春の陽気が心地よい今日この頃。
さわやかな朝の青空の下、電気石は僕の膝で、まるで遊び疲れたかのように横たわっている。
決して、ついさっきまで遊んでいたわけではない。朝からずっとこんな調子で、動こうとしないのだ。
「電気が切れ掛かってるんですねぇ」
心配そうな面持ちで、隣で電気石の頭を撫でていた蛋白石が口を開く。
「じゃあ充電しないと。でも……」
普段なら、充電用の三輪車で電気を補給するけど、今日はそんなことをする元気もないようだ。
「そういえば、今まで完全に電気が切れたことないけど、どうなっちゃうの?」
「私も見たことはないですよ。でも、多分ねじを巻いてあげないと動けなくなっちゃいますね」
なるほど。初めて電気石を見たときの眠った状態になっちゃうのか。
でも、電気で動くなら、どうしてねじを巻く必要があるんだろう……。
「ご主人様。お姉さまの充電、手伝ってくれませんか?」
と、電気石を見つめていた視線が、今度は僕のほうに向けられる。
お姉さま、とは言うけれど、本当は年下の電気石。
何が起きるか分からない状況にさせてしまう前に、何とかしたい。そんな、本来の姉としての顔が、
そこにあった。
これで嫌といえる訳がない。僕は二つ返事で、蛋白石の力になることになったんだ……。
さわやかな朝の青空の下、電気石は僕の膝で、まるで遊び疲れたかのように横たわっている。
決して、ついさっきまで遊んでいたわけではない。朝からずっとこんな調子で、動こうとしないのだ。
「電気が切れ掛かってるんですねぇ」
心配そうな面持ちで、隣で電気石の頭を撫でていた蛋白石が口を開く。
「じゃあ充電しないと。でも……」
普段なら、充電用の三輪車で電気を補給するけど、今日はそんなことをする元気もないようだ。
「そういえば、今まで完全に電気が切れたことないけど、どうなっちゃうの?」
「私も見たことはないですよ。でも、多分ねじを巻いてあげないと動けなくなっちゃいますね」
なるほど。初めて電気石を見たときの眠った状態になっちゃうのか。
でも、電気で動くなら、どうしてねじを巻く必要があるんだろう……。
「ご主人様。お姉さまの充電、手伝ってくれませんか?」
と、電気石を見つめていた視線が、今度は僕のほうに向けられる。
お姉さま、とは言うけれど、本当は年下の電気石。
何が起きるか分からない状況にさせてしまう前に、何とかしたい。そんな、本来の姉としての顔が、
そこにあった。
これで嫌といえる訳がない。僕は二つ返事で、蛋白石の力になることになったんだ……。
「で、これは……?」
テーブルに並べられたもの。
電池、下敷き、オレンジ、携帯電話の充電器。全く共通点が見出せないものが、ずらりと揃っていた。
「お姉さまの好きなものですよ?」
「そ、そうなんだ。でも充電するなら、三輪車を誰かが手で回すなり……」
「感電しますよ?」
それは危ない……僕は口をつぐんでしまう。
「実は、お姉さまがどういう原理で電気を蓄えるか、知らないんですよ」
「それで、伝記に関係のありそうで、さらに電気石の好きなものを集めてみたと」
はいと言って、うなずく蛋白石。
確かに、果物電池だったり静電気だったりはするけれど、ここからどうやって電気石が充電を?
オレンジは食べさせるのかな。じゃあ電池は……?
やり方が思い浮かばない三つは保留にし、僕はまず下敷きを手に取る。
小学校でよくやった、あれをやるために。
「蛋白石、電気石を支えてあげて」
電気石の体を起こし、蛋白石に抱えてもらう。
まず電気石のヘッドドレスを外して、代わりに下敷きを頭に。
そして、電気石の頭を下敷きでこすり続ける。
よくある静電気を発生させる方法だけれど、果たしてこれが充電になるのだろうか。
「ご主人様ー、何をしてるんですかぁ?」
「え、こうすると静電気が出るって、知らない?」
知りませんと、首をかしげる蛋白石。おそらく静電気が何かということも分からないのでは。
「つまり、これが電気の食事方法……お姉さまにとって、電気は美味しいものなんですよねぇ。
どんな味がするんだろぉ」
「って、蛋白石よだれたれてるよ」
「へ? あわわ……」
慌てて口を拭く蛋白石。一体どういう電気を想像したのかはわからないけど。
そんな会話をしていたところで、電気石の目が、ゆっくりと開かれる。
「……びりびり?」
小さな声で、そうつぶやく。
少しはましになったのかな。こするのをやめ、下敷きを頭から離す。
電気石の髪が、下敷きに釣られて逆立った。
「調子はどう?」
「ん……びりびり、少ない」
僕の問いかけに、力なく答える電気石。
まだまだ本調子ではないということか。もっとたくさん電気をあげないと。
そう思い、テーブルにある残りの品を手に取り、電気石に見せる。
「はい。これで動けるぐらい元気になればいいんだけど……どれがいい?」
僕の手の中にある三つの品、そして僕の顔を、視線だけで交互に見つめる電気石。
「ん……」
そして、手が置かれたのは……。
テーブルに並べられたもの。
電池、下敷き、オレンジ、携帯電話の充電器。全く共通点が見出せないものが、ずらりと揃っていた。
「お姉さまの好きなものですよ?」
「そ、そうなんだ。でも充電するなら、三輪車を誰かが手で回すなり……」
「感電しますよ?」
それは危ない……僕は口をつぐんでしまう。
「実は、お姉さまがどういう原理で電気を蓄えるか、知らないんですよ」
「それで、伝記に関係のありそうで、さらに電気石の好きなものを集めてみたと」
はいと言って、うなずく蛋白石。
確かに、果物電池だったり静電気だったりはするけれど、ここからどうやって電気石が充電を?
