前回

SIDE:レナ

私は夢を見ていた。見ているでは無くて『いた』だ。
何でかって?
答えは目が覚めてしまったから…。
私は目を閉じたまま、まどろむ。
夢の内容は圭一くんと私が、ちょっぴりHな事をしちゃう夢。
恥ずかしいから、どんな事をしたかまでは言えないけど、最後は一緒にお昼寝して終り。
良い夢だったな。
と、呟いて
今度はどんな夢が見れるかな?
って想いを馳せて、もう一眠りしようとか考えたり…。
でも、その前に扇風機の風が強過ぎるから弱めよう。
女の子はお腹を冷やしたら駄目なんだよ?
私はゆっくり目を開いていった。

「あ…」

ちりん…。

窓枠に取付けられた風鈴の奏でる音色と共に微風が身体を撫でる。
夢だと思っていた。
そう。さっきの夢の続きを見ているのかと思ってしまった程だ。
圭一くんが寝ていて、私がその横で腕枕をして貰っているのだから。
そして、それが現実であると理解した瞬間、身体がカーッと熱くなっていくのが分かる。
だって目の前10センチ足らずの場所に圭一くんの顔が有るのだから。
昨日までなら、妄想の中でしか有り得なかった夢の様な光景。
やっぱり、まだ夢を見ているのでは無いかと思って、頬を軽く引っ張ってみる。
痛い…。
私の経験則から導き出した答えは、これは間違なく現実である。
という事だった。

「あ、あはは…」

寝起きのカラカラに渇いた喉で小さく笑い声を出してみる。
幸せな自分の状況が信じられなくて。
そして、段々目の奥がチクチクしてくる。
思わず弛んでしまいそうになる涙腺を、何とか堪えて落ち着かせる。
それでも目尻に少しだけ出てしまった涙を指で拭いて、ずっとこのままで居たいと願ってしまう私がいる。
でも、ずっとこのままでは居られない。
どのくらい寝てたのか分からないけど、魅ぃちゃん達がお見舞いに来ると言っていた。
目だけを動かして時計を探す。身体を起こせば良いのに、未練たらしく私はギリギリまで圭一くんの温もりを感じていたかった。
今思えば、ずっと寂しかったのかもしれない。両親が離婚して甘えたい時に甘え足らなかったから。
そしてようやく時計を見つけて時間を見ると二時半。
あと二時間位は皆、来ないだろう。確かでは無いけど、私の勘がそう言っている。
ずっと圭一くんの顔を見ているのも悪く無いけど、私は圭一くんに今しか出来ない事をしたい。
こういう機会はめったに無い。下手したら、この先無いかも知れないのだ。
やらずに後悔するより、やって後悔した方が良い。ちなみに変な意味では無い。
そう。私の想いを、ちゃんと告げたいのだ。
一夏の淡い思い出になるかも知れない。
それでも、今の私が圭一くんに抱いている想いは色褪せたりなんかしない。
私は圭一くんの身体を軽く揺さぶってみた。
すると一瞬だけ目を開けて私の方に寝返りをうって、また寝入る。

「ねぇ。圭一くん起きて?」
「ん…あと一時間」
「だぁ~め!そんなにお昼寝しちゃったら夜寝れなくなっちゃうんだよ。だよ」
「良いよ…寝れなくても良いから…って。あ…」

何とか目を覚ました圭一くんとバッチリ目が合う。

「おはよう…圭一くん。寝坊助さんなんだよ。だよ…」
「お、おはっ…よう…」

圭一くんも顔を真っ赤にしながら挨拶してくれる。

「はぅ…圭一くんお顔が真っ赤なんだよ?どうしたのかな。かな?」
「なっ!そ、そういうレナだって!」
「だって…夢みたいなんだもん」

私は、ゆっくり圭一くんの身体の上と乗りながら続ける。

「さっきも言ったよね?レナは圭一くんの事、大好きだって」

上から覆い被さり、子供に言い聞かせる様に口を開く。

「男の子として圭一くんの事好きなの…圭一くんはレナの事…どう想っているのかな。かな?」
「あ…その、俺もレナの事が好…」

私は人差し指をそっと圭一くんの唇に当てる。

「その先は、ゆっくり考えて答えて欲しいな…」

一呼吸置いて、私は続ける。

「もしかしたら、一時の気の迷いで圭一くんはレナを好きになったと思い込んでるのかも知れないよ?何日掛かっても良いよ。だから、その時に返事して…ねっ?」
「う、うん」

