宝石乙女まとめwiki

飯は一人じゃつまらない

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匿名ユーザー

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だれでも歓迎! 編集
「マスター、野菜炒めに油使いすぎですよ」
  漬物石は最近、栄養やカロリーといったことにうるさい。何があったかは……まあ少しは見当がつくし、嫌ではないのだが、それが度を過ぎるとちょっと……。
「野菜は生の方が栄養をたくさん摂れますよ」
「そ、そうだね……でも俺は火を通したのが好きだから。あと漬物」
「え、そ、そうですか……えへへ」
  とはいえ、相変わらず見た目は可愛らしいちっちゃな女の子なんだけどね。

  その日、いろいろ立て込んでいた俺は完全徹夜コースを一直線で進んでいた。時刻は午前0時。俺は思う。人は何でこんな中途半端な時間に腹を空かすのだろうか。人間って眠らない生き物だったら1日4食になってるに違いない。
  だが人はこういう時のためのうまい言葉を作ってある。夜食だ。ひとまず作業を中断し、台所へと向かう。
  夜食といえばお茶漬け、永○園にはよくお世話になっている。お湯を沸かしてお気に入りの鮭茶漬けの素を用意。そして小さめの丼と冷蔵庫からチューブのワサビを。少しだけ入れると美味いんだ。
「マスター?」
「う……」
  漬物石……どうして起きてるのかなぁ。
「どうして台所に……あ、お茶漬け食べようとしてますね?」
「あ、あはは。今日は見逃してよ、ね?」
「ダメですよ。夜食を摂ると太りやすいんですよ? 寝て空腹を紛らわせた方がいいです。さぁ」
  俺の手を取って、寝室へ連れて行こうとする漬物石。まぁ、この子の腕力で俺を動かすのは不可能だけど……頑張ってる漬物石、可愛いなぁ。
「あー……どうしても今日中に仕上げないといけない仕事があるんだよ」
「え、持ち帰りの仕事ですか?」
「うん、最近忙しくてね。その分給料よくなるだけ、うちの職場は他よりずっとマシなんだよ」
  そこまで話したところで、漬物石の顔に影が差す。どこか申し訳なさそうな……って、俺また余計なこと話したのかっ。
「ごめんなさい……そうですよね、今まで一人暮らしだったのに食い扶持が増えてしまったんですから、忙しくなって当然ですよね。それでもいつも通りの時間に帰ってきてくれるマスターは優しいですけど、私のせいでマスターは寝る時間を削って持ち帰りの仕事。それなのに私は何もせずに……あぁ、ごめんなさい。気を遣っていただいていたのに私は何もできなくて。こうなったら私も内職で……」
「あー、とりあえずそこまでーっ。今回忙しいのはたまたまだし、別に漬物石来てからも生活苦しくなってないから気にしなくていいの」
「そうですか? でも私……」
「それにうちの家事ほとんどやってくれるんだから、充分過ぎるほど漬物石は頼りになってるよ。だからそんな顔しないで。あと謝らない」
「は、はい。ごめ……ありがとうございます」
  なんとか漬物石の笑顔を取り戻すのに成功。少し苦労するけど、相変わらず面白いなぁ。
「ということだから、今日だけは見逃してよ。ね?」
「ん、それとこれとは……むぅ、分かりました。その代わり私もご一緒します」
「太るんじゃないの?」
「女性にそういうことを言っちゃダメですよ。それに私、太りませんから」
  それもそうだ。俺は声を出して笑う。
「それに、たとえ太ってもマスターと一緒に食事できるなら……」
「え、俺と何だって?」
「……何でもありません。ふふふ」

「お茶漬けには梅干しですよぉ。ワサビは刺激が強すぎます」
「それでも止められないんだよ。ほら、漬物石も少し食べてみなって」
「むぅ……うっ、辛いぃ~」

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