オレンジは食べさせるのかな。じゃあ電池は……?
やり方が思い浮かばない三つは保留にし、僕はまず下敷きを手に取る。
小学校でよくやった、あれをやるために。
「蛋白石、電気石を支えてあげて」
電気石の体を起こし、蛋白石に抱えてもらう。
まず電気石のヘッドドレスを外して、代わりに下敷きを頭に。
そして、電気石の頭を下敷きでこすり続ける。
よくある静電気を発生させる方法だけれど、果たしてこれが充電になるのだろうか。
「ご主人様ー、何をしてるんですかぁ?」
「え、こうすると静電気が出るって、知らない?」
知りませんと、首をかしげる蛋白石。おそらく静電気が何かということも分からないのでは。
「つまり、これが電気の食事方法……お姉さまにとって、電気は美味しいものなんですよねぇ。
どんな味がするんだろぉ」
「って、蛋白石よだれたれてるよ」
「へ? あわわ……」
慌てて口を拭く蛋白石。一体どういう電気を想像したのかはわからないけど。
そんな会話をしていたところで、電気石の目が、ゆっくりと開かれる。
「……びりびり?」
小さな声で、そうつぶやく。
少しはましになったのかな。こするのをやめ、下敷きを頭から離す。
電気石の髪が、下敷きに釣られて逆立った。
「調子はどう?」
「ん……びりびり、少ない」
僕の問いかけに、力なく答える電気石。
まだまだ本調子ではないということか。もっとたくさん電気をあげないと。
そう思い、テーブルにある残りの品を手に取り、電気石に見せる。
「はい。これで動けるぐらい元気になればいいんだけど……どれがいい?」
僕の手の中にある三つの品、そして僕の顔を、視線だけで交互に見つめる電気石。
「ん……」
そして、手が置かれたのは……。
春の陽気というのは、想像以上に暖かい。
「すりすり」
そう言って、嬉しそうに僕の背中に体を摺り寄せる電気石。
先ほどよりも、ずっと元気そうな顔だ。
「好きな人にすりすりしても、電気がいっぱい溜まるんですねー」
「そ、そうなのかな……」
ただ単に、体全体で静電気を生み出しているだけにも見えるけど。もしくは僕の衣服とかに
溜まってる静電気を吸ってるのか。
「……マスター、いっぱいびりびり」
電気石の小さな手が、僕の服をしっかりと握り締める。
「びりびりで……どきどき。嬉しい」
その言葉がどういう意味か、僕には真意を理解することは出来ない。
ただ、僕の体はいっぱい電気が溜まる構造になっているらしい。つまり電気石の簡易充電器?
「マスター……ぎゅー」
「お姉さま、すりすりしないと電気溜まりませんよ?」
「すりすり」
そう言って、嬉しそうに僕の背中に体を摺り寄せる電気石。
先ほどよりも、ずっと元気そうな顔だ。
「好きな人にすりすりしても、電気がいっぱい溜まるんですねー」
「そ、そうなのかな……」
ただ単に、体全体で静電気を生み出しているだけにも見えるけど。もしくは僕の衣服とかに
溜まってる静電気を吸ってるのか。
「……マスター、いっぱいびりびり」
電気石の小さな手が、僕の服をしっかりと握り締める。
「びりびりで……どきどき。嬉しい」
その言葉がどういう意味か、僕には真意を理解することは出来ない。
ただ、僕の体はいっぱい電気が溜まる構造になっているらしい。つまり電気石の簡易充電器?
「マスター……ぎゅー」
「お姉さま、すりすりしないと電気溜まりませんよ?」