熱に浮かされた様な顔で圭一くんが頷く。

「レナは…こんな形でも圭一くんの身体に触れられて、想いを告げれただけで嬉しいんだよ、だよ。だから夢みたいなの。圭一くんはこんな事、嫌かもだけど、ゴメンね?」
「…嬉しいさ。ちゃんと考えて返事を絶対するから、待っていてくれよ?」
「うん!」

私は、いそいそと身体を圭一くんの横に戻す。
何か卑怯だな、私って。
女の武器を使って誘惑したも同然だ。
それでも自分の気持ちに嘘は付きたくなかった。ああやって覆い被さったのは圭一くんの顔をしっかり見たかったから。
言い訳だと思うなら、好きに言わせておけば良い。
私は圭一くんに抱き付く。

「お、おい。レナ?」
「皆が来るまで、こうしてちゃ駄目かな?」
「お、俺で良ければ!」

二人で抱き合って、何も喋らずにドキドキしながらジッとしていた。

しばらくして、圭一くんの手が私の脇腹に触れる。

「け、圭一くん?」
「あ、いや!わ、悪い!」

偶然。そう偶然なのだ。

そして数分後、今度はお尻に触れられる。
これで確信した。わざと触っていると。
まあ、圭一くんも男の子だから仕方無い。こういう事は好きじゃないけど、今日は特別だ。
それに圭一くんをオカズにしていた私と何が違うというのか、本質は一緒である。ちょっとした罪滅ぼしのつもり。
だから私は圭一くんの身体にピッタリ引っ付いてあげる。抱き枕にしていた様に足を絡ませアソコを股間に押し付けて。

「圭一くんは悪い子なんだよ。だよ」

そして圭一くんの顔を見ながら甘えた声で聞いてみる。

「女の子の身体って柔らかいよね。お母さんとは違う、女の子の身体なんだよ。レナの身体…柔らかくて気持ち良いかな。かな?」
「…凄く柔らかくて、良い匂いがする…」

圭一くんが私の首筋に顔を埋めて鼻を鳴らす。

「はぅ…そんなにスンスンさせたらくすぐったいよ。まるでワンちゃんみたいなんだよ。だよ」

そう言うと調子に乗ったのか、今度は舌を這わせてくる。

「あ…あう…だ、駄目。いっぱい汗かいてるから汚いよ…んぅ」

ピクピクと身体を震わせて、そう言うが圭一くんが私に甘えてくれてると思うと突き放す事が出来ない。
もし圭一くんに尻尾があったらフリフリと嬉しそうに振っている事だろう。
圭一くんに尻尾…かぁぃぃよう。
部活の罰ゲームで紙に書いて箱に入れておこうかな?
でも、出来れば私だけに見せて欲しい。皆には見せて欲しくないな。

