さて、朝だ。
なんだか知らないけど、すでに朝食が用意してあってラッキーだ。殺生石が用意してくれたのだろうか。
着替えも済んだし大学も休み。久々にのんびりとした朝食と洒落込もうかな、
なんて。
それにしても、誰もいない。
窓から日光が差し込む居間。テレビの音だけが、部屋を包む。
いつもならみんなの賑やかな声が聞こえる時間帯なのに……出かけてるのかな。
……っと、余裕があるといっても、ぼんやりしている暇はない。早く食べよう。
「いただきます」
習慣として身に付いてしまった一言。誰もいなくてもついつい言ってしまう。
で、おかずを一口……あれ、殺生石の味付けじゃないな、これ。
じゃあ蛋白石が練習で作ったのか……それにしては上手すぎる。言っちゃ悪いけど。
ということは……。
「マスター……おいし?」
かなり驚いた。
気配もなく、突然背後から呼びかけられる。
でも声を聞いてすぐに安心する。これは電気石の声だ。
「もー、驚かさないでよぉ。でも美味しいよ」
「……えへへ」
背後にいる電気石の声、どこか照れくさそうだ。
それにしても、電気石が作ったんだ……。
「黒曜石ちゃんにでも教えてもらったのかな、ずいぶんと上……ず……」
電気石を褒めてあげようと振り返る。
……いつもなら座った僕と同じ目線にあるはずの電気石の顔が、ない。
代わりに、膝下ほどの長さがある桜色のスカートと、そこから覗く白い脚。ずいぶんと綺麗な……。
「マスター?」
僕の『頭上から』声が聞こえる。
そういえばさっきの声も……首を上げてみる。
まず、白いエプロンが目に入る。フリルの付いた、可愛いデザインだ。
腹部辺りには懐中時計型電源メーターの鎖。
胸……蛋白石に迫るぐらい大きい。
そして……顔は……。
「……どちらさま?」
「ん……電気石。忘れちゃ……めー」
僕の背後に立っていた彼女が、そう呟く。
えっと、僕の知っている電気石は小さな子供のハズなんだけどなぁ。あっはっはー。
「……おねぼけ?」
でも僕の目の前にいるのは、僕と同い年と言っても過言じゃない女性だ。
スタイルも良いし……そういえば、どことなく蛋白石に似ている。
でも確かに髪型は電気石のそれ。あの特徴的な癖毛だ。
「んー?」
「……あ、あぁ、あはは……もしかして、蛋白石がコスプレしてる?」
首を横に振る女性。
「……えと、じゃあ蛋白石は? 殺生石も見あたらないけど、二人ともどこに……」
「愛の巣って……姉様達、違うとこ……住んでる…………おねぼけ?」
「……つまり、えっと……二人暮らし?」
首を縦に振る。
まずい、頭が混乱してきた。
もう何がなんだか……って、気付いたら隣に電気石を名乗る人が座る。
「マスター……」
そう呟き、僕に寄り添う。
えー、一体これは何が……。
「ご飯……あーん、する」
「え、いや自分で食べるから」
「めー」
僕から優しく箸を取り上げ、近くのおかずを取る。
それを僕の方に向けて……。
「あーん……」
「ま、待って。えー……その、何というか、電気石がご飯作ってくれたのは嬉しいけど、それ以上に分からない事がたくさん……」
そんな僕の声を聞かず、箸はどんどん僕の口元へ。
これはつまり、食べなきゃ話も聞いてくれないということなのかな。
……恥ずかしい、本当に。
「おいし?」
「う、うん……それで、その、えーっと」
「もう一回。あーん……」
……話が、前に進まない。
なんだか知らないけど、すでに朝食が用意してあってラッキーだ。殺生石が用意してくれたのだろうか。
着替えも済んだし大学も休み。久々にのんびりとした朝食と洒落込もうかな、
なんて。
それにしても、誰もいない。
窓から日光が差し込む居間。テレビの音だけが、部屋を包む。
いつもならみんなの賑やかな声が聞こえる時間帯なのに……出かけてるのかな。
……っと、余裕があるといっても、ぼんやりしている暇はない。早く食べよう。
「いただきます」
習慣として身に付いてしまった一言。誰もいなくてもついつい言ってしまう。
で、おかずを一口……あれ、殺生石の味付けじゃないな、これ。
じゃあ蛋白石が練習で作ったのか……それにしては上手すぎる。言っちゃ悪いけど。
ということは……。
「マスター……おいし?」
かなり驚いた。
気配もなく、突然背後から呼びかけられる。
でも声を聞いてすぐに安心する。これは電気石の声だ。
「もー、驚かさないでよぉ。でも美味しいよ」
「……えへへ」
背後にいる電気石の声、どこか照れくさそうだ。
それにしても、電気石が作ったんだ……。
「黒曜石ちゃんにでも教えてもらったのかな、ずいぶんと上……ず……」
電気石を褒めてあげようと振り返る。
……いつもなら座った僕と同じ目線にあるはずの電気石の顔が、ない。
代わりに、膝下ほどの長さがある桜色のスカートと、そこから覗く白い脚。ずいぶんと綺麗な……。
「マスター?」
僕の『頭上から』声が聞こえる。
そういえばさっきの声も……首を上げてみる。
まず、白いエプロンが目に入る。フリルの付いた、可愛いデザインだ。
腹部辺りには懐中時計型電源メーターの鎖。
