帰宅して、ただいまって言って、靴を脱いで居間まで向かう。
そしたらいつも通りみんなが出迎えてくれるはずなのだが、今日まず最初に目に付いたのは、
二人の女の子の姿だった。
「……えーと」
一人は、困った表情を浮かべながらもう一人の頭を眺める天河石ちゃん。
そして、位置も束ね具合もばらばらの、いびつなツインテール姿の電気石の姿。
「うぅー……か、かわいいっ?」
「へ? え、いやその、何というか……」
相変わらず小動物のような瞳で視線を送る電気石。
首をかしげながら、まるで僕の感想を待っているかのような……正直、ノ
ーコメントを選びたいところだけど。
これをやったのは天河石ちゃんだろうか。いくつか努力した形跡は見られるけれど、
どれも上手く出来ているとは言いがたい。
「んー?」
「……な、直した方が良いと思う」
「似合わない? めー?」
「めーじゃないけど」
「あうぅ、うまく出来ない……」
なんだか、場の空気が悪くなってしまった。責任を感じ、二人から目をそらしてしまう。
「え、と……練習してたの?」
「うん。でもねー、お姉ちゃんやマスタぁーみたいに、上手くできないの」
意気消沈と言わんばかりに、天河石ちゃんが肩を落とす。
後ろで他の人がやっていたのを見よう見まねでやっていたとしたら、こうなってしまうのも仕方ない。
「それで、電気石は練習台になってあげたんだ」
「ん。お姉さん……えっへん」
少しだけ誇らしげな笑みを見せる電気石。でも頭がこれでは、あまりお姉さんらしさは感じられない。
「あうー……」
そして、相変わらず電気石の頭を見てはうつむくの繰り返しな天河石ちゃん。
このまま放っておく訳にはいかない、か。
「あー、えっと」
男である僕がこういう事言うのも、少し変な話だけど……。
「僕が、教えてあげようか?」
そしたらいつも通りみんなが出迎えてくれるはずなのだが、今日まず最初に目に付いたのは、
二人の女の子の姿だった。
「……えーと」
一人は、困った表情を浮かべながらもう一人の頭を眺める天河石ちゃん。
そして、位置も束ね具合もばらばらの、いびつなツインテール姿の電気石の姿。
「うぅー……か、かわいいっ?」
「へ? え、いやその、何というか……」
相変わらず小動物のような瞳で視線を送る電気石。
首をかしげながら、まるで僕の感想を待っているかのような……正直、ノ
ーコメントを選びたいところだけど。
これをやったのは天河石ちゃんだろうか。いくつか努力した形跡は見られるけれど、
どれも上手く出来ているとは言いがたい。
「んー?」
「……な、直した方が良いと思う」
「似合わない? めー?」
「めーじゃないけど」
「あうぅ、うまく出来ない……」
なんだか、場の空気が悪くなってしまった。責任を感じ、二人から目をそらしてしまう。
「え、と……練習してたの?」
「うん。でもねー、お姉ちゃんやマスタぁーみたいに、上手くできないの」
意気消沈と言わんばかりに、天河石ちゃんが肩を落とす。
後ろで他の人がやっていたのを見よう見まねでやっていたとしたら、こうなってしまうのも仕方ない。
「それで、電気石は練習台になってあげたんだ」
「ん。お姉さん……えっへん」
少しだけ誇らしげな笑みを見せる電気石。でも頭がこれでは、あまりお姉さんらしさは感じられない。
「あうー……」
そして、相変わらず電気石の頭を見てはうつむくの繰り返しな天河石ちゃん。
このまま放っておく訳にはいかない、か。
「あー、えっと」
男である僕がこういう事言うのも、少し変な話だけど……。
「僕が、教えてあげようか?」
一度下ろした電気石の髪を、口述で天河石ちゃんに説明しながら、
再びツインテールにしてみる。
決して上手いという自信はないけれど、天河石ちゃんは完成した電気石のツインテールを見て一言。
「マスタぁーよりお上手なんだねっ」
「男でこういうの上手くてもなぁ……」
褒めてくれるのは嬉しいけれど、素直に喜べない。
大体こういうのも全部、電気石や殺生石の長い髪に触れる機会が多くて、
自然に覚えただけだ。
「ついんてーるぅー」
「って。電気石、回転しながら髪ぶつけないで。あたっ」
喜びの表現なのかどうかは分からないけれど、先端が釣り針状にはねた電気石の癖毛が当たると、
少し痛い。
「お兄ちゃんっ、天河石もやってー」
止まりそうにない電気石を抱き、膝の上にのせたところで、天河石ちゃんが口を開く。
「え、髪型変えるの?」
「うんっ。お兄ちゃん上手だからぁ、天河石もー。だめ?」
「ん、別に構わないよ。どんなのがいいの?」
僕の言葉を聞き、待ってましたと言いたげに天河石ちゃんは微笑む。
そして、非常にわかりやすいリクエストを一言。
「ペリドットお姉ちゃんと同じにしてっ」
再びツインテールにしてみる。