「汗かいてるのは御互い様だろ。それより、もっとレナの身体、触って良いか?」
「うん…私も圭一くんに触って貰いたい…かな」

蝉の鳴き声も外の音も耳に入らなくなる。圭一くんの言う事だけに耳を傾けて、二人だけの世界に逃避する。

「んん…」

お尻に置かれていた手が恐る恐るという感じで動き始める。

「…柔らけぇ」

初めは触るだけだったけど、段々と揉みしだかれる様になった。

「んぁ…ん…あ」

圭一くんに触られている。
それだけで私の身体は切なくなってしまう。

「は…圭一…くん。ちょっと待って…」

私は身体を起こして足先にある、タオルケットを取り二人の身体を包み込んだ。

「暑いかもしれないけど、恥ずかしいから…」

そう言って私は再び圭一くんの身体に密着する。

「でも汗だくになっちまうぞ?」
「良いよ…二人で汗だくになっちゃお?」

圭一くんの手を取って私のお尻まで誘導して続ける。

「だから続き…して?」
「おう…」

お尻に圭一くんの手の感触が伝わる。私にとっては痒い所に手が届かない、もどかしい気持ち良さだけど胸の中が温くなる。

「んうっ…んん」

身体がピクピクと震えて嬉しがっている。慣れない手付きで一生懸命、私の身体の事を知ろうとしている圭一くんが可愛いくて仕方無い。

「あ…ん。圭一くんもオットセイも一生懸命なんだよ」

圭一くんが私の太股にオットセイを押し付けてくる。
短パン越しでも分かる位硬い。オットセイが痛いから強く擦り付けられなくて、もどかしそうな顔をしている。

「ごめん。勝手に腰が動いちまうんだよ」

私に欲情してくれているんだ。嬉しい…。
だけど、これ以上はしてあげられないし、させてあげられない。
だって告白の返事待ちなのだ。これより先は、お付き合いしてから。
でも、ここまでなら大丈夫。友達以上恋人未満のギリギリラインだから…。
結局その後も圭一くんも私のお尻を揉む以上の事はしてこなかった。圭一くんも私と同じ事を考えているのだろう、と勝手に解釈しておく。

「は…あ…圭一くん。ん。もう魅ぃちゃん達来ちゃうよ…」

時間も良い頃合だ。私は圭一くんにそろそろ止める様に遠回しに伝える。

「ん…もう、そんな時間か…」

圭一くんが名残惜しそうに私のお尻から手を離す。
私はお尻に食い込んだ下着を直して身体を起こす。そして扇風機の前に座っ涼む。

「ほら、汗拭けよ」

圭一くんがタオルを渡してくれ、私は顔の汗を拭き取る。身体は…ベタベタして気持ち悪いけど圭一くんの前だし・・・ね? 家に帰るまで我慢しよう。

「それにしても暑いな…麦茶でも持って来るよ」
「うん!」

圭一くんが部屋から出て行くのを見届けて、私は下着に触れてみる。

「はぅ…」

そこは水でも被ったのかという位濡れていた。汗だけでは、こうはならない。
圭一くんに悪戯されて嬉しくて身体が過剰に反応したのだろう。

「お家に帰るまで我慢できるかな…?」

と、私は下着から手を離してポツリと呟いた。
まだ胸がドキドキしている。それに身体は疼いて仕方無い、時間にして二時間近く悪戯されていたから仕方無いよね?
むしろ、大好きな圭一くんに身体を触られ続けた後も、平然を装えている自分を褒めてやりたいくらいだ。
こんな感じで、圭一くんに想いを伝える事も出来たし、身体に触れ合う事も出来て私は浮かれている。
今日は帰ったら自分の身体に御褒美を沢山あげよう。
今日位は良いよね?
明日から元通りの『いつものレナ』になりさえすれば良いのだ。
今日だけは『女のレナ』で居たい。
そういう気分なのだ。
私は足を崩して、畳にペタンとお尻を付けて座った。いわゆる女の子座りというやつだ。
やがて圭一くんが麦茶を持って戻って来た。

「ほらよ」

そう言って圭一くんがコップを渡してくれる。

「ありがとう」

私はお礼を言って麦茶を一気に飲み干す。ちょっとはしたないけど、数時間ぶりに摂る水分の魅力には勝てない。

「おおレナ!良い飲みっぷりだな!」
「…ぷはっ!だって喉が渇いてたんだもの」

私はコップを置いて制服のリボンを手で触りながら続ける。

「それに…圭一くんのお手々が気持ち良くてドキドキして身体が熱くなってるの、だから冷やさないとレナおかしくなっちゃうんだよ。だよ」
「あ~…。その、嫌だった、か?」
「ううん。嬉しかったよ。圭一くんがレナの事を可愛いがってくれたから…」

