詩音が風邪をひいた。まぁ大方詩音のことだから、また風呂上がりに薄着のまま雑誌でも読んでいたんだろう。
私が詩音の看病をするためにマンションにいったら先客がいた。葛西さんだ。
葛西さんは買い物にいけない詩音のかわりに数日分の買い物を済ませてくれていたらしい。
見た目はっきりその道の人である葛西さんがスーパーで買い物とか笑える話だ。私は葛西さんに礼を告げ、後は私が詩音を見ると言って葛西さんを隣室に帰した。
日常の詩音のお守りに加えて病人の世話なんて彼が可哀想すぎる。たまにはゆっくりしてほしい。

詩音の部屋に入ってみるとそこは異常に熱かった。ふとベッドを見ると詩音が頭までスッポリ毛布を被っていた。相当寒いんだろう。
とりあえず詩音は寝かせておいて私は葛西さんが買っておいてくれた食材をいくつか拝借して、詩音にお粥でも作ることにした。
お粥はすぐにできたし、味も完璧。少し冷ましてから詩音の部屋に持っていってやることにした。今日はバイトもないから詩音の具合が悪いなら泊まっていってあげようかな、なんて考えていたらなんだか不謹慎ながら楽しくなってきた。
だって詩音がルチーアに行って私が雛見沢に行ってから全然一緒に寝たりしてなかったから。寂しくないと言ったら嘘になる。だけど私が『魅音』だから昔みたいに詩音に甘えちゃいけないと思ってた。
詩音はいつも私をからかって遊ぶけど、時折みせる姉の表情に私は『魅音』を捨てて『詩音』に戻りたい衝動に駆られる。私にとって詩音はやっぱり「お姉ちゃん」なんだ。

お粥を持って行くために再び詩音の部屋に行く。寝ている詩音を起こすのは気が引けるが何か食べないと身体に悪い。
「ね、詩音。起きてよ。寝てばっかじゃ身体に悪いよ。ほら、私お粥作ったから食べよ、ね?」
ベッドの中から詩音が出てきた。顔が真っ赤だ。熱が相当あるに違いない。
「詩音。顔真っ赤。ちょっとおでこ貸して」
「おねぇ~、頭めっちゃくっちゃ痛いんですよ。こりゃ~相当重いの貰っちゃいましたね。」
詩音はいつも通り笑って軽口を言うがとても辛そうだ。案の定詩音のおでこはとても熱かった。
意識も朦朧としているらしい。目の焦点が定まっていない。
それに…こんな暑い部屋で毛布なんかスッポリ被っていたら汗をかくのも当然で、詩音の身体は汗まみれだった。
こんな汗だくのパジャマをずっと着ていたら治るものも治らない。私は最初に服を替えて汗を拭いてやろうと思った。
「詩音~?大丈夫?あんた汗だく。こんなんじゃ余計風邪悪化させるだけだって、ほら着替えるから脱いで。」
「大丈夫ですって~。おねぇ~、これくらい自分でやれますよ。あはは。」
詩音。あんた手に持ってんのタオルじゃなくて、リモコンだよ。一生汗拭けないってば。
言葉とは裏腹に頭は相当参ってるらしい。
「ほらっ詩音!こっちきてってば!服脱いでってば!」
暴れる詩音を押さえつけてボタンを開けていく。暴れるといっても全然力が入ってないので脱がせるのも容易だった。
「ちょっ!お姉。そんなに押さえつけないでください。痛いです。あれ?顔赤いですよ?実の妹の裸見て興奮してます?やだなぁ。同じ身体なのに。」
確かに言われて見ると双子だから同じ身体なのかもしれないけど…なんというかその、詩音の身体には色気がある。
今だってそう。普段と違って熱を帯びた身体や、鎖骨にうっすらと流れる汗。
それら一つ一つが私を惑わせる。
ナルシストってわけじゃない。双子っていっても『魅音』は『魅音』で『詩音』は『詩音』なんだから。
本能が打ち勝ってこのまま詩音を押し倒してしまうかもしれない。私の倫理観が負けないうちに早く服を着せてしまおう。
「お姉?お姉ってば。何ぼんやりしてるんです?人を半裸に剥いたまんまで…
拭いてくれるんならちゃっちゃとやってくださいよ」
詩音が何か言ってる。ダメだ。何か頭がぽーっとして上手く働かない。
クールになれ!園崎魅音!たかだか詩音の裸ごときでこんなに興奮してどうする!

「おねぇ~、寒いですってばぁ~、病人ほったらかしにしないでくださいよ。寒いんでくっついちゃいます☆嫌だったら早くそのタオルと服よこしてください」
う、うわ。背中に何か当たってる。詩音の胸だ。え、なになに?詩音の身体ってこんな柔らかかった!?
そのまま詩音がよろけて後ろに倒れる。事故とはいえ詩音を押し倒す形になってしまった。
「私が下になった方がお姉拭きやすいでしょ?普段と逆ですが、そこは大目に見て下さい。風邪治ったらガンガン攻めちゃいます☆」
「う、うるさいなぁ!今拭いてあげるから少し待ってなよ!」
「たまには下もいいですね。お姉。攻めなお姉もなかなかいいです。」
なんてやりとりをしながら詩音の身体を拭いて服を着させる。

冷めてしまったお粥を温め直して詩音に食べさせているときふと思った。
こいつ明らかに誘ってた。そこで私は確信する。私の妹は存在が私を惑わせる。こいつがいる限り私は詩音から離れられない。
やっぱり私は詩音に勝てないや…。あはは。

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最終更新:2008年05月08日 23:06