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彼女が学ぶ理由(わけ)

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匿名ユーザー

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珊「主、この図書館という場所に連れて行って頂きたいのだが」
  そんな話から始まった休日。珊瑚の奴、いきなり図書館ってどういうことだろうか。
  まぁ、俺も暇だしたまには付き合ってやってもいいという事で、こうして地元の図書館に来ている訳だ。
主「で、珊瑚は何について勉強したいんだー?」
珊「少々現代の知識に乏しい。だからその知識の補完をしたいのだ」
主「なるほど……じゃあ俺も少し手伝ってやるよ」
珊「かたじけない」
  …………
  とはいったものの、何をどう手伝うべきか……。
  まぁ、適当に回ってみて珊瑚の気になった事を教えてやるってのが一番いいのかも知れないな。
珊「主、この嫌韓流というのはどういうものなのだ? テレビで韓流というのは聞いた事あるのだが」
主「……お前も天河石みたいなところに興味を持つんだな」
  というか、何でいちいち俺の行く先にこの本あるんだよ。
  ……まさか次はデ○ノなんてオチはねぇよな?
珊「ふむ、では後で天河石に聞いてみよう。まさか彼女と同じ物に興味を示す事になるとはな」
  何故か微笑む珊瑚。ソコ喜ぶところなのかなぁ……というか何も話してないから知らないだろ。
珊「ん……主、この書籍は?」
主「何だ……って、期待を裏切らずデ○ノかよ! 家にあるっつーに!!」
珊「しーっ」
  ……図書館では静かにってか? でもこんな作られたような事態じゃツッコミ入れないとやってられねぇじゃん!!
主「大体なんで図書館にこんなモンが……おっ」
  俺の目についたのは日本の常識100とかいうタイトルの本。現代の知識が必要ならこういう本がいいじゃないか。
主「珊瑚、これなんてどうよ?」
  その本を棚から取り出し、珊瑚に手渡す。
  珊瑚は表紙を軽く眺めた後、本の内容を流し読みしていく。
珊「ふむ……知っている事が多いな。別の書籍はないか?」
主「別のねぇ……じゃあ、知って得する日本の常識」
珊「……ダメだ、大体知っている事ばかりだ」
主「ふーん。じゃあ常識については問題ないってことか」
珊「そうだな。すまない、的の外れた事をさせてしまって……そうだ、現代の風俗に関する書籍はないか?」
主「フーゾク……あぁ、風俗ね」
  間違った方向のを想像してしまったじゃないか、紛らわしい。
  とりあえず日本の文化や風俗に関する本を探してみる……うわ、いっぱいあるな。
主「たくさんあるが……具体的にはどれがいい?」
珊「ふむ、では主の興味がある物で頼む」
主「俺の? 別にいいけど……」
  知りたい事があるのに俺の趣味でいいって、一体どーいうことだ?
  まぁ、別に断る事も問い詰める必要もないだろう。俺は自分の趣味に関する本を何冊か手に取った。
  …………
  結局閉館時間まで俺の趣味に関する本を読み続けた珊瑚。一冊を読むスピードはかなり速いので、相当量の知識を詰め込んだんだろうな。
主「しかし俺の趣味の事ばっかりだったけど、もしかして感化された?」
  夕暮れの帰路。会話も途切れたところで、自然とそんな事を尋ねていた。
珊「いや、そうではない……某(それがし)は主と会話を合わせる事が出来ない。現代の知識がないからな」
主「会話が合わせられない? だって、さっきだって普通に会話してたぞ」
珊「いや、黒曜石達のような自然な会話が、某には出来ないのでな。分からない事が多すぎる」
  分からない事が……ねぇ。
主「でも珊瑚だって、俺の知らない事色々知ってるじゃん」
珊「それは主と某の人生経験の差という奴だ。知識の世代が違っては会話も成り立たない」
主「ふーん……まぁ、珊瑚と話しててつまらないとか思った事、全然無いけどな」
珊「ん……そう、か」
  どこか歯切れの悪い返事。どうしたのかと珊瑚の顔に目を合わせる。
  ……顔が赤い。夕日とは別の理由で。
  こういう顔をされてしまうと、なんだか俺まで照れてしまう、恥ずかしい事言ったみたいで。
珊「……主、今日は某の用事に付き合ってくれて、感謝している」
主「あ、あぁ。いいってことさ、俺も楽しかったし」
珊「そう言ってもらえるとありがたい。では今日は某が主の背中を流してしんぜよう」
主「またへちまか? じゃあお願いしようかな」
  ……ほら、やっぱり珊瑚との会話は全然退屈じゃない。

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