前回

SIDE:レナ

薄暗くなってきた教室の中に鉛筆とホッチキスの音のみが響く。
今日は夏休み最後の登校日。
再来週から学校が再開するから、夏休みの課題の進行状況のチェックがあったのだ。
結局魅ぃちゃんはテキスト以外、何も手を付けてなくて知恵先生に大目玉を食らっていた。
他の皆は、ある程度終わっているのに魅ぃちゃんだけがほぼ手付かずの状態だった。
と言う訳だ。
流石に受験生がこれでは先が思いやられる。
そんな訳で、本来ならクラス委員長である彼女がする仕事を、私と圭一くんの二人で代行しているのだ。
来期に圭一くんはクラス委員長になる。そして私は補佐役に抜擢された。知恵先生に頼まれたら断れない。
因みに魅ぃちゃんは、先生の家に引き摺られて連れて行かれた。
課題が終わるまでマンツーマンで『指導』してくれるそうだ。
だから私達はクラス委員長になった時の練習を兼ねて作業を黙々としている。

「だあぁ~~っっ!!ようやく終わったぞコンチクショウ!」

圭一くんが机に勢い良く突っ伏して叫ぶ。

「あはは…うん。ようやく終わったね。レナ疲れちゃった…」

私は椅子に座ったまま、腕を上げて伸びをする。
後は片付けをして教室と下駄箱の鍵を閉めるだけ、鍵は近い内に先生に手渡す手筈になっている。

「そういや、レナの親父さん。今日帰って来るんだっけか?」
「うん。もう帰っている頃かな。かな?」

そう。私のお父さんは数日前から出張に行っていたのだ。
ついでに言えば、圭一くんの御両親も…。
何という名前だったか?コミ…コミ?何とかマーケットに出展するとかで留守にしている。
伯父様は画伯だそうだから、多分、風景画とか油絵とかの個展なのだろう。
ともかく、私は圭一くんの『世話』を頼まれたので自主的に『泊まり込み』していたのだ。
『朝はおはよう』から『夜はおやすみなさい』まで一緒に過ごして新婚気分を味わったのだった。
但し、Hな事は何もしていない。
だって私が『女の子の日』だったから…。

「レナ手作りの飯が食えなくなるのか…。はあ…。残念だぜ」
「エヘヘ☆言ってくれたら、いつでも作りに行ってあげるから、そんな顔しちゃ駄目だよ。だよ」

圭一くんの鼻を人差し指で軽くつついて『めっ!』ってしながら、私は心の中でガッツポーズする。
圭一くんが私の事を必要としてくれている。という事に…。
少なくとも『押しかけ女房』が迷惑に思われてはいない。
ただ『奥さん』としてしてあげる事をしてあげられなかったのが残念。
圭一くんだって男の子だから、やっぱり彼女と一緒に何日も過ごした…したくなるだろう。
良く我慢してくれたと思う。
お口でしてあげようかとも考えたけど、そんな事したら私も欲しくなっちゃうから…。
約一週間、一人Hも禁止させて耐えさせたのだ。
今なら誰も居ない。私達二人だけ…。
それに女の子の日も今日の朝終わったのだ、お互いの御褒美に……うん。

「おう!楽しみにしとくよ!むしろ毎日頼みたいくらいだぜ! 毎朝、制服にエプロン姿のレナに起こされたら…くうぅぅ!良いぜ!堪らねぇ!」
「はうぅうっ!!そ、それって…レナが、け、圭一くんのお嫁さんに…。はうぅ☆良いね!良いね!」