胸……蛋白石に迫るぐらい大きい。
そして……顔は……。
「……どちらさま?」
「ん……電気石。忘れちゃ……めー」
僕の背後に立っていた彼女が、そう呟く。
えっと、僕の知っている電気石は小さな子供のハズなんだけどなぁ。あっはっはー。
「……おねぼけ?」
でも僕の目の前にいるのは、僕と同い年と言っても過言じゃない女性だ。
スタイルも良いし……そういえば、どことなく蛋白石に似ている。
でも確かに髪型は電気石のそれ。あの特徴的な癖毛だ。
「んー?」
「……あ、あぁ、あはは……もしかして、蛋白石がコスプレしてる?」
首を横に振る女性。
「……えと、じゃあ蛋白石は? 殺生石も見あたらないけど、二人ともどこに……」
「愛の巣って……姉様達、違うとこ……住んでる…………おねぼけ?」
「……つまり、えっと……二人暮らし?」
首を縦に振る。
まずい、頭が混乱してきた。
もう何がなんだか……って、気付いたら隣に電気石を名乗る人が座る。
「マスター……」
そう呟き、僕に寄り添う。
えー、一体これは何が……。
「ご飯……あーん、する」
「え、いや自分で食べるから」
「めー」
僕から優しく箸を取り上げ、近くのおかずを取る。
それを僕の方に向けて……。
「あーん……」
「ま、待って。えー……その、何というか、電気石がご飯作ってくれたのは嬉しいけど、それ以上に分からない事がたくさん……」
そんな僕の声を聞かず、箸はどんどん僕の口元へ。
これはつまり、食べなきゃ話も聞いてくれないということなのかな。
……恥ずかしい、本当に。
「おいし?」
「う、うん……それで、その、えーっと」
「もう一回。あーん……」
……話が、前に進まない。
気付けば、二人並んでひなたぼっこをしていたり。
僕に寄りかかってくる電気石。肩に、彼女の顔が乗せられる。
「あったかい……」
「う、うん。暖かいね」
今にも眠ってしまいそうな電気石の顔。でも僕は落ち着かない。
「……マスターと、出会えて……よかった」
小さくつぶやく。
「あ、ありがと」
すごく、照れくさい。
電気石の顔がすごく綺麗で、目を合わせられないぐらいに。
今まで照れることは数知れずあったけど、何というか……胸が燃え上がるような気分に。
……ゆっくりと、電気石の顔が近づいてくる。
目をつむった彼女の顔。これはやはり……。
「んー……」
分からないことだらけだ。
だけど、一つだけはっきりしていること。
僕は、彼女に……。
僕に寄りかかってくる電気石。肩に、彼女の顔が乗せられる。
「あったかい……」
「う、うん。暖かいね」
今にも眠ってしまいそうな電気石の顔。でも僕は落ち着かない。
「……マスターと、出会えて……よかった」
小さくつぶやく。
「あ、ありがと」
すごく、照れくさい。
電気石の顔がすごく綺麗で、目を合わせられないぐらいに。
今まで照れることは数知れずあったけど、何というか……胸が燃え上がるような気分に。
……ゆっくりと、電気石の顔が近づいてくる。
目をつむった彼女の顔。これはやはり……。
「んー……」
分からないことだらけだ。
だけど、一つだけはっきりしていること。
僕は、彼女に……。
◆
「ご主人様ーっ、あっさですよー!!」
「うぐあっ!!」
腹部に走る衝撃。
あれ、僕はひなたぼっこ……え、布団?
「今日はお布団干すんですよねー。手伝いますよっ」
「え、何、へ? いや……うわあぁぁーっ!」
「うぐあっ!!」
腹部に走る衝撃。
あれ、僕はひなたぼっこ……え、布団?
「今日はお布団干すんですよねー。手伝いますよっ」
「え、何、へ? いや……うわあぁぁーっ!」
朝から布団ごと振り回されるとは思っていなかった訳で……。
しかし、さっきのは夢、か。
そ、それもそうだよね。いきなり電気石が大きくなって、その……。
「主様、お顔が赤いですよ。風邪ですか?」
「えっ、あぁー……大丈夫大丈夫っ!」
蛋白石も殺生石も、ちゃんと家にいる。
当然電気石だってここに……。
「おはよ……」
小さな子供の電気石。
いつも通りの姿。
いつも通りの可愛い顔。
……なぜか、直視出来なかった。
「んー?」
僕の足下まで歩み寄り、こちらを見上げてくる。
様子が変なのは認めるけど……駄目だ、目を合わせられない。
「マスター……?」
「主様、ちゃんと挨拶をしないと駄目ではないですか」
……妙な夢、見ちゃったなぁ。
しかし、さっきのは夢、か。
そ、それもそうだよね。いきなり電気石が大きくなって、その……。
「主様、お顔が赤いですよ。風邪ですか?」
「えっ、あぁー……大丈夫大丈夫っ!」
蛋白石も殺生石も、ちゃんと家にいる。
当然電気石だってここに……。
「おはよ……」
小さな子供の電気石。
いつも通りの姿。
いつも通りの可愛い顔。
……なぜか、直視出来なかった。
「んー?」
僕の足下まで歩み寄り、こちらを見上げてくる。
様子が変なのは認めるけど……駄目だ、目を合わせられない。
「マスター……?」
「主様、ちゃんと挨拶をしないと駄目ではないですか」
……妙な夢、見ちゃったなぁ。