前回




鬼畜王K1 〜鬼し編・其ノ拾壱〜<純粋>

その55からその60まで収録





  コンスタンスの葡萄酒(さけ)、阿片、ニュイの葡萄酒よりも、私は好む、
  色恋が孔雀の羽をひろげる、きみのその口の霊薬を。
  私の欲望たちが、きみの方へと、隊商(キャラバン)なして出発する時、
  きみの眼は、私の倦怠(アンニュイ)たちが渇きをいやす貯水池だ。

   ボードレール『悪の華(第二版)』「サレド女ハ飽キ足ラズ」より


唾液でぬめる唇と、絡める舌が生み出す二重奏<duo>。
魅音は俺の唇を自らの唇に押さえるように、頭を浮かし、かつ俺の後頭部を両手で引き寄せて貪る。
…レナは舌を絡めるのが上手いが…魅音は肉感的な唇がいい具合だ。
そういえば、授業中に魅音が居眠りした時、レナが似顔絵をノートの切れ端に書いていたな。たしか…「(・3・)」という感じだった。
俺はそれを見て盛大に吹き出したが…なるほど、確かに魅音の唇って「3」っぽいな。
…だめだ。せっかく魅音を抱いてやってるってのに、こんなところで思い出し笑いをするわけにはいかない…!
魅音との長めのキス。時々息継ぎをしながら、俺は魅音の胸に右手を伸ばし、ブラウス越しにゆっくりと一揉みした。
「…ん、ふぅ…!」
魅音の身体がピクリと震える。
まずは弱めの、手の平で行う愛撫。次に、五指を豊満な乳房に埋めるような愛撫。
「んんっ…はぁ」
今度は左手も使い、左右の乳房を同時に掴む。乱暴な掴み方はしない、それが俺のストライクフリーダム、じゃなくてジャスティス。
手の平で乳房の全体をこねるように撫で回してやる。
「はぁ…んぅ…」
大きく掴むように、強弱ある愛撫をすると、「んっ!…はぁ…ん」と、身体を仰け反らせる反応を示した。
さらに。ブラウスの下からチラチラと見え隠れする、見えそうで見えない桃色で小さめの乳首をクリクリと弄ぶ。
「あん!…くぅ…んん…ッ!」
――くく、こんなに弄び甲斐がある胸を持っていやがるとは。
「どうだ、魅音…気持ちいいか」
頭を近付け、耳元でこう囁く。魅音はなんとか息を整えようとしているが、まだ上手く声を出せない。
熱っぽい吐息と潤んだ瞳で俺を見つめるのがせいぜいだった。
唇と唇が触れそうなほどに、俺は顔を寄せる。もちろん、その間も乳房への刺激は忘れない。
魅音は、眉根を寄せて愛撫に耐えているようにも見えた。しかしその瞳は、俺を拒絶するものではなかった。むしろ――
「…はぁ…っん…けい…ちゃ…んっ」
魅音がやっとのことで声を出したと思ったら、いきなりのキス。俺の唇を奪わんとするような、彼女からのささやかな反撃だった。
「…ちゅ…んは…っぷぁ…。…圭ちゃん…」
魅音は啄(ついば)むように俺と唇を重ねる。彼女と唇が触れる度、その熱い吐息が、温い体温が、俺に伝わる。
俺もそれに応えるように、何度も唇を重ねる。――舌を絡めずとも、唾液が混ざり合うまでに。
魅音は両手で俺の顔を両手で優しく包んで固定して、目を薄く開き、また目を閉じたりしていた。
その手は、最初は少しひんやりしていたが、徐々に熱を帯びていくのが分かった。
俺の上唇が魅音の下唇に触れたら、今度は魅音が上唇を俺の下唇に触れる。
魅音の唇をほんの少しだけかぷりと捕まえれば、お返しにと魅音が俺の唇をかぷりと捕まえる。
しばらくそうしていると、魅音が唇だけでは物足りなくなったのか、俺の唇に舌を突き出し始めた。
彼女の求めに、もちろん俺は応じる。唇をゆっくりと押し開き、その中で絡まり合う二つの舌。
それはまるで、ぬらぬらとした唾液をその身に包んだかのような、口内で踊り合う蛇。
その蛇は口の中を出た後も、互いの唇を舐め取り合う。潤滑油のような互いの唾液が、さらに俺たちの唇を瑞々しく彩っていく。
これほど唇によるお互いの愛撫を楽しんだことはないな――俺もまた、魅音の唇に酔っている。
これはこれでいいが――正直なところ、「自分が魅音に押されているな」と思ってしまっていた。
らしくないな…前原圭一。
――二人の唇の間が銀色の糸で繋がるほどに貪りあって、ようやく魅音が攻勢を止めた。
「…圭ちゃん…」
「魅音…」
俺たちは再び見つめ合うと、お互い同時に、ゆっくりとキスをした。
触れ合うだけのキスなのに――身震いするほどのキスだった。
火照った魅音の艶っぽい顔に、どきりとしてしまうほどに。
「…み、魅音」
「…なぁに、圭ちゃん…?」
やんわりとした笑みを見せる魅音。――くっ、なんて顔しやがる。
俺よりたった一つ年上だというのに――こんなにも色気がある『女』に見えるとは。
あせるな、前原圭一。お前がリードしなければ、こいつは俺の『奴隷』に出来んのだぞ!?ペースを握れ!!
…!!?違うッ!!自分で自分のペニスを握ってどうするッ!!『ペース』だバッキャロウ!!
動揺するな、KOOLになれ、前原圭一ッ!!
「…魅音って…キス魔なんだな。意外でびっくりしたぜ…。ふっ」
YATTA!YATTA!わざと語尾にキザっぽく「ふっ」てつけてやったぞコノヤロー!!
どうだ、これでメロメロだろッ!!これで俺のターンだッ!魅音から主導権を…
「…ふふ」
――あ、
「そうだね…。おじさん、ついつい夢中になっちゃった…。…でも、悪いのは圭ちゃんだよ…」
――あれ?
「な…なんで俺が悪」
魅音は自分の唇に、ちょん、と人さし指を乗せて俺を黙らせた。
その指を今度は自分の唇に乗せて、赤ん坊を『シーッ』とあやすような仕草。
それから俺の唇をもう一度人さし指で押さえつつ、魅音は――