私は顔を真っ赤にして、脳内で都合の良い未来予想図を瞬時に構築し始める。
……………はうぅ♪

「はは!それはまあ五年ばかし待っててくれよ!」
「うんうん!待つよう!絶対待つよう!圭一くんのプロポーズ。楽しみにしてるね♪」

そんな甘い会話をしながら鞄に筆記用具を入れて、私は圭一くんの横に行き腰を屈める。
そして耳に手を当てて小さな声で囁いてみる。

「そうそう、あのね…。レナ、女の子の日終わったよ」

優しく、甘えん坊さんな声で私は教えてあげる。

「おお~…って事は…出来るって事だよな」

嬉しそうな顔で圭一くんが問い掛けてくる。

「出来るよ…。でもお外にピュッてしてくれるなら…だけど良いかな。かな?」
「ああ!それに俺、レナに言われた通り我慢したんだぜ!」

と、圭一くんが誇らしげに言う。

「うん。頑張ったね。だから御褒美をあげるんだよ。だよ」

私は圭一くんの頬を両手で優しく擦り、膝の上に足を組んで横向きに座る。

「圭一くん…。言ってたよね?お家以外の所でもしてみたいって」
「おお…まさか…うん。外でさせてくれるとか?」
「う~ん。でも、もう時間も遅いから…今日はここで……ねっ?」
「いや…むしろ」

と圭一くんが言った後、私の耳元に口を近付けて囁く。

「……とかでしてみたいんだよ」
「はう……。けど大丈夫かな。かな?」
「大丈夫だって!なっ!行こうぜ?」

圭一くんが私を膝から降ろして立ち上がって手を差し出す。

「うん!」

差し出された手を取って指を絡ませた。
荷物を持って、薄暗い廊下を足速に私達は進んで行く。
久し振りにHをするから圭一くん…ソワソワしてる。
ああ、それは私もだけど。

「さて…鍵は開いて……無いよな」

とある部屋の戸をニ、三度揺すって圭一くんが呟く。

「はう。じゃあ違う場所でする?」
「くっくっく…!大丈夫だ。ここをこうして…」

そう言って圭一くんが戸を縦に動かし始める。

「よっ…と」

カチャリと軽い金属音がした後、圭一くんが戸を横に滑らせると不思議な事に戸が開く。

「圭一くん…何でそんな事知ってるんだろ。だろ?なんか泥棒さんみたい…」
「何言ってんだよ。魅音が言ってたんだ。ここの鍵は、こうしたら簡単に開く!ってさ」
「あはは…。確かに魅ぃちゃんなら知ってそう」

あまり詮索はしない方が良いだろう。
私は部屋の中に入って、辺りを見回す。
一つの簡素なパイプベッドが置いてあって、小さな棚には薬品の瓶が整頓されている。
そう。ここは保健室。
本来なら怪我や体調不良を治療する部屋…。誰だって一度は御世話になっているだろう。

「レナ…」

戸を閉めた後、圭一くんが私の身体を後ろから抱き締めて首筋に顔を埋めた。
そして鼻を鳴らして私の身体の匂いを嗅いでくるのだ。

「ん…。駄目だよう圭一くん。今日はレナいっぱい汗かいちゃったから…クンクンしちゃ駄目…。んん…」
「良いじゃねぇか…。スキンシップだよ。ス・キ・ン・シ・ッ・プ」
「ふぁ…あ…」

圭一くんが首筋に強く吸い付く、何度も何度も…。
一通りキスマークを付けて満足したのか、圭一くんが唇を離す

「ん……。圭一くん、がっついちゃ嫌だよう。ちゃんとチュウからしてくれないとHはお預けなんだよ。だよ」
「ああ…ゴメン。じゃあ…ん」

私は身体を動かして圭一くんの唇に口付けた。ちょっとだけ背伸びをして両腕で抱き締める。
すると圭一くんがギュッと抱き締めてくれる。

「ふ…っんう……んっ」

こうやって濃厚なキスをするのも一週間振りだ。その間も軽いキスくらいはしたけど…。
Hなキスをしたら、私は圭一くんが欲しくなっちゃう…。
だから我慢した。

「んう…ん…くちゅ」

でも、それも終わった。
圭一くん以上に私の方が限界…。

「ふ…くちゅ……ちゅ…あ」

自分から舌を絡ませて、圭一くんを貪る。唾液を啜って口内で味わった後、喉を鳴らして咀嚼した。
たった一週間、圭一くんと交われなかっただけで…私は欲求不満になってしまった。
一緒に過ごしていても、寂しくて物足りなくて……思わず自分で慰めてしまいそうになったくらい。
だから、圭一くんが私のお尻に触れただけで身体がピクッと反応してしまった。

