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乙女たちの肝試し

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匿名ユーザー

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鶏冠石編


  深夜一時半――俺たちはここに集められた。
「は~い! 第一回宝石乙女肝試し選手権を始めま~す!!」
  置石ちゃんの元気な声に眠気も吹っ飛ぶ。ていうかどこだこの山ん中は。
「この山の奥の寺に潜むおばけをやっつけた人の勝ちです!」
「前提からおばけを倒すなんて……メチャクチャですわ」
  呆れ顔の鶏冠石はとてもやりたくなさそうな顔をしていた。
「はは、置石ちゃんらしいじゃん。珊瑚さんも気合い入りまくりだし」
  ここに宝石乙女一同とそのマスターたちが集結した。しかし始まるのはただの肝試しである。
「要するに寺にある何かを持ってくればいいんだろ? 楽勝だよ」
「そ、そうですわね」
  こうして、第一回宝石乙女肝試し選手権は始まった。
「それじゃ鶏冠石チームスタートー! オバケに食べられないでくださいね」
  にこやかにスタートを告げられた。先行集団の悲鳴から察するに、置石ちゃんと虎眼石ちゃんのトラップの方が怖い気がする。
「さ、いくぞ鶏冠石」
「は、はい」
  支給された装備がしっかりしてるから、案外楽に行けそうだ。
「ライトは鶏冠石にまかせるから」
  俺はヘッドライトだけを身に着ける。すご、かなり明るいぞ……。
  しばらく進むと寺に続くと思われる道を発見。ここからが罠の本領発揮だろう……だから俺たちペアはあえて茂みを行く!
「鶏冠石、たぶん置石ちゃんとかの罠があるからこっちからいこう」
「……」
  目をギュッと瞑ってしっかり俺の服を握っている。さっきまではまだ強がったり悲鳴をあげたりしてたんだが……どうやら真剣に怖いらしい。それはもう可愛らしいほどに。
「じゃ行くぞ」
  ビクビクしてる鶏冠石は可愛いけど、もうすでに可哀想のレベルに達している。早くクリアしてやらなきゃみんなの前で泣崩れちゃったりして……見てみたいけど……。

  長い階段を横目に茂みを登っていく。まだ作動してない罠がいくつかあった。おそらくまだ誰も通ってない……ことを願いたい。
  登りにくい茂みに体力を倍以上奪われながらも境内に着いた。鶏冠石を半ば引っ張る形で登ってきたので足が棒になりそうだ……。
「鶏冠石、俺本堂までいって探してくるけどどうする……って」
  首をブンブン振って一層強く服を握ってくる。
「じゃぁ……いくぞ?」
  そのまま鶏冠石を引っ張って本堂に近づく。
「でかいな……」
  どうやって探せばいいんだこれは……とりあえずグルッと一周してみるか。
  二度めの角を曲がる。ちょうど本堂の裏にあたる位置――なんかがいた。身の丈二メートルはありそうな単眼有角の赤黒い……そう、おばけが。
  手に棍棒を持っている。ヤバい。鶏冠石がいる。とてもじゃないけど逃げられない。鶏冠石の前に、彼女を庇うように立つ。手には支給装備の中にあったサバイバルナイフ。ってこんなもん入れてたのかよ……助かったけど……。
  “おばけ”が近づいてくる。やるしかない! ……って、あれ? “おばけ”は武器を捨て手を挙げながら泣きそうになっていた。

  鶏冠石に気をつけながら近づいてみる。
「あ、あの……あなたおばけですか?」
「ひぃっ!? 違うんです!! 殺生石さんに頼まれて化けてたんです! 勘弁してください!!」
  何怯えきってるのこのおばけは……。
「あの~……別に何もしませんよ?」
「へ? ……ホントに?」
「はい。てか仮にも変化できるような、え~と」
「あ、自分狐ッス」
「あぁ、ご丁寧にどうも。変化できる狐さんがそんな人間にビビることもないでしょう?」
「さっき……斧のような物で切りかかってくる方がいまして……」
  珊瑚さんたちか……もう着いてたんだな……。
「もう自分負けでいいんでスルーしてくれませんかね?」
「あの、倒した証とかあります?」
「あぁはいはい。このカードですね。さっきの女の方には渡しそびれちゃいましたよ」
  やっぱりあったか。
「ありがとうごさいます」
  もしかしてラッキーかも。おそらく珊瑚さんたちは文字通りおばけを倒してそのまま帰っちゃったんだな。
「よし。鶏冠石、もう帰れるぞ」
  コクコクと頷いている。これは急いだ方がいいな。
「鶏冠石。おぶってってやるよ。ほら」
  嫌がると思ったけどすんなりおぶさってくる。
「んじゃいくか」
  山道を鶏冠石をおぶって降りる。鶏冠石の身体は鳥のように暖かく羽毛のように軽かった。