「圭ちゃんの唇が、かわいくてプリプリしてるのが悪いんだよ…?
おじさんが食べたくなっちゃうのも仕方無いじゃない…。
本当に美味しいんだから…圭ちゃんは唇まで罪作りなんだね、まったく。めっ」

まるで年下の男の子をからかうかのように、チュっ、と一瞬だけキスをした。

(・3・)アルエー? ←俺の心の中

なんだなんだ、この展開はッ!!?なんだよ、この魅音はッ!!
いきなりキス魔になったかと思ったら、こんなに「萌えるお姉さん」な表情とシチュをやりやがったッ
…魅音は空気を読めない少女趣味の女…そう思っていた時期が俺にもありました。
まさか、この俺が、エリート鬼畜たるこの俺が手玉に取られるような、そんな女だったとはッ!!否、断じて否ッ!!
俺は魅音の股に手をすり込ませる。
「…んんっ!」
突然そこを触られたことで、魅音の身体が畏縮する。懸命に声が出ないように我慢するその表情。
その表情はな、俺の征服欲を更に煽るだけだぜ?
「…くくく、魅音。俺を本気にさせて(性的な意味で)しまったからには覚悟しろよ~?」
「あ…はぁん…ふぁぅ……んふふふ」
――はっ!?
またも『らしくない』魅音がいた。俺の刺激に身悶えつつも、それを楽しむかのように、どこか余裕。
いや、そうされていることに喜んでいるという感じで。
戸惑いが俺の手を止めてしまうと、魅音は「くすっと」笑って――俺の耳元に囁いた。

