どんなに日頃気をつけていようとも、メガネのレンズというのは何かしらの理由で汚れてしまう。
そう言うときは当然レンズを拭く訳だし、それはペリドットだって例外ではなかった。
「んー……」
メガネ拭き専用の布を使って、黙々とレンズを拭くペリドット。
行動だけ見れば、何ということない日常の光景だ。
だがしかし……。
「なぁペリドット、こっち向いて」
「あ、はい。何でしょうか」
メガネをかけず、こちらの方に顔を向けるペリドット。
その目つきは、すごく悪い。限界まで目を細め、必死に焦点を合わせようとしている。
こちらをしっかり見ようとしてくれるのはありがたいのだが、まぁなんと言うか、その……。
「……っ」
「あのぉ、どうしました?」
「い、いや、何でも……くくっ」
その顔が、見ていて何となく笑ってしまう。
穏やかでありながら凛とした空気のあるあの雰囲気が皆無で、
代わりにどこかへなちょこなオーラが漂っているその姿。
その上、俺の様子が確認できなくて困っているのであろう。首をかしげながら、困り果てた表情を見せている。
失礼なのは分かるけれど、普段とのギャップがあまりにも……。
「マスター?」
「って、顔近いって!」
いつの間にか、目を細めたペリドットの顔が目と鼻の先に。
まつ毛の一本一本も区別できるほどの距離。鼓動が急速に早くなるのを感じる。
そして、見やすくなったのか先ほどよりも目を開いた顔。はかなさを漂わせるその表情を、
俺は正視することが出来なかった。
「これぐらい近寄らないと、よく見えなくて。どうかなさいました?」
「どうもしない、どうもしないって。と言うか見えないならメガネかければいいだろっ」
「あ、それもそうでしたね」
まるで今気付いたと言わんばかりに顔を離し、メガネをかけてから改めてこちらに顔を向けてくる。
いつも通りのペリドットの顔。見慣れているはずのその顔も、先ほどの表情とだぶって目をそらしてしまう。
何というか、今にもキスされそうな……あぁ、俺は何を考えてるんだ。
「それで、結局どんな用だったんですか?」
「だ、だから何でもないって。呼んでみただけだ」
「そうでしたか」
俺の反応に納得したのか、微笑みを返してくるペリドット。
だが、先ほどより小さな声で一言……。
「おかしいからって、人の顔を笑うのは失礼ですよ。見えてなくても分かるんですから」
笑顔のまま、どこか不機嫌そうに呟く。
見えてなくても、か。もしかして顔を近づけたのは、それに対する抗議のつもりだったのかも知れない。
そう言うときは当然レンズを拭く訳だし、それはペリドットだって例外ではなかった。
「んー……」
メガネ拭き専用の布を使って、黙々とレンズを拭くペリドット。
行動だけ見れば、何ということない日常の光景だ。
だがしかし……。
「なぁペリドット、こっち向いて」
「あ、はい。何でしょうか」
メガネをかけず、こちらの方に顔を向けるペリドット。
その目つきは、すごく悪い。限界まで目を細め、必死に焦点を合わせようとしている。
こちらをしっかり見ようとしてくれるのはありがたいのだが、まぁなんと言うか、その……。
「……っ」
「あのぉ、どうしました?」
「い、いや、何でも……くくっ」
その顔が、見ていて何となく笑ってしまう。
穏やかでありながら凛とした空気のあるあの雰囲気が皆無で、
代わりにどこかへなちょこなオーラが漂っているその姿。
その上、俺の様子が確認できなくて困っているのであろう。首をかしげながら、困り果てた表情を見せている。
失礼なのは分かるけれど、普段とのギャップがあまりにも……。
「マスター?」
「って、顔近いって!」
いつの間にか、目を細めたペリドットの顔が目と鼻の先に。
まつ毛の一本一本も区別できるほどの距離。鼓動が急速に早くなるのを感じる。
そして、見やすくなったのか先ほどよりも目を開いた顔。はかなさを漂わせるその表情を、
俺は正視することが出来なかった。
「これぐらい近寄らないと、よく見えなくて。どうかなさいました?」
「どうもしない、どうもしないって。と言うか見えないならメガネかければいいだろっ」
「あ、それもそうでしたね」
まるで今気付いたと言わんばかりに顔を離し、メガネをかけてから改めてこちらに顔を向けてくる。
いつも通りのペリドットの顔。見慣れているはずのその顔も、先ほどの表情とだぶって目をそらしてしまう。
何というか、今にもキスされそうな……あぁ、俺は何を考えてるんだ。
「それで、結局どんな用だったんですか?」
「だ、だから何でもないって。呼んでみただけだ」
「そうでしたか」
俺の反応に納得したのか、微笑みを返してくるペリドット。
だが、先ほどより小さな声で一言……。
「おかしいからって、人の顔を笑うのは失礼ですよ。見えてなくても分かるんですから」
笑顔のまま、どこか不機嫌そうに呟く。
見えてなくても、か。もしかして顔を近づけたのは、それに対する抗議のつもりだったのかも知れない。