「んっ…ふう…ふう…んむ…んう…あむ♪」

私は口内に目一杯舌を差し入れて、圭一くんに吸って欲しいとねだる。すると軽く舌を吸って愛撫してくれた。
下着の端からモゾモゾと圭一くんの手が入って来て、お尻を揉みほぐす。
そうだ。私も何かしてあげないと…。
私は片手を首から離して、オットセイ☆をズボンの上から優しく揉み揉みしてあげる。

「っうぅ…ちゅっ…ちゅる」

圭一くんの舌を軽く何度も吸い、自分の口内に導き入れる。
私は口に広がる甘い甘い圭一くんの味に酔って…『サカリ』がついてしまう。
お腹の奥が熱く痺れてくる。切ない…愛して貰いたい……。

「…ん。圭一くん。あっち…行こう?」

私は唇を離し、圭一くんの胸元に顔を埋めてベッドを指差す。

「だな……」

私達は上履きを脱いで、いそいそとシーツの中に入り込み戯れ合う。

「…クスクス。…もう…。時間無いから…ねっ?」

セーラー服を脱がせようとする手をスカートの中に誘導する。
下着の上から秘部を指で擦られる…。

ピクリと身体が反応する。

「ふ…う…」

圭一くんの中指が上下にゆっくり動かされて、私は小さな声で喘ぐ。

「は…あう…っん」

仰向けに寝転がっている私の上に圭一くんが覆い被さって、口付けをしてくれる。

「っん…んむぅ…は…んん」

段々頭がボーッとしてきた。私は口内を蹂躙する圭一くんの舌を吸って必死に愛情表現…ううん求愛行動をする。
そう。今の私は『サカリのついた発情期のレナ』なのだ。

「お…。濡れてきた…」

しばらくして私の唇から口を離した後、下着の上部から中に手を入れて、直に秘部に指を這わせて愛撫し始めた。

「は…あ…あふ…」

背筋がゾクゾクする優しい刺激に、私は早くも甘い声が出てしまう。
微かに震える手で圭一くんのズボンをまさぐって、オットセイ☆を愛撫してあげる。

「ふぅ…凄いよう…オットセイ☆…いつもより硬い…はあ…んくっ」

圭一くん辛そう…。いっぱいHなミルクが溜まっちゃって我慢出来ないよね?
久し振りに『女のレナ』を見ちゃったから……早くピュッピュッてしたいよね?
そんな事を考えながら、私は生唾を飲み込んだ。
理由は分かってるよね?
こんなに元気一杯なオットセイ☆を触ってしまったら『期待』してしまう。
私は圭一くんに優しく抱かれるのも好きだけど、野獣みたいに荒々しく抱かれるのも好き。
どっちも気持ち良くて、身体がフワフワに蕩けて大好き。
オットセイ☆が欲しくて身体の奥が熱く疼く。
身体が『圭一くんの味』を覚えてしまったから、私は毎日いけない事ばかり考えてしまっている。
でも、悪い事では無いから良いよね?
だってこれは『二人がもっと仲良しになれるおまじない』なのだから。