「…どうして止めちゃうの?…おじさんを堪能するんじゃなかったの…?
…ほらぁ、圭ちゃんの好きにしていいんだよ?…私を、早く食べちゃって…」

(・3・)アルエー? ←俺の心の中

なんじゃあああぁぁぁこりゃああぁぁぁぁぁ!!!!!
と、叫びたいくらい、胸をズキュウウゥゥゥゥゥゥゥと貫かれた。
ま…まずい!魅音は恥ずかしい思いをすることよりも、俺に弄ばれることを心底喜んでリミットブレイクするタイプ!
初めてですよ…ここまで私を萌えさせた魅音さんは…ゆ…許さん…ある意味許せるけど、ぜったいに許さんぞ魅音ッ!!
じわじわとなぶり殺し(性的な意味で)にしてくれる!
俺は左手で魅音の秘部を。右手で乳房全体を存分に刺激してやる。
「ひゃうッ!!…ん、んうぅ、はぁんっ」
魅音の身体がガクガクと震え始める。『女』としての快楽が、魅音に津波の如く押し寄せていた。
「あぁんッ、け、圭ちゃ、あぅんッ!…ちょ、ちょっと…さすがに、は、激しいよぉ…ッ!」
「ほぉ、激しいって?どっちの手が激しいってぇ?」
「んああッ!!…ど、どっちも、だよぉ…ひゃあぅ!」
「クク、魅音が『してくれ』って煽ったんじゃないか?」
「だけ、ど…ふあぁッ!!…い、いきなりだと、おじさんびっくりしちゃう…んんッ」
「じゃあこういうのは?…左手をちょっと強めに、右手は弱めに、これならどうだ!?」
俺は左手を持ち上げるようにしてGスポットへの刺激を開始する。
その瞬間、魅音の首が後ろへ仰け反り、これまで以上に大きく口を開けて嬌声を上げる魅音。
「ああああんッ!!!…だ、駄目ぇっ!!そ、そこをやられると、んんんぁぁッ!!」
「やめるか?…ならば今度は右手の番だ」
Gスポットへの刺激を一時中断し、次は右手で乳首をつまみ上げる。
そのままグイグイと引っ張り上げるだけでなく、クリクリと乳輪も併せて人さし指で撫でる。
「ひあぁッ…!!ち、乳首も、駄目ぇ!!」
「駄目とか言わないでくれよ、魅音…せっかく俺、魅音に気持ち良くなってほしいのに、これじゃ悪いことしてるみたいじゃないか」
「だ、駄目っていうか…あぁん!…あ、あんまり気持ち、良過ぎて…は、恥ずかしいんだってばぁ…!」
「…恥ずかしくなんかないぜ、魅音…。こうやって気持ち良くなってる魅音は、可愛いぜ?…普段以上に女の子らしくて、可愛いな…」
俺は魅音の耳たぶを甘噛みしつつ、息がかかるように囁く。茹で蛸のように魅音の顔が朱に染まる。
「あん…!…み、耳たぶも駄目だよぉ、圭ちゃぁん…」
「…くっくっく!なんだよ、もう全身駄目じゃねぇか、あっはっは!…そう言うなって。さらに気持ち良くなればいいさ」
俺は左手と右手を同時に動かし始める。しかも、今度はどちらも強めに。
左手が魅音の中へじゅぼじゅぼと侵入し、右手は乳房を余すところ無く蹂躙する。
そろそろ一回くらいはイッておこうか、魅音!クックック…!
「ひゃぁぁうッ!!…はぁ…ッ…も、もう駄目、かも…んんぅッ!!」
「もう駄目?そろそろイクんだな、魅音?」
「うぁ…ッう、うん…!おじさん、もぉ…イきそう…ひぁうッ!!」
「いいぜ、そのまま…イってしまえよ、魅音ッ」
「ふぁぁあああッ!!…やぁ、だめ、駄目、イク、イク…んんあああぁぁーーッ!!!」
ビクン、と魅音の身体が激しく痙攣し、顎を天に向け、魅音は頂点に達する。
膣内が急激に締まり、左手は魅音が垂れ流した愛液まみれになった。
喘ぐ息を整え、力が抜けた魅音は、くたりと俺に寄りかかる。
俺はにやりとしながら、魅音に左手を見せる。
「くっくっく…魅音。お前のイキっぷり、すげぇなぁ…こんなに喜んでもらえて、俺も嬉しいぞ」
「…はぁ…はぁ…ん…だって…。…圭ちゃん、だもん…」
「…ん?」
「圭ちゃんだから、こんなに…おじさんも、乱れちゃうんだよ…?」

