「……やれやれ。どうせこうなるとは思ってたけど、まさかこんなに早いとはね。
もう少し体面とか周りの人間の感情とか考慮してほしいものだわね……」
「あはははは、でも、おめでたい事だからいいんじゃないかな? かな?」
「そうでございますわ! 私はむしろこうなるのが遅すぎだと思ってるくらいでしてよー!」
「……そうは言ってもね。いろんな事情を知ってる身としてはいまひとつ腑に落ちないのよね。」
「……ね、ねえねえ羽入さん? ここ数年で梨花は一気にやさぐれてしまったと思うのですけど……
何でこうなってしまったのか心当たりはございませんの?」
「あぅあぅあぅ、元々梨花はこんなねじくれた性格じゃなかったのですよ。
僕のためにシュークリームをわざわざ大人の人に頼んでくれるような、そんなやさし~い子だったのですよ!
年月の流れは残酷です…… こんな梨花、喜んでいるのは岡村くらいしかいないのですよ。
マゾっ子気質なのです、あぅあぅ」
「……ちょっと羽入。勝手なこと言わないでほしいわね。
あのね、さすがに身体のほうもこんな年になって猫被るほど私は図太くないわよ」
「あぅあぅあぅ、別にいいじゃありませんか。赤坂や雪絵の前じゃ未だに……むぐ」
「……は~にゅ~う~? 覚悟は出来ているんでしょうね。
……今日から一ヶ月間タイ料理フルコースよ」
「あぅあぅあぅあぅあぅあぅ!! ひどいのです、ひどいのです!」
「ま、まあまあ梨花ちゃん、その程度にしておいたほうがいいんじゃないか?
ほら、もうすぐ始まるぞ?」
「その言葉、そっくりそのまま圭一に返すわよ。
全く、あなたも一人者の心情を慮る余裕くらい作って頂戴。いいかげん、あなた達のほうも収まるところに収まったほうがいいんじゃないの?
……それに、ほんとそろそろ手伝いに行ったほうがいいわよ。魅音ひとりじゃ大変だろうし、あなたのスピーチもあるんだから」
「圭一君のスピーチか……はう。楽しみだね!
でも、もう何年も部活していないわけだし、大丈夫? レナも手伝えることがあるなら協力するよ?」
「ほざけ! 口先の魔術師は健在なんだぜー?
ふふふ、見てろよ! 男・前原圭一、一世一代の感動の演説をしてくれるわ!」
「あぅあぅあぅ、圭一は未だにアジをそこらでやってるから問題ないのですよ。
おかげで園崎系の店はどこもかしこも大繁盛なのです。」
「は、羽入……ネタ晴らしすんなって。……ん?」

「け、圭ちゃ~ん! 何油売ってんの~! もう時間ないよ~!」
「あ、魅ぃちゃんだ! ね、圭一くん。もう行ってきたほうがいいんじゃないかな? かな?」
「よっしゃ! んじゃ、行って来させてもらうぜ!また後でな!
魅音、二人でがんばろうぜ!」
「……いちゃつくのは程ほどにしときなさい。今日の主役はあなたたちじゃないんだから。」
「わ、わーってるって……」

「……しかし。繰り返しになりますけど、ほんと感慨深いですわー……」
「それにしても意外だったわよ。まさかこんな事に沙都子が文句ひとつ言わないなんてね。」
「……べ、別に変じゃありませんわよ。あの二人はどちらも私にとってかけがえのない家族ですもの。
幸せになってもらいたいのは当然の事ですわ!」
「……変われば変わるものね。あの2つの世界のときとは大違い。」
「……世界? 何の事ですの?」
「気にしないほうがいいわよ。深い意味は無いし。
今が幸せならそれでいいでしょう?」
「??? ……まあ、別に構いませんけど。いずれにせよ、そろそろ……」
「あ! 出てきたよ、二人とも!」
「ど、どこどこ? どこですのー!?」

「……綺麗、ですわね。」
「はう~……うらやましいな! れれれ、レナもいつか……はう~!!」
「……学生のうちにこんなことするのはどうかと思うんだけどね。」
「梨花が地団太踏みたいのを我慢してるのです、あぅあぅあぅ!
それはともかく、素直に祝福するべきなのです!」
「……わかってるわよ。……あ、圭一たちも出てきたわね。」
「あ~もう、うるさくて圭一さんの声が聞き取れませんわ~!!」
「こっち、こっちにくればよく聞こえるんじゃないかな? かな?」
「ちょ、ちょっと待ってくださいまし~!」
「あぅあぅ、行くのですよ、梨花!」
「はいはい。行けばいいんでしょ、行けば。」



『……それではかつて俺の席に座っていた、いわばもう一人の俺である北条悟史と!』
『双子の片割れ、もう一人の私、園崎改め北条詩音に……』
『『乾杯!!』』

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最終更新:2006年12月03日 01:58