rァ 魅音かもしれない

俺以外にまだ眠れない奴がいるのかと思い。そっと布団から抜け出し、障子へと移動する。
「魅音? ……どうしたんだよ? こんな時間に」
戸を開けると、そこには魅音が立っていた。
「あ……うん。別になんでもないよ圭ちゃん、何となく眠れなくってさ。ちょっと夜風に当たってたところ」
ばつが悪そうに、魅音は笑った。
「おいおい……。各自明日に備えて万全のコンディションを整えとけーなんて言っていたくせにそれかよ。まったく……」
自分も人のことは言えないと知りつつも、半ば呆れながら俺は苦笑した。
「でもまあ、魅音のことだから風邪引くような真似はしないか。……もう少ししたら寝られるんだろ?」
「え……? あ……うん…………」
「じゃあ、俺ももう寝ることにする。お休み、魅音」
そう言って、俺は障子を閉めようとして――。
「あ……圭ちゃん」
「?」
魅音に呼び止められた。
「…………どうしたんだよ? 魅音」
でも、魅音は何も答えなかった。無言で俯いていた。
いや……そうじゃない。とぼとぼと、無言で俺の方へと近づいてきた。
あまりにゆっくりとしたスピードだったため、ついぼんやりとしている内に、魅音は本当に目の前まで近づいて来ていた。
「……お…………おい? 魅音?」
魅音は俺のパジャマを掴み、そして顔を俺の胸に埋めた。
「ねぇ……ごめん。圭ちゃん。ほんの少しだけでいいから……こうさせてくれない?」
そう言って震える魅音は……普段の魅音からは信じられないほど、小さく感じた。
「圭ちゃんは知ってるよね? 一年前まで、雛見沢には悟史っていう男の子がいたって……」
「ああ。……沙都子の兄貴だろ?」
こくりと魅音は頷いた。
「私ね。詩音が帰ってくるまで気付かなかったけど、悟史のことが…………好きだった」
きゅっ とパジャマを握る手に力が入る。
「…………でも、一年前の綿流しの日から突然、帰ってこなくなっちゃった…………」
魅音は泣いていた。涙は流していないけれど……声に抑揚が無いだけだけれど……それでも俺は、そう思った。
「きっと……私が悪いの。詩音の言う通り、もっと悟史のことを考えていれば……きっと手は打てていたはず。
私は、悟史を好きだった女の子として失格で……大切な仲間を守れなかった部長として失格で……そして、雛見沢の歪さを直すことの出来なかった園崎家次期党首としても失格なんだよ」
「魅音……」
俺は、魅音の背中を撫でてやることしか出来ない。
「明日は、雛身沢にとっても部活メンバーにとっても大切な日で……、でもこのままじゃまた私……失敗して……でも、そうしたらもう……」
虚ろな笑い声。
「本当なら……、部長ならこんなこと言っちゃダメなんだって分かってる。圭ちゃんを不安にしてしまうだけだって……。でもまた……ほら……私は……」
きっと、魅音にとってこの夜風は凍えるほど寒いものだった……。
だから魅音は震えている。ふと、そんな気がした。
「恐いの。……もしも圭ちゃんがいなくなっちゃったらって。また私のせいでみんなが傷ついたらって……、そう考えたら眠れなくって……」
「俺も魅音と同じ気持ちだ。……明日のこと考えたら、どういうわけか嫌な想像が消えなくってさ……。それで、眠れなかった」
魅音を寒さから守りたくて……、俺は魅音を抱きしめた。
「そう……、圭ちゃんもなんだ……」
「でもさ。……俺は思うんだよ。俺は部活メンバーみんなを信じてる。みんなも魅音を信じてる。だから、絶対大丈夫だって。……魅音も、俺達のことを信じてくれてるんだろ?」
「うん。……そうだね」
「魅音一人が抱え込む事なんかじゃないんだ。……だから、そんなに自分を追い詰める必要なんか無いんだ」
魅音は小さく頷いた。
そして、顔を上げて……俺を見上げる。
その瞳は潤んでいた。
「…………………ねぇ…………圭ちゃん……。もう一つだけ……頼みを聞いてくれる?」
「ああ。何でもいいぜ」
でも、魅音はその後の台詞をなかなか続けてはくれなかった。
何度も……何かを言いかけて、それでも口ごもって…………。そして、何度目になったか忘れかけた頃、ようやく魅音は意を決した。
「……私を…………抱いてくれない?」
その頼み事は、正直言って俺は全く心の準備が出来ていなくて……。俺は情けないことにただ口をパクパクさせるだけだった。
