宝石乙女まとめwiki

パパになるのも悪くない

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匿名ユーザー

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主「はぁ~……」
  一人暮らしの頃は、家でこうしてぼんやりするのは至福の時だった。でも今は……。
蛋「ご主人様ーっ、一緒におやつ食べましょうよぉー」
電「んにぃ~……」
殺「主様、お茶を」
  ……こんな調子なんです、はい。ちなみに電気石は充電中です。ぼんやりする暇なんでないし、静かなひとときはほとんど残されてない日常。でもそれなのに、楽しかったり生きてる実感を感じたり……不思議なものだよねぇ。
  ふと、3人の方に顔を向ける。アップルパイ片手にこちらへ笑顔を向ける蛋白石。相変わらず顔を真っ赤にして三輪車のペダルを踏む電気石。そしてちっちゃな女の子を抱っこしながらあやしている殺生石……んっ!?
主「一人多いよっ……って、なんだソーダちゃんかぁ」
ソ「パパー♪」
殺「ふふ、呼ばれてますよ?」
主「だからそれはやめてってばぁ……」
  この前遊びに来たときに、殺生石が余計なことをこの子に吹き込んでしまった。それ以来僕はパパ確定らしい。ご主人様も恥ずかしい呼ばれ方だがパパはそれを軽く上回る。
蛋「えーっ! ご主人様はソーダちゃんのお父さんだったんですか!?」
電「……ぱぱ?」
主「い、いや、だから違うってばぁ」
ソ「……パパじゃ、ないの……ぐすっ」
  え……泣くの? そこで泣くの!? って、殺生石が睨んでるよぉ……。
殺「主様、いくら嫌でも泣かせるのはよろしくないかと」
主「違うよっ、嫌じゃなくて恥ずかしいだけで……あーもぉ、分かったから!」

  黒曜石ちゃんに聞いていたソーダちゃんを泣きやませる方法(ソーダあげるだけなんだけど)を実践し、何とか泣きやませた僕。で、今はみんなで3時のおやつ。可愛い泣き虫さんは僕の膝の上でじゃれています。殺生石の微笑みがすごく恥ずかしい……。
ソ「パパ、あーん」
主「あ、あーん……」
  フォークに刺した小さなアップルパイを僕の口に入れる。アップルパイは好きだけど、その時口に入れたそれの味は覚えてません、恥ずかしさが頭の中を巡っているので。
ソ「おいしぃ?」
主「はい……美味しいです」
ソ「じゃあもーいっかい。あーん」
  これはどういう罰ゲームなんだろう。
主「あ、ありがと……ところでソーダちゃん、今日はどうしてうちに来たの?」
ソ「パパのとこ来たかったからー」
主「さよですか……」
  ねぇ、なんでさっきから誰も話しかけてくれないの? こっちを微笑ましく見てるだけって、いじめですか?
電「ぱぱ?」
主「電気石、それはもういいから」
電「んー……」
ソ「パパー、遊んで?」
  ……来ると思ったよ。大丈夫、覚悟はできてた。
主「はは……いいよ、何する?」
ソ「電ちゃんのにのりたーい」
  乗りたいって……電気石の充電用三輪車?
主「だって。どうする、電気石?」
電「んー……電ちゃん?」
  いや、そこじゃなくてね……。
主「……ソーダちゃんが、電気石の三輪車に乗りたいって」
電「……うん」
  頷く電気石。どうやらOKのようだ、自信ないけど。しかしあれは電気石の生活必需品。というか何かあったら死活問題になる品だ。それを壊すかも分からない小さな女の子に……電気石って太っ腹なのかも。
ソ「ありがとー、電ちゃん」
電「電ちゃん?」
主「はいはい。それじゃあ、家の中だとアレだし外に行こうか」
  電気石も来るかと思えば、家の中で待っていると言う。結局僕はソーダちゃんと二人で遊ぶこととなった。
殺「穏やかですね」
主「そう言って傍観する暇があるなら少しは手伝ってよ……」
  殺生石は見物を決め込んでいる始末。
ソ「パパー、おしておしてー」
主「はいはい」
  まぁ、文句を言ってても仕方がない。三輪車にまたがり、ハンドルをしっかりと握っているソーダちゃん。その背中を軽く押してあげる。一体何が楽しいのかは分からないけど、どうやらそれが楽しいらしい。さっきからにこにこ笑っている。
  しかし、なんだか間が持たなくなってきたな……何か適当な話題でも振ってみよう。
主「ねぇソーダちゃん、ソーダちゃんたちのお父さんって、どんな人なの?」
ソ「? パパはパパだよ?」
主「そうじゃなくて……ソーダちゃんたちを作った人のことだよ」
ソ「よく、分かんないよ?」
主「ははは……じゃあ、みんなのお父さんってどんな人?」
  こう聞いた方がいいのかな……。
ソ「んぅ~……みんなのパパ?」
主「うん」
ソ「……わかんない。おぼえてないの」
  覚えてない、か。じゃあ、この子たちを作った人は、すぐに僕たちの元へこの子たちを送っているのかな。でもそれってどういう目的があるんだろう……。
主「ソーダちゃんは、どうして僕たちのところに来たの?」
ソ「呼ばれたからー」
主「ははは……」
  やっぱりこの子にこういうこと聞くのは間違いだったかな。
ソ「でもねー、ほーせきおとめはほーせきのなまえがつけられるから、それにまけないきれーなおんなのひとになりなさいって」
主「ん、お父さんが言ってたの?」
ソ「パパはパパだよー。でも、覚えてない方のパパがいってた……とおもう」
  宝石の名前に負けない、綺麗な乙女になれ……か。なんか宝石じゃない名前の子もいるけど、要は成長のためにこの世界に来た……ってことなのかな。
ソ「パパー? おしてー」
主「ん……あぁ、ごめんね」