ピンポーン♪

全部言いきらない内に、チャイムが鳴った。

「っと。皆が来たんじゃねぇか?」

私は立ち上がって、窓から外を見た。魅ぃちゃんと梨花ちゃんに羽入ちゃん…。沙都子ちゃんと詩ぃちゃんは居ない。
圭一くんが横に来て皆に向かって口を開く。

「お~い!玄関の鍵は開いてるから上がって来いよ!」

ちょっと残念。まだ圭一くんと二人で居たかった、もっと話したかった。

「あれぇ?圭ちゃん元気そうじゃん!あ、コレ良かったら食べてよ」
「サンキュー魅音。そういや沙都子と詩音は?」

圭一くんが魅ぃちゃんから重箱を受け取って、来ていない二人の事を聞いた。

「みぃ。沙都子と詩ぃは悟史の所に行ったのです」
「だから僕達だけで来たのですよ~!」

圭一くんの質問を梨花ちゃんと羽入ちゃんが答える。

「圭一が居ないから沙都子が寂しそうだったのですよ。だから明日のトラップは激しい物になると思うのです。あぅあぅ!」
「げっ!? マジかよ?明日学校に行きたく無くなって来たぜ…」
「圭ちゃん~!本当に明日、来なかったら知恵先生に今日の事話しちゃうよ。良いのかな~?」

三人がワイワイと楽しそうに冗談を言い合うのを私は横目で見た。
何となく、あの輪の中には入れない。さっきまでの浮かれていた気分が一気に冷めてしまった。
皆と居るのは楽しいけど、圭一くんと一緒に居る楽しさとはベクトルが違うからだ。
圭一くんと二人で居たら、つまらない事でもワクワクして楽しくて、時が経つのが早く感じる。
ここまで考えて私は気付く。
皆が来て、圭一くんとの甘い時間が終わった事にイラついているんだと。
私は馬鹿か?皆は圭一くんの事を心配して来てくれたのだ、それを私は邪魔だと思ってしまった。
なんて自分勝手なのだろう。
こんな事を考えてしまった私を許して欲しい。皆ゴメンね。

「みぃ…レナ。レナ…」
私の制服の袖がクイクイと引っ張られる。
考え事をしている間に梨花ちゃんが私の横に来ていた。

「レナは皆とお話ししないのですか?それに何だか辛そうな顔をしているのですよ?」

私はそんな顔をしていたのか…すぐに笑顔を作って梨花ちゃんに言った。

「梨花ちゃん心配してくれているのかな。大丈夫、レナは何とも無いよ。ちょっと考え事しているだけなんだよ。だよ」

すると、私の頭を梨花ちゃんが撫で始める。

「みぃ…レナは可哀相なのです、圭一とネコさん達みたいにミィーミィーニャンニャン出来なくなって可哀相なのですよ」
「あ、あはは!!何の事かな。かな!?レナはサッパリ分からないよ!」

図星だが、梨花ちゃんが言った事を私は慌てて否定する。
『ミィーミィーニャンニャン』という言葉は、恐らくHな事を意味している筈だと私は解釈した。
梨花ちゃん位の年ならソレを知ってても不思議では無いから、そう考えてしまったのだ。
「くすくすくす…分かりやすい反応。そう。圭一と学校をサボって、そういう事してたのね?」
急に大人びた口調で梨花ちゃんが面白そうな顔をして話し始めた。たまに梨花ちゃんは、こんな話し方になる。
初めは驚いたけど、今では慣れた。と、同時にカマを掛けられていたのだと気付く。