「女の子は……、その……すると変わるっていうから…………なら、私も変われるかなって……、そしたら……もうこんな私じゃ……」
魅音は寂しげに笑って、俺の胸から離れた。
「そっか……。そうだよね。おじさん、レナみたく女の子っぽくもないし、可愛くもないし、甲斐甲斐しくも……ないもんね」
にこっ と見た目だけは明るい笑顔を魅音は浮かべた。
「ありがとっ、圭ちゃん。気が楽になったよ。それじゃ、おやすみ」
そう言って、魅音は振り返って――。
「待てよっ!」
俺はとっさに、立ち去ろうとする魅音の左手首を掴んでいた。
「…………圭ちゃん?」
振り返る魅音を見つめて……、その直後にはもう俺は覚悟を決めていた。
魅音を引き寄せて、そして肩を抱いて…………顔を寄せる。
「ん? んんっ?」
俺にとってのファーストキスで……上手くいったかどうか何てのは分からない。ただ、俺の想いが魅音に伝わってくれることだけを望んで、努めて優しく唇を押し付ける。
きっかり十数えて、俺は唇を離した。
「あ……ああああ、あのっ……あのあの……、圭ちゃん……?」
魅音は唇に右手を当てながら、顔を真っ赤にする。
俺はそんな魅音の手首を掴んだまま、彼女を寝室へと引っ張っていった。
障子を閉めて、魅音を布団の上に押し倒す。
「ちょ……ねぇ……あの? ふぇっ?」
「魅音……嫌か?」
魅音はぶんぶんと首を横に振った。
俺はそれを見て安堵の息を吐いた。
「で……でもでも、圭ちゃんの方が…………嫌……なんじゃ…………ないの?」
恐る恐る、魅音が訊いてくる。
「そんなわけないだろ? 真剣な……女の子の頼みを断れる男なんていないし、ましてや魅音だぞ? 俺が嫌に思うわけ無いだろ?」
「えっ? それって……」
一瞬だけ、俺は口ごもる。
顔面が火照るのを自覚する。
「魅音は……俺にとって大事な女の子だ。それで……そんな女の子が俺を……たとえどんな理由だったとしてもその、そういう相手に選んでくれるっていうのは、俺だって嬉しいし……」
クソっ 俺の馬鹿。なんでここではっきりと、俺は魅音が好きだって言えないんだよっ!
自分のふがいなさに腹が立つ。
「圭ちゃん……ありがとう」
でも、魅音は俺のこんな言葉でも喜んでくれた。それだけが、俺の救いで……そして何よりも嬉しかった。
胸の鼓動が収まらない。
静寂の中で、俺達は見つめ合う。
しかし、いつまでもそうして固まっているわけにもいかない。
「あ……それじゃ、脱がすぞ?」
「え? うん……そうだね」
俺の声も、そして魅音の声も震えていた。
どこか現実味のない思考回路のまま、魅音の浴衣の帯を解いていく。
そして、左右に開いていって……魅音の上半身が露わになる。
「あっ。……圭ちゃん、そんなに見ないでよ。恥ずかしい……」
慌てて乳房を両手で隠す魅音。
しかし俺はその手でも隠しきれない魅音の胸の部分に手を添えた。押し上げるようにして魅音の柔らかな乳房に手を押し込み、強引に魅音の手と乳房の間に手を入れる。
「ひゃっ……ううっ」
結果、俺の両手が魅音の胸を鷲掴みにした形となり、魅音は恥ずかしさで目を瞑った。
「魅音の胸……大きくて、柔らかくて、温かくて、すげー気持ちいいぜ」
「そ……そんなこと……」
もにゅもにゅと、そのまま魅音の胸を揉みしだく。
「あふっん」
「すごくすべすべしていてさ……、でもって張りがあって……」
人差し指で乳首をつつき、そして擦る。
「あくっ……うんっ」
「乳首も敏感なんだな……、最高の胸だよ」
「あ……あうぅ」
魅音はぴくりと身震いして……手の力を緩めた。
もっと触って欲しいということだろう。
俺はさわさわと魅音の胸を優しく撫でまわし、乳首を転がした。
魅音の口から漏れる甘い吐息に、脳髄が痺れてくる。
「魅音っ!」
「きゃうあうん」
俺はとうとう我慢出来ず、魅音の胸にむしゃぶりついた。
「やだ……やだ……、圭ちゃんそんな急に……ああっ、吸っちゃイヤ……ダメ……私……」
そんな魅音の言葉に耳を貸さず、俺はちうちうと魅音の乳首を吸い続ける。
それだけじゃない。舌で舐め回し、軽く噛み、そして転がす。
「お願い……圭ちゃ……変になっちゃうから……」
馬鹿……魅音。それを聞いてやめられるわけないだろ?