化石編


化「マスタ、怖いの平気?」
マ「また随分と唐突だね。割と大丈夫な方だけど、いきなりどうしたんだ」
化「えと、うんと、その……これ」
  ピラリ。
マ「え~と、『第一回宝石乙女肝試し選手権、あなたとマスターの絆が試される!』 ……えーっと?」
化「や、マスタとの絆は致命傷より深いって分かってるやねんけど……夏の間、どこにも行けなかったしやん?」
マ「致命傷よりって……まぁそうだな、行ってみるか『肝試し』」
化「えいえい」
マ「おー」

置「は~い! 第一回宝石乙女肝試し選手権を始めま~す!!」
マ「結構本格的なんだな、まさか山の中でやるとは」
化「でも山菜とりによくくる山やねんし、問題ないんとちゃうんとちゃうんとちゃうんとちゃう?」
マ「怖いなら素直にそう言いなさい、言葉遣いが何時にも増しておかしくなってるぞ」
置「この山の奥の寺に潜むおばけをやっつけた人の勝ちです!」
マ「んじゃ、元気を出していってみよー」
化「お、おー」
マ「……ちびるなよ?」
化「レイディに何言うやねん! マスタのあほぉ!」

 てくてくてくてく。
化「なぁ、マスタマスタ……」
マ「生まれたての小鹿みたいに震えてどうしましたね化石さん」
化「マスタのあほぉ……怖いもんは怖いやねん……」
マ「んじゃ手ぇ繋ぐぞ、ほれ、右手出せ」
化「ん……」
  てくてくてくてく。
マ「……! 止まれ、化石……!」
化「うへ? 何、どしたなん!?」
マ「……」
  ガサガサガサッ!
化「へひゃあ!?」
マ「化石、追うぞ! ツチノコだ!!」
化「あ、え、ツチ……?」
マ「生け捕りで三億円だ! 腑抜けてないで足動かせ!!」
化「お、ぉぉ……おらっしゃあ!!」
  ダダダダダ!
マ「俺はあっちから回る! 挟み撃ちだ!!」
化「おっけー!」
  ダダダダダ!
マ「そっちいったぁ!」
化「とったああぁぁぁ!!」

マ「なんか、な……」
化「な……」
マ「……」
化「……」
マ「……どこだここ……」
化「ツチノコは兎飲んだただの蛇て……三億円が……」
マ「……しゃぁねぇな、歩いて帰るぞ」
化「おー……」
マ「まぁ何だ、こういうものも手に入ったし結果オーライじゃないか?」
 ポン。
化「ふにぇ? ……おぉぅ!? んなまま、ま、まち、まちちか!?」
マ「松茸だ」
化「松茸!!」
マ「家についたらこれで炊き込みごはん食おうな」
化「おー!!」


電気石編


  ピ~~~~ヒョロヒョロ……ヴィィ~~~~ン。
  FAXから一枚の紙が吐き出された。『第一回宝石乙女肝試し選手権、あなたとマスターの絆が試される!』っって書かれている。どうやらこのあたりに住む宝石乙女のところに送られているようだが……。
「……し……あなたとますたーの…が…される! ますたーよめたよ!」
  最近、電気石はひらがなを読めるようになった。
「お~、よく読めたねぇ~。肝試しだって。電気石も行ってみるかい? お友達のソーダちゃんや天河石ちゃん、雲母ちゃんたちも来るみたいだよ」
「うん、いく~」

「は~い! 第一回宝石乙女肝試し選手権を始めま~す!!」
  初めて会うマスターと挨拶したりしているうちに、置石ちゃんの司会で肝試しが始まった。置石ちゃんから渡された袋には懐中電灯・SSサイズの荒巻・苺大福・地球儀・糸電話・CD-Rが入っていた……ってどういう組み合わせなんだよ。役に立つのは懐中電灯ぐらいじゃん……まあしゃあねぇ、行くか……。
「ポリポリ」
「あ~~~~~~~乾電池食っちまった……」

  そろそろ暗くなって道がわかんなくなってきたぞ、どうしよう?
「ほら、電気石おんぶしてやるからのりな」
「は~い」
  背中でゴソゴソやってるな。
「静かにして」
「くらいのいや~う~ん、えい!」
  突如として真昼間のような明るさになりやがった。ボンッと周囲で煙が立ち上がると狐が数匹逃げていったが、とりあえず明るくなった道を無事ゴールにたどりつくことができた。
「電気石ちゃんチームもはやゴールですね、途中で狐さんからカードはもらいましたか?」
  置石ちゃんにそう言われたが、なにも……あ、さっきの狐か……しまった……。
「ますたーがおんまさんだ!」
  今日も電気石は無邪気なままでした。

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