鷹野×富竹。

軽い拘束+滅菌前提世界+馬。





すがるものが欲しかった。
誰かの肌に触れて、冷え切った心を温めて欲しかった。
「た、鷹野さん?」
「なあに?」
診療所での会議の後、暗くて危ないからと理由をつけてジロウさんを興宮まで送った。
「な、なにって…、あの、当たって。」

彼が今回泊まっている部屋は以前よりも安っぽい感じだった。
少しでも予算を節約しようという、涙ぐましい妥協の結果だろうか?
研究は今年で終わるのに。私が、終わらせるのに。
「当たってる、ってなにが?」
向かい合わせに抱きついて、乳房を擦りつけるように体を動かす。
ああ、ジロウさんの体はとても温かい。
「こ、こういう冗談は駄目だよ。僕だからよかったけど、他の男だったら…!」

うるさい口は黙らせる。唇で塞いで黙らせる。
さすがに開いて受け入れてはくれなかった。唇を甘噛みして、舌で輪郭をなぞる。
「…ジロウさん? 息はしてもいいのよ?」
言われたから、というわけではないのだろうけど、唇を解放してあげるとせっぱ詰まった
呼吸をしていた。

「冗談なんかじゃないわ。大丈夫、村の人は皆、私たちはこういう関係だって思ってるから。」
「それはそうだけど。実際には僕たちは、そういう関係じゃない。」
「じゃあ、今からそういう関係になればいいじゃない。」
体を少しずらして、ジロウさんの足の間に太ももを割り込ませる。固い感触。
「ジロウさんの体は、私が欲しいって言ってるわよ?」
太ももを動かして刺激すると、布越しにもそれを分かるほど彼の分身は硬度を増した。
「ジロウさんの心は、私が欲しくないの?」
「そんなこと、ない、よ。……でも、どうして急に。」
「急に欲しくなったの。それと、ご褒美。」
「ごほうび?」

来週、私のために*んでくれるから、そのご褒美。

「頑張って予算、とってきてくれたから。」
「いや、結局は削られてるし…鷹野さんはこんなことしなくてもいいんだよ。」
「……私とするのは、そんなに嫌?」
体を引く。
どちらかといえば気温は高い夜なのに、彼から離れたとたんに寒いと感じた。
「じゃあいいわ。狗の誰かに慰めてもらうから。」
この寒さを紛らわせてくれるのなら、相手は人食い鬼だって構わなかった。

「鷹野さん!」
部屋を出て行こうとすると、強く腕を引っ張られた。
「……東京で、何があったんだい?」
「…秘密よ。抱くなら、黙って抱いて。抱かないなら、帰して。」
ジロウさんは何も言わずに私を抱きしめてくれた。苦しいぐらいにきつく。
「鷹野さん……鷹野さん…鷹野さん、鷹野さん!」
「…美代、よ?」
「みよ、さん。」
ぎこちなく呼ぶ名前は「三四」なのか「美代」なのかは分からない。
どちらでもいい。今この場にいる私は「ジロウさんのみよ」には違いないのだから。
リボンを引っ張ろうとする手を押しとどめる。
「ほどけないわ。これ、ボタンなの。」
スナップ式のそれを外して見せると、ジロウさんは少し恥ずかしそうにしていた。
「シャワー、借りるわね。」

 ▼

タオルを体に巻き付けたて浴室から戻る。
ベッドに座っていたジロウさんは一瞬こちらを見て、あわてて顔を伏せた。
「あ、じゃあ僕も。」
立ち上がろうとするの彼に抱きついて押し倒す。
「いいわよ、そのままで。」
あまり猶予を与えたくない。浴室で考え直しをして、やっぱり中止、なんて嫌だ。
…変な私。断られたら、宣言したように別の男のところに行けばいいだけなのに。
他の男よりもジロウさんがいいと感じるのは、彼に恋をしているということだろうか?

