然としているのは。
「……マスター、もう一回やる?」
そうつぶやく鶏冠石ちゃん。口調が金剛石っぽいのは、何かの演技なのかな?
「しっ……してくださいっ、マスターさん!」
……あれ、ここは。
「マスターっ!」
抱きつかれる感触。
えっと、俺は確か……。
「私を避けようとして壁に頭をぶつけてしまわれて……申しわけございません」
……あぁ、そうか。俺は鶏冠石ちゃんを避けるために。
「マスターのおかげで、何とか元に戻れたよっ。ありがとう!」
そうか、二人とも元に戻ったのか……。
「よかったな、金剛石」
そう言って、金剛石の頭を撫でる。
「……あの、私は鶏冠石ですが」
「は? 何言ってるんだよ。その赤いドレスは金剛石だろ?」
何だ? 実はまだ戻ってないってオチか?
でも、何でだろう。俺に抱きついてきている鶏冠石ちゃんが呆然としているのは。
「……マスター、もう一回やる?」
そうつぶやく鶏冠石ちゃん。口調が金剛石っぽいのは、何かの演技なのかな?
◇ ◇ ◇ ◇
「どうしたの鶏冠石? ご飯残すなんて、珍しいね」
「え、ええ……ちょっとダイエットをと、思いまして……おほほほほ」
「え、ええ……ちょっとダイエットをと、思いまして……おほほほほ」
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