「はぅ…梨花ちゃんは意地悪なんだよ。だよ」

下手に否定し続けたら、皆に脚色して言いかねない。こう見えても結構、狸な所があるのだ梨花ちゃんは。
だから肯定とも取れる様な曖昧な返事を返しておく。事実上の肯定という事だ。
「意地悪? 違うわ。まあ年頃の男と女が一緒に居たら、そうなってしまうのも無理は無いわよ。特に貴女と圭一ならね」
と梨花ちゃんが言ってニヤリと笑う。
「安心しなさいな、皆には言わないから」
「…絶対なんだよ。だよ?」
「…にぱ~☆世の中に絶対なんて事は無いのですよ。だから無理なのです♪」
と言って梨花ちゃんが私から離れて羽入ちゃんの横に行ってしまった。大丈夫だろうか?
ううん。梨花ちゃんなら大丈夫。そんな気がするから信じよう。
何だか梨花ちゃんと話して心が楽になった。
そして私も皆の所に行き会話に参加した。

私は今、家路を急いでいる。あの後、皆で圭一くんの夕飯を作り家を出た。
そろそろ帰って我が家の夕飯を作らないと、お父さんが帰って来てしまう。と言ってもオカズは圭一くんの家で、ついでに作ったからご飯を炊くだけ。
家の前まで着くと、お父さんと鉢合わせした。

「おかえり。お父さん」
「ああ、ただいま礼奈。ちょっと悪いんだけど、お父さん夕飯は要らないからね」
「え?どうしてかな。かな?」
「会社の人が、お父さんの歓迎会を開いてくれるんだ。っと…早く着替えないと迎えが来ちゃうな」
と言って、お父さんは慌だしく家の中に入っていった。
と言う事は、今晩は私一人だけか…。
私は家の中に入り、冷蔵庫の中にオカズを入れる。明日の朝食で食べよう。
一人だけなら適当に何か食べれば良い。
たらこスパでも作って…いや、ナポリタンも良いな。
ナポリタンにしよう。簡単かつ手っ取り早いし。
私はテーブルの上に置いてあったエプロンを付けて調理を始めた。
さて、二十分もするとナポリタンが出来た。椅子に座って黙々と一人寂しく夕飯を食べた後、お風呂を沸かす事にした。
浴槽を洗って水を張りボイラーを点火する。あとは待つだけ。
私は自室に入り、着替えもせずベッドに寝転がる。
お父さんも出掛けたし、これと言ってする事は…有った。
そう。自分への御褒美…どうせ汗をかくならお風呂に入る前にした方が良いだろう。
いや、むしろお風呂で…。以前魅ぃちゃんが言ってた事を試してみようか?
そんな事を考えてたら、また身体の奥が疼いてくる。圭一くんに中途半端に身体を悪戯されて欲求不満気味になっていた。
流石に、あれから何時間も経っているから濡れては無いけど…。

「だ、駄目。せめて、お風呂が沸くまで我慢だよ。だよ」

自分の下腹部を撫でて、自分に言い聞かせる様に呟く。
何かして気を紛らわせよう。
私は本棚から適当に漫画本を取り出してパラパラと斜め読みしてみる。
…駄目だ。ソワソワして集中できない。
仕方無い。まだ温いだろうけど、お風呂に入ろう。身体と髪を洗ってたら丁度良い湯加減になっていると思うし。
私はタンスから下着と寝間着を取り出し部屋を出て風呂場に向かう、制服と下着を脱ぎ脱衣籠の中に放り込んで、浴室の中に入った。

「ふう…」

シャワーを浴びて、私はタオルに石鹸を付けて身体を洗う。
魅ぃちゃんや詩ぃちゃんに比べたら貧相な身体だけど、全体的なバランスは悪く無いと思う。
あの二人は規格外なのだ。むしろ私が年相応の平均的な身体付きなのだから、比べるのは無駄だと分かってはいる。
急にこんな事を考え出したのには理由が有る。
圭一くんは今日ずっとお尻だけ触っていた。男の子だったら真っ先に胸に伸びるのが普通では無いか、私の偏見かも知れないけど…。
もし今日、私と魅ぃちゃんの立場が逆で圭一くんが同じ状況だったら胸を触っている筈。
劣等感を持っている訳では無いけど複雑な気持ちになってくるのだ。
私の胸に魅力が無いと言われている様な気がしたり…。
けど、あれが私達の過剰なスキンシップのギリギリラインだと思う。圭一くんなりに気を使って、胸を触らなかったのかも知れないし。
これ以上考えても堂々巡りになる。考えても無意味だ。
それよりも身体の疼きをどうにかしたい。
私は石鹸を洗い流して髪を洗う。
続いてリンスで髪をトリートメントし、洗顔をしてサッパリとする。
待ちに待った時が来た。
私は床に腰を降ろして胸に手を伸ばす、初めは優しく撫でるだけ。最初から激しくしたら身体がビックリしちゃうから。
それでも気持ち良い。段々と手の平で転がす様な動きになる。