違う、と思う。
私は恋をしたことはないけれど、愛がどんなものなのかは知っている。
それはとても尊い物だ。
相手の為になら、人生をまるごと投げ出してもかまわないと思えるほどのものだ。
私はどんな状況に陥っても祖父を*したりはしなかっただろう。
だけどジロウさんは*す。それがずっと昔から決まっていたことのように。
…だから、私はきっとジロウさんのことを好きじゃない。

体はお湯で温まっているのに、触れるとやっぱり、ジロウさんは温かい。
くっついていると気持ちがいい。
「鷹…みよさんは、どうして欲しい?」
「キス。」
ねだると即座に与えられた。
「ん…。」
触れて、甘噛みされて、舐められて。…ああ、私がしたのをそっくり返してくれてるのね。
積極的に舌を差し入れる。彼は一瞬とまどったようだったけど、すぐに応えてくれた。
「んんっ、くちゅ、ふぁ、ん…。」
十分に堪能してから口を離した。
……唇にジロウさんの視線を感じる。
「まだしたい?」
上目遣いで様子をうかがいながら、挑発するように、指先で唇をなでてみせた。
「えっと…みよさんがいいなら。」
「くすくす。」

ジロウさんは犬に似ている。躾の行き届いた、大人しい大型犬。
主人さえ噛み殺しそうな雰囲気を持つ狗たちに囲まれていると、ジロウさんと過ごす
時間は唯一リラックスしていられたときだったのかもしれない。
…ああ、二人の思い出は、もう過去形なのね。
「ちゅ、ぴちゃ…。」
部屋が狭いせいか、唾液のたてる音が淫猥に響く。
ベッドの上を探り、大人しく伏せをしている手を探り当てた。捕まえて、私の胸へ誘導する。
うっすらと目を開いてみた。
ジロウさんは目を固く閉じていて、緊張している表情だ。
胸に当てた彼の手は、指先一つ動かない。…だめなら、触らせたりしないのに。
ジロウさんの手を乳房に当てた上から揉んで、彼の手のひらに感触を伝える。
彼は、綿毛のタンポポに触れるように、遠慮がちに手を動かし始めた。

可愛い。
男性に対してそんな感情を抱いたのは初めてだった。
私のおなかの下で自己主張している彼まで愛しく思える。
すっかりお留守になっていた口から顔を離す。
「タオル、外して。」
「うん。」
直に触れる段階になると、彼はますます気弱で、なんだか焦らされているみたいだった。
「ジロウさん、そんなんじゃくすぐったいわ。もっと強くお願い。」
「ご、ごめん。…これで大丈夫?」
「ん…もっと強くしても平気。」
ジロウさんのシャツをたくし上げる。
ちゃりちゃりというドッグタグの音が、彼と私の任務を思い出させた。
…忘れよう、今だけは。
「ジロウさんのおなか、ぷにぷにね。」
なで回す。うめき声が返ってきた。
「…こんなことになるなら、減量しとくんだったよ。」
「適正範囲内だから、医者としてはおすすめしないわね。下手に減らすと体力も落ちるし。」
ベルトを外し、ジッパーを下ろす。下着の中に手を差し入れて…。
「…みよさん?」

………。

オーケー、クールになるのよ鷹野三四。
「脱がせるから、腰、上げてくれる?」
「あ、うん。」

………。

正直なところ、私は周囲が思っているほど男性経験が豊富なわけではない。
なので、平均的な男性サイズというものは明言できない。
だが、これは、あまりにも。
(これはなに? こんなの想定外よ! ジロウさんの前世は馬? 馬なのねっ?)
「落ち着くのよ、ジロウさん。」
「え?」
「少し確認したいことがあるんだけど、いいかしら?」
「いい、けど…。」
ジロウさんは不安そうにしている。大丈夫、私も不安よ。
…っていうか、こんなの入るの?
「ジロウさんは、体力や持久力に自信があるほうかしら?」
「あ、ああ。東京では毎日5キロは走ってるし。」
照れたように笑うジロウさん。
「生徒からは、機関車なんてあだ名されてるよ。」