「ヤダぁ……やめてって言ってるのにぃ~っ」
俺はより強く魅音の胸を責める。
「あぐぅっ」
反射的に、魅音はきゅっと両腿を強く合わせた。 
「ううっ……うううっ」
抑えた喘ぎ声を出しながら、もじもじと小刻みに太股を動かしている。
そんな魅音が……たまらなく可愛く思えた。
魅音の胸から顔を離す。
「………………圭ちゃん?」
「魅音……俺ももう我慢出来ない。挿れてもいいか?」
「えう? う……………………………………うん……」
魅音は目を瞑ったまま、小さく頷いた。
俺は膝立で起きあがり、パジャマのズボンとパンツを脱いだ。
そして、魅音の下着に手を伸ばす。
「あ……あのっ」
しかし、魅音はとっさに下着の上に右手を置いた。
左腕で胸を抱え込む。
それは……拒絶の証。
「魅音。……やっぱり、俺じゃ嫌だったか?」
びくりと、魅音は体を震わせた。
「違う。……そうじゃないの。恥ずかしくて……初めてだから……、恐くて……もう、後戻りが出来ないって思って……ごめん……」
「そっか……、そうだよな。心の準備とか……いるよな……」
俺は、努めて明るく笑った。
「圭ちゃんの……触ってもいい?」
「え? そりゃ…………俺は構わないけどさ……」
でも、いいのか? 恐くないのか?
魅音は顔をこちらに向けて、おずおずと……でもまっすぐに俺のものへと両手を伸ばしてきた。
さわっ
ビクッ と、魅音の手が触れた瞬間、俺のものと魅音の手は震えたが、魅音は包み込むように俺のものに手を添えた。
「あははっ。……これが圭ちゃんのオットセイ☆なんだね。熱くて……固くて、とっても力強いよ」
「……魅音」
魅音は手を震わせながら……それでも優しく、俺のものを撫でた。
その手がとても温かくて心地よく……まるで俺の心すべてを受け止めてるようで……満たされるものを感じる。
「そして…………そうだね。圭ちゃんは、私を……私と……」
優しい口調で、魅音が呟く。
「ああ、そうさ……俺は魅音と一つになりたい」
「うん……そうなんだね…………」
感慨深げに、魅音は微笑んだ。
「圭ちゃん……。ごめんね。もう大丈夫」
「分かった。……じゃあ、下着……」
「うん。……脱がして?」
俺は魅音の言葉に従い、下着を下ろしていく。今度は抵抗しなかった。
魅音の長い脚から下着を抜く。
顔を上げると、魅音の秘部とそれを覆う茂みが露わになっていた。
抱き寄せるように、両手をこちらに伸ばしてくる。
「圭ちゃん…………来て?」
俺は無言で頷いて、魅音の秘部に自分のものを当てた。
「うん……そこ……。そのまま、奥まで突いて………………あっ……ぐっ……んっ」
魅音がそうであるように、当然俺も初めてなわけで……こういう事の要領なんかは分からない。だから、強引にこじ開けるようにして、自分のものを魅音の中へと埋め込むような真似しか出来ない。
きゅうっ と魅音の中が俺のものを締め付ける。
一瞬、俺はその締め付けに顔を歪めたけれど……。じんわりと……ぬめりのある液体がそれを和らげる。
はぁ はぁ はぁ はぁ
魅音の息が荒く響く。
その目蓋から、涙がこぼれ落ちていた。
「圭ちゃん…………」
「お……おう」
魅音は涙をこぼしながら……、でも力強い笑みを浮かべた。
「これで……一つになれたんだよね?」
「ああっ。そうだな」
俺も、魅音に笑みを返した。
そして、魅音に覆い被さって抱きしめ合う。
肌の温もりを伝え合って……互いが一つであることを確認する。
俺は、ゆっくりと腰を動かし始めた。
「んっ…………」
ちゅっ
結合部が小さく音を立てる。
締め付けがきつくて思うように腰が動かせないっていうのもあるけど、あまり魅音に負担をかけたくなくて……、なるべく小刻みに出し入れする。