「っ…あ…はあ…はあ…。けぇ、いちくぅん…」

私は秘部をまさぐっている圭一くんを呼び止める。

「ん?何…だよ。んん…」

圭一くんの後頭部に空いている片手を回して、グッと自分の方へ引き寄せて耳元で囁く。

「ふう…ふっ…ん。レナのおまんこ…もう欲しくなっちゃったんだよ。だよ。……圭一くんのおちんちん。…入れて…ねっ?」

私的にはオットセイ☆より、おちんちんって言う方がHだと思う。
ちょっと子供っぽい言い方だから恥ずかしいけど、こういう風に言った方が圭一くんは喜んでくれるのだ。

「お、おち……んっ!…でも、もう少し濡らさないとさ……痛いぞ?多分」
「大丈夫…こうしたら良いんだよ。だよ」

私は身体を起こして、圭一くんをその場に座らせる。
そして、圭一くんのズボンのボタンとベルトを外した後、四つん這いになって顔を下半身に埋める。

「ふふ♪」

チャックを歯で挟んでゆっくりと下げて、下着の上から舌を這わせた。
舌で裏筋を下から上にネットリと唾液を絡ませ、続いて下着を口で咥えて下げる。

「はうぅ~☆久し振りだね。だね。まずはご挨拶からだよ」

おちんちんの先っちょに啄む様に何度もキスをしながら、左手を添える。

「ちゅっ!ちゅっ!…んう…」

後は舌をジワジワと這わせて……といつもなら続くけど、今日は時間が無い。

「くちゅ……ん…」

唾液をおちんちんに垂らした後、優しく優しく口内で愛撫してあげる。

「う…はあ…気持ち良い…」

久し振りのおしゃぶりに圭一くんが吐息を洩らす。気持ち良いんだ?
でもイカせてあげない。今回のおしゃぶりは、あくまでもHの準備なのだ。

「ちゅぱっ!ちゅっ!んぅ…んぐっ!」

けど、ちょっぴりサービスしてあげた。おちんちんの根元を少し手で締めて、吸い付く。
おちんちんの頭を唇に引っ掛け、舌でチロチロと小刻みに舐めて口内に飲み込む。

「ちゅばっ!ちゅばっ!んふう…」
「はっ…あ!くぅっ!」

いやらしい音を出しながら、鼻息荒く私は圭一くんに奉仕する。ねぇ、圭一くん…もう良いよね?準備は出来たよね?

「っはあ…はあ…?」

急に愛撫を止めた私を、圭一くんが不思議そうに見ているのを視界の端に捉えつつ、その場に寝転がる。

「圭一くん」

お尻を浮かして下着を膝まで脱いで、両手で膝裏を持つ。
分かりやすく言うなら、赤ちゃんのオムツを着けている時みたいな格好だ。

「…良いよ。来て…」
「レナ…」

圭一くんが私の膝小僧を持って腰を前に進める。ゆっくり…ゆっくりと。

「あっ…あう…」

太くて硬いおちんちんが私の膣肉を掻き分けて入って来る、気持ち良くて身体がビクッと反応して、甘い吐息が出てしまう。

「あふ…う…んっ…あは♪…圭一くん、気持ち良い?」
「あ、ああ。久々だから…はぁ…凄く良い…ぞ」

根元までおちんちんを挿入して、圭一くんが身体を少し震わせているのを見て、私は悪戯心を出してしまう。

「んあ…じゃあ…はあ…これなんて…どうかな。かな」

そう言ってお腹に力を入れて膣でおちんちんを締め上げる。

「うあっ!…ちょ!」
「はうぅ…圭一くん…あ…早くぅ」

両足で圭一くんの腰を引き寄せて、私は腰を小刻みにクイックイッと動かしてみたりする。

「あ…また大きくなった…よ。あふ…す、凄い」

私は両手を広げて圭一くんに語りかける。

「レナ…圭一くんとH出来なくて…ん…寂しかったんだよ」
「近くに居ても…触れ合えなくて…辛かったんだよ」

圭一くんが動けない様にガッチリと組み付いて、私は両手を使って圭一くんを抱き締める。

「だから、そんな寂しかった事を忘れちゃうくらい…んくっ…激しくして欲しい…な」
「俺も寂しかったぞ。だから一週間分…頑張るよ」

それを聞いて、拘束を外して圭一くんに身を委ねる。

「っあ!」

私の腰を持って圭一くんがおちんちんを子宮に打ち付けた。膣肉を一気に押し拡げて、また引いて…そんな強烈な快感に私は身悶えする。

「あっ!あっ!」

シーツを握り締めて、膣内を暴れ回るおちんちんを必死に締め上げる。
いや…もう自然に力が入って締め上げていると言った方が正しい。
男好きに…圭一くんの虜になってしまった身体が勝手にしてしまうのだ。
圭一くんが以前言っていた。
『中のヒダが絡み付いてウネウネって動いて気持ち良い』って。
『男の悦ばせ方』を身体が本能で知っているのだろう。