「んぅ…ん」

手の平に乳首が当たって、その度に身体がピクピクと少し震える。

「ふぁ…あ…んくっ…」

親指で乳首をクリクリと転がす頃には、私はすっかり出来上がっていた。
ふと視界の端にリンスのボトルが現われる。
そう言えば圭一くんに首筋を舐められた時、すごく気持ち良かった…。あれを乳首にされたら、もっと気持ち良いのだろうか?
そう思った時には、既にリンスのボトルに手が伸びていた、適量を手の平に出して胸に塗り付ける。

「あっ…あう…」

そして先程と同じ様に手を動かすが、ヌルヌルと滑って捕らえどころが無い。でも、いつもより、ちょっとだけ気持ち良いかも…。

「はあ…んっ!」

そして胸をドキドキさせながら、親指の腹で乳首を弾いてみると凄く気持ち良くて、思わず前屈みになってしまう。
舌の感触とは違うけど、そんな事はどうだって良い。
新しい玩具を買って貰った子供みたいに、色々試してみる。
と言っても、いつもとやる事は同じだけど、どれも気持ち良くて…。

「はあ…っはあ…」

そろそろ一番気持ちの良い事を…私は手を下腹部に持って行こうとして思い出す。
そうだった、魅ぃちゃんが言ってたやり方してみなくちゃ…。
ちなみに女の子だって下ネタで盛り上がる事はある。あれは先週だったか、魅ぃちゃんの部屋で話してて、そういう話題になった時だった。
詳しい内容は省くが、その時にオットセイの汚れの話しと、私が今からする事について話していた訳だ。
ついでに言うなら、件のHな少女漫画も、その時に借りた…いや、半ば強引に貸付けられた。

『レナ読んだら感想聞かせてね~!』
『ですよね~♪』

とか、姉妹揃ってニヤニヤしながら言っていたが、からかわれたのだろう。
まあ、家に帰って何だかんだ言いながら最後まで読んでしまった私も私だが。
ともかく私は、ソレを試す事にしたのである。手を伸ばしてシャワーのホースを掴んで、上手い事シャワーのノズルを壁のステーから外す。
ホースを手繰り寄せてノズルを持って蛇口を捻り水圧を強めに…そしてゆっくり自分の秘部へとあてがってみる。

「っん!」

気持ち良い…事には気持ち良いのだが微妙だ。
魅ぃちゃんは『アレは病み付きになるよ~。おじさん、もう堪んなくてさぁ…くっくっく!』 と言ってたのに…。

「んうっ…!ふっ…!」

これじゃあ生殺しだ、私はクリトリスに指を近付けていく。

「っ!?っああ!」

クリトリスを愛撫しやすい様に、薬指と人差し指で割れ目を広げた瞬間シャワーの湯がクリトリスに当たる。
思わず、ノズルを取り落としてしまう。秘部が強い刺激にヒクヒクと痙攣するのを感じつつ、私は理解した。
『魅ぃちゃんが言ってたのはこういう事か…』 と。
シャワーの蛇口を絞り、勢いを弱める。勢いを調整して再度、挑戦してみる。