 世 界 ガ 反 転 ス ル 。

駄目。駄目駄目駄目駄目!
このままいったら、明日は絶対、腰が立たない。
終末作戦に向けて忙しいっていうのに、一日つぶすなんてできない!
考えるのよ、考えなさい、鷹野三四!
「…あの、ジロウさんには言ってなかったけど、私、じつはSなの。」
とりあえず拘束プレイに持ち込めば勝算はある。
「あ、それは知ってた。」
「なんで!」
無駄にブラフはってるけど、私は全くノーマルよ? どうして簡単に納得するのよ!
「な、なんでって言われても…。」
い、いや、これはむしろ好都合。…心外だけど。
「…まあ、いいわ。縛らせてもらってもいいかしら?」
彼は素直に両手を差し出した。

当然ながら、一般宿泊施設のベッドに拘束具などついているはずがない。
タオルとベルトで手首を縛ったけど、頼りない印象はぬぐいきれなかった。
…なんだか、ごそごそしてたらゆるんで外れてしまいそう。
「診療所のベッドなら、しっかりした手錠がついてるんだけど…。」
地下室には、L5患者に対応できるパーフェクトな物がある。
「えっと…そ、それは、本格的だね。」
私の趣味だと思って合わせてくれようとしているのか、ジロウさんは前向きだった。
「くすくす。そんなに恐がらなくても、痛くはしないわよ?」
ジロウさんの顔の上に胸がくるように覆い被さる。
「口でして。…そう、そんな風に。」
舌と唇とでむにむにと刺激される。歯が当たらないように気遣ってくれているあたり、
彼にとって私は壊れ物らしい。
頭を抱くように腕を回して、ジロウさんの髪の毛に指を絡めた。

腰を浮かせて、開いている方の手を私自身に沿わせる。
「んっ…あ。」
思ったよりも濡れていたそこを指でかき回す。
ぐちゅぐちゅといういやらしい音に、ジロウさんがとまどった目で私を見上げた。
「…みよさん? 今、自分で…?」
「あら、言葉責め?」
「そ、そんなつもりじゃないよ。」
情けない顔が可愛くて、私は彼の額にキスを落とした。
「ただ、これ、解いてくれたらなって…。」
「駄目。」
即答する。
「みよさーん。」
「くすくす。」
エサの入ったお皿の前でお預けをさせられている犬みたい。
顔中にキスを落とした。
「解くのは駄目だけど、私だけ気持ちいいのも不公平よね。」
四つんばいで後ずさりして、私をジロウさんに押し当てる。
「うっ。」
「ん…。」
腰を上下させて、彼の側面を私でぬるぬるにする。
「…ジロウさんの熱い。」
「君のせいだよ。」
「光栄ね。」
腰を離すと、彼は名残惜しそうな声を上げた。
「待ってて、バッグに入れてあるの。」

化粧ポーチに入れてあったそれを手に、ベッドに戻る。
(ゴム製だから、多少は伸びると思うけど…)
開封し、ジロウさんの先端にあてがう。
記憶を頼りに……下まで引っぱって被せて…。
「ジロウさん? 大丈夫?」
「……あ? う、うん。大丈夫だよ、ちょっときついけど…。」
口ではそう言っていたが、眼鏡の奥で彼の目はこう言っていた。

『そういうプレイなんだね? 僕、頑張るよ』

(ち、違うのーーー!!)
そういうプレイじゃないから!
頑張らなくていいから!
「ふー……。」
ジロウさんから外し、それはゴミ箱に投げ捨てた。
「みよさん?」
「あー…思ったより痛そうだから、やめておくわ。」
どうして避妊具にあんなに豊富なサイズ展開があるのかを、初めて理解した。
LとかLLって、見栄やネタで買うものじゃなくて実用品だったのね…。