主「すっかり遊び疲れちゃったかぁ」
殺「小さな子は、体力の続限り遊びますからね」
  僕の背中には、完全に夢の中に向かってしまったソーダちゃんがいる。あれから鬼ごっこ、かくれんぼなどなどをしているうちに、こうして眠ってしまった次第だ。
殺「この子の家へ送っていくのですか?」
主「うん、場所は知ってるから」
殺「そうですか、それでは気をつけて。夕飯はわたくしたちで用意しております」
主「ありがと。それじゃ行ってきます」
  殺生石の見送りを受け、この子のマスターの元へと向かう。
  ……背中に伝わる温もりは人と同じ。だけど、重さは人より軽いと思う。一人暮らしでは、感じることのなかった感触だった。
主「宝石乙女……か」
  ――宝石の名前に負けない、輝くような美しい乙女に育って欲しい。
  じゃあ、いつかそういう乙女になったとき、蛋白石達ともお別れするときが来るのかな……寂しいな、それは。
ソ「んぅ……パパ?」
主「ん、起きちゃった?」
  背中でソーダちゃんが動く感触。そのまま、僕の服を掴む。
ソ「おうちかえるの?」
主「うん。ソーダちゃんのマスターも待ってるよ」
ソ「んぅ……もっとパパといっしょがいい」
主「はは……ソーダちゃんは、みんなのお父さんのことは好き?」
  何故だろう、唐突にそんな質問を投げかけてしまう。きっとちゃんと答えられないのは分かっているのに……安心したかったのかな。自分の寂しさを紛らわすために。
ソ「……パパのほうがいい」
  そう、こう言ってもらいたかったから。そうすれば、いつか来る別れの寂しさも少しは紛らわすことができるから。
主「ありがとう。でも、本当のお父さんがなんか可愛そうだね」
  こんな小さな子に安心させてもらうなんて、僕はとんだ臆病者だよ、まったく。
ソ「えへへ、パパー♪」
  ……そう、僕は臆病者だ。だから彼女たちに傍にいてもらいたい。今はそう思う。だから……僕はこの子のパパになってもいいかな。
  心から、そう思った。

殺「すっかりパパが板についてきましたね、だんな様」
主「は、恥ずかしい事言わないでよっ!!」
殺「ふふふ……では、わたくしはママになるためにだんな様と契りを」
主「え、ちょっ! ストップ、ストーップ!!」

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