宝石乙女まとめwiki

妙な夢を見た

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匿名ユーザー

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  さて、朝だ。
  なんだか知らないけど、すでに朝食が用意してあってラッキーだ。殺生石が用意してくれたのだろうか。
  着替えも済んだし大学も休み。久々にのんびりとした朝食と洒落込もうかな、
なんて。
  それにしても、誰もいない。
  窓から日光が差し込む居間。テレビの音だけが、部屋を包む。
  いつもならみんなの賑やかな声が聞こえる時間帯なのに……出かけてるのかな。
  ……っと、余裕があるといっても、ぼんやりしている暇はない。早く食べよう。
「いただきます」
  習慣として身に付いてしまった一言。誰もいなくてもついつい言ってしまう。
  で、おかずを一口……あれ、殺生石の味付けじゃないな、これ。
  じゃあ蛋白石が練習で作ったのか……それにしては上手すぎる。言っちゃ悪いけど。
  ということは……。
「マスター……おいし?」
  かなり驚いた。
  気配もなく、突然背後から呼びかけられる。
  でも声を聞いてすぐに安心する。これは電気石の声だ。
「もー、驚かさないでよぉ。でも美味しいよ」
「……えへへ」
  背後にいる電気石の声、どこか照れくさそうだ。
  それにしても、電気石が作ったんだ……。
「黒曜石ちゃんにでも教えてもらったのかな、ずいぶんと上……ず……」
  電気石を褒めてあげようと振り返る。
  ……いつもなら座った僕と同じ目線にあるはずの電気石の顔が、ない。
  代わりに、膝下ほどの長さがある桜色のスカートと、そこから覗く白い脚。ずいぶんと綺麗な……。
「マスター?」
  僕の『頭上から』声が聞こえる。
  そういえばさっきの声も……首を上げてみる。
  まず、白いエプロンが目に入る。フリルの付いた、可愛いデザインだ。
  腹部辺りには懐中時計型電源メーターの鎖。
  胸……蛋白石に迫るぐらい大きい。
  そして……顔は……。
「……どちらさま?」
「ん……電気石。忘れちゃ……めー」
  僕の背後に立っていた彼女が、そう呟く。
  えっと、僕の知っている電気石は小さな子供のハズなんだけどなぁ。あっはっはー。
「……おねぼけ?」
  でも僕の目の前にいるのは、僕と同い年と言っても過言じゃない女性だ。
  スタイルも良いし……そういえば、どことなく蛋白石に似ている。
  でも確かに髪型は電気石のそれ。あの特徴的な癖毛だ。
「んー?」
「……あ、あぁ、あはは……もしかして、蛋白石がコスプレしてる?」
  首を横に振る女性。
「……えと、じゃあ蛋白石は? 殺生石も見あたらないけど、二人ともどこに……」
「愛の巣って……姉様達、違うとこ……住んでる…………おねぼけ?」
「……つまり、えっと……二人暮らし?」
  首を縦に振る。
  まずい、頭が混乱してきた。
  もう何がなんだか……って、気付いたら隣に電気石を名乗る人が座る。
「マスター……」
  そう呟き、僕に寄り添う。
  えー、一体これは何が……。
「ご飯……あーん、する」
「え、いや自分で食べるから」
「めー」
  僕から優しく箸を取り上げ、近くのおかずを取る。
  それを僕の方に向けて……。
「あーん……」
「ま、待って。えー……その、何というか、電気石がご飯作ってくれたのは嬉しいけど、それ以上に分からない事がたくさん……」
  そんな僕の声を聞かず、箸はどんどん僕の口元へ。
  これはつまり、食べなきゃ話も聞いてくれないということなのかな。
  ……恥ずかしい、本当に。
「おいし?」
「う、うん……それで、その、えーっと」
「もう一回。あーん……」
  ……話が、前に進まない。

  気付けば、二人並んでひなたぼっこをしていたり。
  僕に寄りかかってくる電気石。肩に、彼女の顔が乗せられる。
「あったかい……」
「う、うん。暖かいね」
  今にも眠ってしまいそうな電気石の顔。でも僕は落ち着かない。
「……マスターと、出会えて……よかった」
  小さくつぶやく。
「あ、ありがと」
  すごく、照れくさい。
  電気石の顔がすごく綺麗で、目を合わせられないぐらいに。
  今まで照れることは数知れずあったけど、何というか……胸が燃え上がるような気分に。
  ……ゆっくりと、電気石の顔が近づいてくる。
  目をつむった彼女の顔。これはやはり……。
「んー……」
  分からないことだらけだ。
  だけど、一つだけはっきりしていること。
  僕は、彼女に……。

          ◆

「ご主人様ーっ、あっさですよー!!」
「うぐあっ!!」
  腹部に走る衝撃。
  あれ、僕はひなたぼっこ……え、布団?
「今日はお布団干すんですよねー。手伝いますよっ」
「え、何、へ? いや……うわあぁぁーっ!」

  朝から布団ごと振り回されるとは思っていなかった訳で……。
  しかし、さっきのは夢、か。
  そ、それもそうだよね。いきなり電気石が大きくなって、その……。
「主様、お顔が赤いですよ。風邪ですか?」
「えっ、あぁー……大丈夫大丈夫っ!」
  蛋白石も殺生石も、ちゃんと家にいる。
  当然電気石だってここに……。
「おはよ……」
  小さな子供の電気石。
  いつも通りの姿。
  いつも通りの可愛い顔。
  ……なぜか、直視出来なかった。
「んー?」
  僕の足下まで歩み寄り、こちらを見上げてくる。
  様子が変なのは認めるけど……駄目だ、目を合わせられない。
「マスター……?」
「主様、ちゃんと挨拶をしないと駄目ではないですか」
  ……妙な夢、見ちゃったなぁ。


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