私はジロウさんの上にまたがって、手で角度を修正しながら腰を落とした。
「駄目だ!」
予想もしなかった激しい制止の声がかかる。
「…どうしたの? 私もあなたも予防接種済みだから、感染の心配はないわよ?」
半分は嘘で、半分は本当。
予防注射は偽物だった。だけど、既に空気感染したジロウさんと、研究過程で感染済みの
私との間では、もう感染は起こらない。
「そうじゃなくて、中に出してしまったら…。」
ああ。
「大丈夫、今日は安全日。…動かないでね。」
ゆっくりと腰を沈めていく。
途中までしか入らないのではないかと危惧したが、なんとか根本まで受け入れることができた。
「…みよさんの中、すごく狭い。」
「普通よ。規格外はジロウさんの方。」
円を描くように小さく腰を回してなじませる。
と、軽く突き上げられた。
「ひゃっ…ジロウさん?」
にらみつける。
「動かないで、って言ったのに…。」
「ご、ごめん。わざとじゃないんだ。」
「…いいわ、信じてあげる。」

ジロウさんの胸に手をついて、体を上下に動かし始めた。
「ん、はぁ、私の中、ジロウさんでいっぱい。」
「みよさん…っ。」
私の下で、ジロウさんが身じろぎする程度のささやかさで腰を動かしていた。
それはたぶん本能的なものだったから、責めないでおこう。
「みよさん…手、解いて。」
「…駄目、んっ。」
「くっ……君のこと、抱きしめたい。」
「……。」
それはとても魅惑的な申し出だった。
ジロウさんを受け入れながら、その温かな腕に抱かれるのは、とても気持ちいいだろう。
「……駄目。」

締め付けて、搾り取るように腰を引き上げた。
私の中でジロウさんがどくりと爆ぜる。
「う…あ……。」
固さが失われないうちに、再び根本まで飲み込む。
「は、ふぅ。……良かった? 今の。」
うっすらと汗の浮いた額をなでて、そのまま指で髪をすいた。
「ん…。……分かってるんだろ? 聞かないでくれよ。」
少しふてくされた様子で答えた。
「くすくす。ジロウさんの口から聞いてみたかったの。」
私の中のジロウさんは力が抜けてすっかり大人しくなっていた。
深くつながったまま、体内のジロウさんを締め付ける。
「っ! ……みよさん…このまま、続ける気かい?」
「それは、ジロウさん次第ね。」
体は動かさずに、ジロウさんを包んでいる場所だけに力を入れる。
「……くすくす。コレは、続けてもいいっていうお返事?」
私の中で、それは存在感を取り戻しつつあった。
「…さあね。」
彼を納めた下腹部をなでる。
「あら? こっちのジロウさんはとっても素直なのに。」
「外してくれたら、僕も素直になるかもしれないよ?」
ジロウさんが拘束された手を振ってアピールした。
「駄目。」
「抱きしめさせては、くれないのかい?」
「……駄目。」
抱きしめられたら流されてしまいそうだから、駄目。

二回目はねっとりと腰を使う。
「ん…。」
快楽に耐えている表情は苦痛に耐えているようにも見えて、私は少し気が引けた。
「出したかったら、我慢しなくていいのよ?」
首筋に顔を埋め、頸動脈のラインを舐め上げる。
シャツの下に手を入れて乳首を探す。
「無理はよくないわ。」
耳元にささやきかける。
「別に、無理なんて、してないさ…。」
「…意地っ張り。」
拒まれるのではないかと思いながら唇にキスする。ジロウさんに舌ごと食べられた。
「んっ? あ…。」
正直それは不意打ちで、少しだけ…。
「…良かった? 今の。」
からかうように言われて、ほほが熱くなった。
「う……ジ、ジロウさんのくせに生意気よ。」
思わずムキになってしまう。
そうしたら、ジロウさんは少し笑って、それから泣きそうな目になった。
「君のこと、抱きしめたいのに…。」
……ジロウさんは本当に生意気だ。