――やな予感。いやいや、『イヤな』予感じゃなくて、またもや魅音のターンにされそうな、それどころか――

「…圭ちゃんと一緒だもん…圭ちゃんが望むなら…私は…」
そう思ったのも束の間、またも俺の顔が引き寄せられ、唇を奪われる。

――それは情熱的で、儚く、忘れようもないほどのキス。
――魅音の頬に伝う一筋の涙が、さらにそれが俺の気持ちに感傷的な思いを自覚させ――

「…好き…。圭ちゃんのこと、好きだよ。私、大好きなの。…圭ちゃんが…」

『越えて』はならない「一線」を、『超えて』しまった気がした。
魅音と俺だけが、ここにいて――それで世界が満たされてしまうほどに、余計なものが他に無く。
あまりにも純粋で、穏やかな、その魅音の笑顔に、心が溶かされていく。
魅音の優しさ、魅音の慈しみ、魅音の愛情で、俺が俺でなくなっていく――俺の中の『鬼』が見えなくなる感覚。
茫然とした意識を取り戻そうとするが、上手くいかず、もどかしいと思っていたら――

魅音が、不意に俺の頬を拭っていた。
「…あはは。…圭ちゃん、泣いてるの?…男の子でしょ、らしくないなぁ」

涙、だって?――そんなものを、流していたのか?己をコントロールできずに。
「俺…?俺、は…」
「…どうしたの、急にしおらしいなぁ。しっかりしてよ、圭ちゃん…」
「魅音…俺は…お前、を…」
「…ふふ、あはははは。うろたえてる圭ちゃん、かぁいいなぁ~」
まるでお気に入りのぬいぐるみを抱くように、俺を包む魅音の肌。
かすかに、魅音の女らしい、柔らかな薫りがある。
「…しっかりしてよ、圭ちゃん。…これから、私を…抱いてくれるんでしょ?」
芳(かんば)しい吐息はほどよく温っていて、耳は魅音の玲瓏(れいろう)とした声を聴く。

「…圭ちゃんになら、私の全てをあげてもいいよ。…園崎魅音の全部を。
大好きな圭ちゃんだから、いいんだからね。『お気に召すまま』って言ったでしょ?
…だから、ね…圭ちゃん…」

魅音は下半身を俺の物にくっつけ、自らの性器で俺の性器を擦り上げるよう、わずかに身をよじった。

…意識が吹き飛びそうになりながら、俺は魅音と一つに、魅音は俺と一つになった。
お互いの名を叫びながら、歓を尽くす。
もう無我夢中で、何度彼女を貫いたか、何度彼女の中に放ち、何度彼女の身体に精を浴びせたかも分からず。
魅音の嬌声が遥か遠くに感じられるほど、貪るように彼女と交わった。
魅音の処女を奪うとか、そういう次元を超えて、俺という存在が魅音を求め、魅音もまた俺という存在を求める。

純粋な世界――純粋な魅音に奸計を弄する必要など、微塵も無く。
ただ、園崎魅音を欲する前原圭一が、ここにいた。

…精根尽き果て、気が付いた時には、夕暮れだった。
朱に染められた教室に、俺と魅音は二人で倒れ込み、そのまま意識を失っていたらしい。
魅音は息も絶え絶えに、俺を見つめていた。顔には白濁としたものが掛かり、唇の端にも精液が伝う。
胸、腹部にも精の溜まりが出来て、とりわけ秘部からは溢れるほどにそれがあった。
とりわけ魅音の秘裂には、破瓜した時に流れた紅の鮮血と、俺の吐き出した白い精液が、わずかに混じって見えた。
――ここまで、凄惨なまでに女を抱いた経験など、今までに無かった。
あらゆる観念を捨て去り、肉体の限界を目指すような交わりを終え、俺と魅音は言葉も無く抱き合っている。
「…魅音…」
「…圭ちゃ…ん…」
意識を繋ぎ止めながら、肩で息をしながら俺たちは名を呼び合う。
どちらからともなく唇を近付け、ねっとりとしたキスを交わす。

――糸引く二人の唾液までもが、名残を惜しんでいるようだった。


<続く>

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleの プライバシーポリシー利用規約 が適用されます。

最終更新:2008年02月11日 20:41