ぎゅっ と俺の背中にまわる魅音の腕に力が入る。
魅音もまた、俺の動きに応えるように、小刻みに腰を動かしていた。
徐々に結合部の滑りがよくなってきている気がする。
そこはもう、俺のものを受け入れつつあった。
「魅音。……あのさ、もう少し大きく動いていいか?」
「うん。いいよ。圭ちゃんの好きにして欲しい。圭ちゃんが感じてくれると、私も嬉しいから……」
「ああ。……ありがとう、魅音」
今度は、もう少し大きく、そして早めにピストン運動を行う。
包み込まれるだけだった俺のものが、より貪欲に……快楽を貪ろうと、そして快感を与えようと、魅音の中を掻き回す。
ぐちゅぐちゅとした粘っこい音が静かな寝室に、妙に響く気がする。
絡み合う肉と肉の感触。
でも……、俺には不思議とそれが不潔なものには思えなかった。
「魅音……気持ちいいよ」
「よかった……そう言ってくれて……」
魅音もまた貪欲に俺のものを求めていた。奥へ奥へと俺のものを飲み込もうと蠢いている。
俺はそれに逆らうことが出来ず、ただただ腰を打ち付ける。
ダメだ……、やめることが出来ない。
「魅音……。ごめん。俺……もうイクっ」
魅音は応えない。体を弓なりに反らして喘いでいた。
精液が俺のものを駆け上ってくる。
「……………くっ……………ううううあああああっ!!」
「はっ……あああああああぁぁぁぁっ!!」
俺の精液を膣内で受け止めながら、魅音は嬉しそうに体を震わせた。
脱力して、俺は魅音の胸に倒れ込む。
「ねぇ……圭ちゃん?」
俺の頭に手を置きながら、魅音は囁いた。
「私ね……変わるっていう意味が少し分かった気がした」
俺は魅音の顔を見上げることはしなかった。

――それはね。きっと、私を変える……無限にある選択肢を恐れずに選ぶことなんじゃないかなって――

ぼやけた頭の俺には、本当に魅音がそう言ったのかどうかもよく分からない。そして、その真意も分からない。
でも魅音がどういう顔で笑っているのか、何故かそれは分かった気がした。

翌日。
「梨花ちゃん。接近してくる敵はいる?」
「みー♪ 三時の方向に4人。七時の方向から3人。どちらもあと50mほどの距離なのですよ」
「よし。……なら三時の方から片づけようか。沙都子はトラップA-47の発動準備。圭ちゃんとレナは七時の方向を警戒。全員三時方向へ移動するよ。羽入は先行して沙都子のサポートと囮をお願い。片づいたらQ地区へ転進するよ」
魅音は迷い無く俺達を指揮し、そして俺達も魅音の指揮に従って着実に戦果を挙げている。
「まったく。魅音の奴……頼もしいったらありゃしないぜ」
「うふふ。そうだね。……さすがは部長さんだよね☆」
「流石としか言いようがありませんわ。ここまでわたくしのトラップを有効に使ってくれるなんて。トラップ使い冥利に尽きましてよー☆」
朗らかに笑い合う俺達。
「というより、私には何か吹っ切れたような感じがするんだけど……。何か知ってる? 羽入?」
「さあ? 僕は何も知らないのですよ? きっと愛の力なのです。あぅあぅあぅあぅ☆」
そう、確かに園崎魅音はどこかが今までより強くなった。そんな気がした。
「ほら、みんないつまでも固まってないで持ち場へ散った散った。先はまだまだ長いんだからねーっ?」
魅音の叱咤がとんで、俺達はそれぞれの役割に就いた。
そう、部長園崎魅音と俺達部活メンバーに敵なんかいやしない。
勝てる。……俺達は間違いなく勝つことが出来る。惨劇は打ち破れる。
魅音に背を向けながら、俺は笑みを浮かべてバットを構えた。

―魅音END―

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最終更新:2007年03月10日 21:48