 ▼

行為は私主導で進み、最終的にジロウさんをダウンさせることに成功した。
「お疲れ様。」
ぐったりとした彼の両手を拘束から解放する。
ジロウさんはふらふらと両腕を上げて、私の背中に回した。
「え、ちょっ、重っ…。」
耐えきれずに、ジロウさんの胸の上に落下する。
ジロウさんが苦しそうにうめいた。
「大丈夫?」
そんなに体重はないつもりだけど、勢いがついていたし、彼も疲れてるし…。
「大丈夫。…ずっとこうしたかったんだ。」
ぎゅっと抱きしめられている。
「うん…。」
直に触れる肌が温かい。急にまぶたが重くなる。
「…あの、みよさん。」
「…ん?」
…だめ、明日は野村さんから電話があるかもしれないし、雛見沢に帰らないと…。
「今更なんだけど…安全日って、生理周期が乱れたらずれるんじゃなかったっけ?」
「大丈夫。前から不順だったから、ピル飲んでるの。」
「そうなんだ…。」
なんだかがっかりしたような声だった。
「残念そうね、孕ませたかった?」
「…うん。」
「くすくす。責任取らせるわよ?」
「とりたい。」

「……え?」
顔を上げようとしたけど、ジロウさんはますます強く抱きしめてきて、身動きがとれない。
「君がいて、僕がいて。富竹みよでも鷹野ジロウでも、そこが東京でも雛見沢でも、
生まれるのが息子でも娘でも、どんな未来でも僕は幸せになれる。君も幸せにしてみせる。」
「……嬉しい、わ。でも。」
声が詰まった。
「私たちに未来はないの。ごめんなさい。」
涙がこぼれる。壊れたように涙が止まらない。
ぽたぽた落ちて、ジロウさんの胸を濡らしていく。
「み…鷹野さん、鷹野さんは泣かなくていいよ。ごめん、僕が悪い。」
「いいえ、っく、ジロウさんは、何も悪くない。好きよ? ジロウさんのこと好き。」
嘘つき。*すくせに。



……。
殺したくない!
頭の中で、全力で可能性を探す。
富竹二尉を生き残せることができないか、脳が焼き切れそうな切実さで思考する。

……無理だ。
鷹野三佐と富竹二尉の死亡は決定している。
滅菌作戦が実行されたあと、おそらく私は殺されるだろう。自分の命も守れない私が、
ジロウさんの命を守ることなんてできない。
唯一の抜け道は、終末作戦を中止することだけだ。
…それはできない。
おじいちゃんの研究をゼロに戻してしまった私は、せめてこの手で雛見沢を滅ぼして
症候群を永遠の存在に昇格させなければならない。償わなければならない。

「鷹野さん、泣かないで。」
ジロウさんが途方に暮れた声で、ごめん、と繰り返す。
「違うの、違うのよ。ジロウさんは、何も…。」
ゆるんだ腕から抜け出して、上体を起こした。
ジロウさんの温かい首に両手を添える。
彼の未来は、5年目の祟りの生贄として私に殺されるか、雛見沢を裏切って私と一緒に
暗殺されるか、そのどちらかしかない。
誰かに殺させるくらいなら、私は…。
「…ごめんなさい。私はたぶん、あなたのことを愛してないの。」
そうやって傷つけた私を、彼はそれでも抱きしめてくれた。
彼の腕は変わらず優しく温かで、私は子供のように激しく泣きじゃくった。
「鷹野さんは悪くない、悪くないから。」
この期に及んで、彼の言葉に幸福を見いだしている。
悪くないと言ってくれることに、苦しくなるほどの安らぎを感じている。

彼が許してくれているのは、私が彼を愛さなかったことだ。
私が彼を殺すことじゃない。
真実を知れば、いくらジロウさんだって許してはくれないだろう。
「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい……。」
誰にも届かない謝罪を繰り返す。
私は誰からも許されない。

…6月19日が永遠に来なければいい。
生きていても死んでいても、綿流しの夜に私の世界は終わるのだ。


<終>

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最終更新:2007年04月17日 03:09