決して上手いという自信はないけれど、天河石ちゃんは完成した電気石のツインテールを見て一言。
「マスタぁーよりお上手なんだねっ」
「男でこういうの上手くてもなぁ……」
褒めてくれるのは嬉しいけれど、素直に喜べない。
大体こういうのも全部、電気石や殺生石の長い髪に触れる機会が多くて、
自然に覚えただけだ。
「ついんてーるぅー」
「って。電気石、回転しながら髪ぶつけないで。あたっ」
喜びの表現なのかどうかは分からないけれど、先端が釣り針状にはねた電気石の癖毛が当たると、
少し痛い。
「お兄ちゃんっ、天河石もやってー」
止まりそうにない電気石を抱き、膝の上にのせたところで、天河石ちゃんが口を開く。
「え、髪型変えるの?」
「うんっ。お兄ちゃん上手だからぁ、天河石もー。だめ?」
「ん、別に構わないよ。どんなのがいいの?」
僕の言葉を聞き、待ってましたと言いたげに天河石ちゃんは微笑む。
そして、非常にわかりやすいリクエストを一言。
「ペリドットお姉ちゃんと同じにしてっ」
ブラシをテーブルに置き、一息つく。
目の前には、小さな金髪のペリドットさんが一人。
「ありがとーっ」
そう言って、髪型がすっかり変わった天河石ちゃんが深々とお辞儀をする。
「どういたしまして。似合ってるよ」
「えへへー。嬉しい」
「お姉さん、みたい。ぱちぱち」
僕の膝の上で、電気石が拍手。
「後はぁー、このメガネをかけるんだよー」
そしてどこから取り出したのか、ペリドットさんと同じ丸いレンズのメガネをかける天河石ちゃん。
よく見るとレンズは入っていないようだ。
だが、それをかけただけで、かなりペリドットさんの雰囲気に近づいた。子供の頃があったとしたら、
こんな感じなのではないだろうか。
「これでねぇ、マスタぁーにお姉さんになったよーって言うのっ」
ペリドットさんの真似をして見せながら、天河石ちゃんが言う。
なるほど、お姉さんにあこがれるお年頃なのかな。
「それじゃあ、早く帰らないとね。もうすぐ【天河石のマスター】さん、帰ってくるんじゃないかな?」
「にゃっ、ホントだぁ。お姉ちゃんに怒られるよぉ」
お姉さんの姿になってみても、やっぱり天河石ちゃんは天河石ちゃんのようだ。
思わず口元に笑みを浮かべてしまう。
「それじゃあ、天河石帰るねっ」
「うん。送っていこうか?」
「ううん、大丈夫だよっ。それじゃあお兄ちゃんと電ちゃん、またねーっ」
満面の笑みを見せ、大きく手を振る天河石ちゃん。僕が見送る暇もなく居間を出て行き、
僕の家を後にした。
外見は小さなペリドットさんで、中身は天河石ちゃん。改めて考えると、
おかしくて笑ってしまいそうになる。
「マスター」
開け放たれた居間のドアを眺めている僕に、電気石が声をかける。
「ん、どうしたの?」
膝上にいる電気石に顔を向ける。その距離はかなり近い。
「……私も、お姉さんー」
そう呟いた電気石の顔は、少し恥ずかしがっているようにも見えた。
目の前には、小さな金髪のペリドットさんが一人。
「ありがとーっ」
そう言って、髪型がすっかり変わった天河石ちゃんが深々とお辞儀をする。
「どういたしまして。似合ってるよ」
「えへへー。嬉しい」
「お姉さん、みたい。ぱちぱち」
僕の膝の上で、電気石が拍手。
「後はぁー、このメガネをかけるんだよー」
そしてどこから取り出したのか、ペリドットさんと同じ丸いレンズのメガネをかける天河石ちゃん。
よく見るとレンズは入っていないようだ。
だが、それをかけただけで、かなりペリドットさんの雰囲気に近づいた。子供の頃があったとしたら、
こんな感じなのではないだろうか。
「これでねぇ、マスタぁーにお姉さんになったよーって言うのっ」
ペリドットさんの真似をして見せながら、天河石ちゃんが言う。
なるほど、お姉さんにあこがれるお年頃なのかな。
「それじゃあ、早く帰らないとね。もうすぐ【天河石のマスター】さん、帰ってくるんじゃないかな?」
「にゃっ、ホントだぁ。お姉ちゃんに怒られるよぉ」
お姉さんの姿になってみても、やっぱり天河石ちゃんは天河石ちゃんのようだ。
思わず口元に笑みを浮かべてしまう。
「それじゃあ、天河石帰るねっ」
「うん。送っていこうか?」
「ううん、大丈夫だよっ。それじゃあお兄ちゃんと電ちゃん、またねーっ」
満面の笑みを見せ、大きく手を振る天河石ちゃん。僕が見送る暇もなく居間を出て行き、
僕の家を後にした。
外見は小さなペリドットさんで、中身は天河石ちゃん。改めて考えると、
おかしくて笑ってしまいそうになる。
「マスター」
開け放たれた居間のドアを眺めている僕に、電気石が声をかける。
「ん、どうしたの?」
膝上にいる電気石に顔を向ける。その距離はかなり近い。
「……私も、お姉さんー」
そう呟いた電気石の顔は、少し恥ずかしがっているようにも見えた。