「んあっ!い、良いよう!おちんちん気持ち良いよう!あんっ!!」

私の幼さの残った甘えた声が、圭一くんは大好きみたい。だから私を鳴かせたくて頑張ってくれる。

「ひうっ!あっ!!んう~っ!!んっ!」
「ふぅっ!…ふう…!」

反り返ったおちんちんが容赦無く、私の性感帯を刺激する。膣壁の上側…何て言ったか、確かGスポットだったか?
そこに押し付けてグリグリと刺激される。

「んあっ!!ら、らめぇ!オシッコ出ちゃう!ひぁあっ!!あっ!!」

おちんちんの頭で擦り付けられるのだ。そんな弱い部分を。
指で愛撫されるだけでも、凄い気持ち良い所をおちんちんでされたら堪らない。
ゾクゾクとした快感の乱打に私の未熟な身体がビクッと跳ねる。

「っ…あっ!!あんっ!あんっ!!」

熱を帯びて真っ赤になった結合部が、私からも見える。
スケベな下のお口がヒクヒクしながら、圭一くんのおちんちんにしゃぶりついている。

「っはあ…!おいレナ、見えるか!美味しそうにしゃぶりついてるぞ…くぅっ!」
「あうっ!やぁ…!!」

そんな私の視線に気付いた圭一くんが、両手で足首を持って私の身体を少し倒して攻め立てる。

「ほら…これで見やすくなっただろ?うぅ…すげぇ…まだ締め付けれるのかよ…!はあ…!」
「あっ!あくっ!んうぅ!」

私は酸素を求めて口を開けて喘ぐ。気持ち良くて呼吸が追い付かない。
おちんちんを膣奥に打ち付けられる度に味わう、圭一くんの味に酔って身体を震わせて鳴く。

「あっ!あっ!ああっ!!」

我慢していた欲求が一気に高まる。でも絶頂を迎える程では無くて、その一歩手前…。

「くうぅ!ご、ごめん!もうっ!無理!」

圭一くんがおちんちんを引き抜いて秘部に擦り付ける。

「はあっ…はあ!はっ…はあ!」

勢い良く射精をして私の身体と制服に熱いミルクがかかる。
ちょっといつもより『早い』
だから私は中途半端な所でイケず終いになってしまう。

「んく…。はう…我慢出来なかったんだ…」

私はゆっくり身体を起こして、圭一くんを見据えてポツリと呟く。

「ご、ごめん…」

落ち込む圭一くんを尻目に私はティッシュで後片付けに入る。
圭一くんを責めるのは間違っていると自分でも分かっている。
ずっと我慢して、頑張ったけど…耐え切れなかったのだから。
仕方無いではないか。圭一くんだって、私とイキたかっただろうけど無理だったんだから。
でも…少しだけ私は不機嫌になってしまったのだ。
そんな自分勝手な理由で圭一くんに冷たい態度を取ってしまう。

