宝石乙女まとめwiki

初めて見せた、君の顔

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匿名ユーザー

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  今年ももうすぐ夏がやってくる。
  俺は寒いのより暑い方が我慢出来るから、冬よりは過ごしやすい。
「みっずぎー♪」
  そして天が持つ紙袋。中身はついさっきタンスから出した水着だ。
「おいおい、あまりはしゃぐなよ」
「だってぇ、マスタぁーと海行くの楽しみなんだもーん」
  そういや、去年もこんな感じてはしゃいでたな。いや、水着買ってやった影響もあってか、今年よりテンションは高かったか。
「こちらは某のか……正直布地の少ない衣類は慣れぬな」
  で、こちらは相変わらずクールな反応の珊瑚。
  でも海は嫌いじゃないらしく、なんだかんだいってみんなと楽しんでいた。
「でも似合ってるんだし、いいじゃんか」
「それは、主が勝手に言っているだけだろう……」
  目線をそらし、頬をわずかに赤くする。
  ……去年も、こんな顔してたなぁ。

          ◆

「そ、それは……主が勝手に言っているだけだろう……」
「そんなことねーって」
  青い海、白い砂浜。
  ここは爆弾岩さんが知っている穴場のスポットだ。人気もなく、いるのは俺と宝石乙女達だけ。
  見慣れない子も中に混じっているけど、まぁ気にしなくていい。
「それにしても……なんで男の保護者は俺だけなんだぁ?」
「【黒曜石のマスター】殿は仕事、【蛋白石のマスター】殿は勉学が忙しいそうだ」
「で、暇人の俺が抜擢された訳か……」
  なんか情けない気がしてきた。
「マスタぁー、真珠お姉ちゃんが日焼け止め塗りなさいってー」
  片手に日焼け止めの容器を持った天がやってくる。
「おう、じゃあ二人とも塗ってやるからこっち来い」
「こ、こら主っ! こういうのをせくはらというのだろう!?」
「冗談だっつーの。ほれ、塗ってやってくれ」
  そう言って日焼け止めを珊瑚に手渡す。
  さて、俺も……。
「むぅ……ところで、主は良いのか?」
「ひりひりになっちゃうよー?」
  そりゃあ、ただ火に照らされてるだけではそうなる。
  だが男は肌が黒い方がいいしな。というわけで……。
「俺はこっち」
「にゅ……なぁに?」
「サンオイル」
「さん……おいる?」
  天河石と珊瑚で同じ首のかしげ方。なんか面白い光景だ。
「これ塗っておくと日焼けしても痛くならねーんだ」
「へぇー、すごいねっ」
「ふむ……やはり現代は進んでいるのだな」
  そして同じように感心する。やっぱり姉妹なんだな、こいつら。
  とまぁ、そんな二人の様子ににやにやしながら、サンオイルを塗っておく。
「お前らもちゃんと塗っておけよー」
「分かっている……主、背中は大丈夫か?」
「あー、天河石が終わったら頼む」
「分かった……よし、もう良いぞ」
「はーいっ、お姉ちゃんも早く来てねー」
  そう言って、浮き輪片手に波打ち際へ走っていく天河石。他のちびっ子はすでに遊び始めている。
「主、そちらを貸してくれ」
「あぁ。なるべく多めで頼む」
  サンオイルの容器を珊瑚に手渡す。
「ふむ……うおっ、なんだこれはっ。日焼け止めと全然違うぞ」
「そりゃそうだろう。モノが違うんだから」
「それもそうか。しかしこれは油じゃないのか?」
「……オイルって油だぞ?」
「なぬっ?」
  ……こいつ、俺より年上なのに横文字に弱いな。
「そ、そうだったのか……世の中は広いようで狭いな。まるで主が食材のように見えてきたぞ」
「怖いこと言うな。それより早くしてくれ」
「あ、ああ」
  遠慮がちに、背中に触れてくる珊瑚の手。
  あんなでかい斧を持っている手とは思えない、繊細な指。そして小さな手。
  ……くすぐったい。手が俺の背中をなで回す度、妙なこそばゆさが背筋を走る。
「どうした主?」
「ん、いや、くすぐったいだけ」
「そうか。しかし油か、さっきから滑りそうになっ」
  先ほどとは違う感触。
  ……手を滑らせた珊瑚が、俺の背中に倒れ込んだのか。
  必然的に、抱きつく形になる。
  …………あー、色々当たってるわ。普段はドレスで隠れてるけど、スタイル良かったからなぁ。
「あ、あぁぅ……す、すまぬっ!」
  謝罪の言葉と同時に、背中から当たっていたものが離れる。
「え? あぁ……いや、別に」
  なるべく冷静を装っているが、向こうが緊張の様子だとこちらもぎこちなくなってしまう。
  背中越しに水着姿の、それでいて顔を赤くしてあわてる珊瑚、か。
  ……くそ、可愛い。
「と、とにかく終わったからなっ。主も早く来い!」
  突然目前に姿を現すや、俺の手を思いっきり握る。
  青空をバックに、その顔は予想通り赤く、それでいて照れた表情を浮かべていた。
「あだだっ、分かった分かった。だからそう手を引っ張るな」
「主はのんびり過ぎるんだっ、このままでは日が暮れる!」
「まだ午前中だっつーの」

          ◆

「主、思い出し笑いか?」
「え? あぁいや、何でもねぇよ」
  つい、去年の海のことを思い出してしまった。
  しかしあのときの珊瑚の顔……確か、出会って初めて見せた照れ顔だったっけ、あれが。
  それからずいぶんとまぁ、照れさせる機会があったなぁ。頭撫でたり等々。
「……思い出に浸っているな、主」
「でも楽しそうー。天河石も楽しい思い出いっぱいだよっ」
「……それは、まぁ、某も……」
  今年の海も、楽しめそうな気がする。
  ……サンオイル、新しいの用意しておくか。

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