「ふあ…あ…あっ!」

今度は丁度良い位の刺激、確かにこれは病み付きになるかも…。手でするのとは違う気持ち良さ、私はシャワーのノズルを更に秘部に近付けて当ててみる。

「あっ!こ、これ凄い…あんっ!」

強い刺激に手が震わせて私は快感の虜になる。

「あふっ!ふぁ!!」

指で秘部を広げるよりも足を開いてシャワーを当てた方が楽だと気付き、浴槽の縁に背を預けて開脚する。

「は…あっ!んぁっ!!あっ!!あっ!!」

強い刺激を与え続けてたら限界なんて、すぐに来てしまう。私は身体を弓なりに逸して絶頂に達した。
全身の筋肉が硬直して徐々に弛緩していくのを感じつつ、夢見心地な気分で呼吸を整える。

「っはあ…はあはあ」

凄かった…。
まだ男の身体も知らないのに、こんなに気持ち良い事を覚えてしまっても良いのだろうか?
しかし女の悲しい性か、身体はまだ満足して無いみたいだ。アソコをヒクつかせて、おねだりしている。

「っんく…あ、あと一回だけ…一回だけなんだよ。だよ…」

生唾を飲み込んで言い訳がましく、あと一回だけなら…と口に出して自分を納得させる。

「あうっ!!あっ!ふぁ!!」

絶頂を迎えたばかりで敏感になった秘部にシャワーを再びあてがう。あまりの快感に、駄々をこねる子供の様に首を左右に振って身を捩る。

「んうっ!!んっ!んあっっ!!」

二度目の絶頂を迎え、間を置かずに三度目…気が狂いそうになる。

「ああっっ!!」

これ以上は頭も身体も馬鹿になってしまう。
私はノズルを手放して、その場に寝転がり何度も大きく深呼吸する。

「はあはあっ…!」

シャワーの水音と私の吐息が浴室に木霊する。ボーッとする頭で湯を出し続けるシャワーを見て呟く。

「魅ぃちゃん…これはやり過ぎだよ」

腰が抜けて起き上がれ無いし、刺激が強過ぎて肝心な本番の時に感じられなくなるでは無いか。
何とか身体を起こして、愛用のファンシーな絵柄な洗面器で浴槽から湯を掬って身体に掛けてシャワーを止める。
いつもと違い何故か自己嫌悪は襲って来ない。
圭一くんに話してしまって開き直ったのだろうか?
そして私はある事に気付いた。そう。換気窓が開き放しな事に…。

「……」

あんな大声を出して外に丸聞こえなのは明らか、しかも艶声。
恥ずかしさで顔が熱くなり、一瞬で血の気が引いていくのが手に取る様に分かる。
例えば明日、近所の人と井戸端会議したとして…。
『あのね…レナちゃん。その…ああいう事は隠れてやるべきだと、おばさんは思うのよね…レナちゃんは若いから持て余すのは分かるんだけど…ね』
とか言われたりして。

「あ…あわわ…」

私は頭がパニックになり洗面器を抱き締めてうろたえる。
身体に力が入らないから立ち上がる事も出来ないのに、無理して動いたため、足を滑らせて浴槽の縁に頭を軽くぶつけてしまった。
ドジっ子ではあるまいし、私は何をしているんだ。心を落ち着かせる為に何とかして湯船に移動した。
ボイラーを止めて熱い湯に浸かって私は悶える。

その後、特に言うべき事は無い。
しいて言うなら近所の人から生暖かい視線を送られるようになったみたいな気がするくらいで…。
それより夏休み前で学校が忙しくて大変だった。
そして夏休み直前に圭一くんから返事が貰えて、私達は付き合い始めた。
どんな返事だったかは私と圭一くんだけの秘密、誰にも教えない。
でも、しっかり想いを伝えてくれて嬉しかった事だけは教えてあげる。
頑張って考えて返事してくれた圭一くんは、かぁぃぃくてお持ち帰りしたい位だった。
私達が付き合い始めた事を知って、魅ぃちゃんは泣いてたけど最後には祝福してくれた。
ゴメンね魅ぃちゃん。そしてありがとう。


<続く>
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最終更新:2023年06月10日 07:00