「帰ろっか…?また明日、頑張ってくれたら良いよ」
「う、うん」

そんな自分が嫌になってしまう。目の前に置かれた餌が貰え無くて拗ねている自分が嫌い。
圭一くん…ごめんね。

「…はあ……」

帰り道は二人共喋れなくて辛かった。
分かっている。原因は私にある。普段なら『仕方無い』で笑って済ませられる事なのに、今日は違った。
お互い悶々と一週間を過ごして、ようやく愛し合えたのに私だけ…。
『圭一くんだけずるい』
と思ってしまった事に自己嫌悪して、イライラして…冷たい態度を取ってしまって…圭一くんを傷付けてしまっただろうか?
いや傷付けてしまった。
『また明日』
と言って別れて、家でお父さんと過ごしていても、どこか上の空だった。
お父さんが話してくれる出張先の話より、
明日、どんな顔をして圭一くんに会えば良いのか…それだけを考えていた。
圭一くんは優しいから…私が謝れば許してくれるだろう。
でも、私の気が済まない。
大切な人を傷付けてしまった自分への怒り。罪滅ぼしをしたい。
機械的に食事やお風呂を済ませて、私は自室で落ち込む。

「はあ…」

もう溜息しか出ない。
もしかしたら嫌われてしまったかも知れない。
圭一くんも
『自分勝手な女だ!』
って思っている事だろう。
ベッドの上で壁にもたれ掛かって、ボーッとしながら窓の外を見る。
やっぱり謝ろう。明日なんて言ってたら駄目…迷惑だろうけど今から行こう。
夜の十一時過ぎになってしまったけど、先伸ばしには出来ない。
どうせ私は『自分勝手な女』なのだ。何とでも言えば良い。
既に眠っているお父さんを起こさない様にコッソリと玄関を開ける。
寝間着にサンダルという格好だけど、そんなの関係無い。
月明りで照らされた道を足速に進んで行く。
そして圭一くんの家の前に着いた私はチラッと上を見上げる。
二階の圭一くんの部屋以外は真っ暗…。
当たり前だ…圭一くんの御両親はまだ帰って来ていないのだから。
私は深呼吸をして心を落ち着ける。
ただボーッと立っているだけで、圭一くんが気付いてくれる訳が無い。
足元の小石を拾って、二階の窓に軽く投げる。一回…二回、三回目を投げようとして窓が開かれる。
圭一くんが私の姿を見て玄関まで来てくれた。

「圭一くん…」
「どうしたんだよレナ、こんな時間に」
「…レナ、圭一くんに酷い事しちゃったから…ごめんね」

と、私は顔を伏せてポツリと呟く。
「…ああ、別に怒ってなんか無いからさ。その…気にするなって」

そう言って圭一くんが微笑みながら頭を撫でてくれる。

「でも…レナ…」
「もう良いって…。俺はレナの笑ってる顔が好きなんだ。
なっ?お願いだよ、そんな顔するなって」

私を抱き締めて、背中を擦ってくれながら優しい言葉を掛けてくれて…感きわまって泣いてしまいそうになる。
圭一くんは私の笑顔が好きだって言ってくれた。泣いたら駄目だ私。
でも今だけは良い…よね?
私は雛見沢に戻って来た時に決めた。
『絶対泣かない。負けない』って…。
弱い所なんて見せたく無い…。だから、そう決めたのだ。
けど、圭一くんの前でなら良いよね?弱い部分を見せても。

「ぐすっ…」

私は圭一くんの胸元に顔を埋めて背中に手を回す。

「よしっ!ほら、もう遅いしさ。家まで送って行くよ」

あの後、圭一くんは泣きじゃくる私をあやしてくれた。
暖くて、力強かった…。
こんなに泣いたのは、何年振りだろう?
頭がボーッとして身体が痺れた様な感覚。力が入らないとも言うかも知れない。

「…」

圭一くんに返事をするのをためらってしまう。
せっかく仲直りできたのに、もう帰るだなんて嫌。
もっと触れ合いたい。甘えて、甘やかされて…又、甘えさせてあげたい。
圭一くんと一緒に居たい。
だから、その言葉が自然と出てしまった。

「……だ」
「ん、何て?」

圭一くんが私の髪を横に掻き上げて、顔を覗きこむ。

「…嫌だ……帰りたくない…」

私は圭一くんの寝間着をギュッと握って口を開く。

「…圭一くんと居たい…。我儘だって分かっているけど…一緒に居たいな」



<続く>
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最終更新:2023年06月10日 08:31