「わかりました・・・・・・私もレナさんたちと一緒に沙都子を救います」
あの日、綿流しの祭の数日前、私はあの二人と結託した。沙都子を救うために、あの男─北条鉄平を三人で殺害する。
夕暮れのゴミ山で、レナさんと圭ちゃんは私に鉄平の殺害計画を打ち明けた。村の大人たちは沙都子を助けようとはしないらしい。村の筆頭頭首の代行である園崎魅音はあからさまな諦念を携えている。頭首がその気になれば造作もないことであろうこと。しかしながら、その力を使おうとはしない。北条家との確執やダム戦争の過去が関係しているからだ。
下手に動けば村の信頼を失墜させてしまう。そういう類の考えがお姉にそうさせているのだろう。
やはりあいつは自分の仲間より村の目を優先させる卑しい人間なのだ。

そんな中、レナさんと圭ちゃんの計画を聞かされた。八方塞りに陥ったレナさんと圭ちゃんは恐らく最後の手段としてそれに行き着いたのだろう。その計画を頭の中で色々と算段した。
あらゆる可能性を脳内で分析していく。しばしの逡巡の後、私はレナさんたちの計画に同意した。
『詩音、以前、お前は悟史の妹の沙都子を気に留めているって言ってくれたよな。それは俺とレナも同じことだ。だからお前にこのことを話した。色々沙都子を救うために手を尽くしてきたけど、もうこれしかないんだ。詩音、俺たちと一緒に沙都子を救おう』
沙都子のために今まで奔走してきた圭ちゃんの目には悲壮な決意に満ちていたような気がする。
でも、その後ろでたたずんでいたレナさんは静かにじっと私を見つめていた。感情の読めない目で。
私は一旦、本家に戻った。色々と着替えや支度をするためだ。

その日の夜、私は前原屋敷に足を運んだ。聞くと、鉄平を殺すための計画を圭ちゃんの家で練るらしい。
様々な意見と知恵を出し合う。そのほとんどが二人から出されたものだったのだが。
数時間後、私たちは計画の概要を練り終え見直しの作業に入った。
『よし、まず先立って鉄平の行動確認から入っていく。事前に・・・・・・』
私は圭ちゃんの部屋にあった時計を見る。そして圭ちゃんが説明を開始した時だった。
ジリリリリと電子音が階下から鳴り響いた。電話の着信だ。
『悪い、ちょっとでて来る。少し待っといてくれ』
話を中断した圭ちゃんが部屋を離れ、私はレナさんと二人きりになった。
少しの静寂の後にレナさんが口を開いた。
「ねえ詩ぃちゃん・・・・・・圭一くん、誰と話してるんだろうね・・・・・・」
「えっ・・・・・・誰って、今の電話ですか?」
いきなり電話のことを切り出されて私は困惑した。
「そう・・・・・・今の電話」
ただの電話のはずだ・・・・・・なのに何を?
「今の時間ですからね・・・・・・そうですね・・・・・・きっと外出してる圭ちゃんの親御さんからじゃないですか。かわいい息子が一人で留守番してるんですから」
私は気にもかけずにそう答えた。
「そう・・・・・・だったらいいね・・・・・・」
レナさんはうつむき加減で答え、さらに付け加えた。
「レナはね、圭一くんがね、今誰かと繋がってこの計画を暴露しているんじゃないかって思ったの・・・・・・もしかしたらとは思うけど、レナたちを裏切ろうとして・・・・・・」
そんなバカな・・・・・・裏切りだと?
一瞬心臓が大きく高鳴る。
「レナさんそんなの考えすぎですよ。いきなりかかってきた電話でそこまで飛躍した話にまで発展しないですって」
とりあえず計画を立てた本人が裏切ることなどありえない話だ。それ以前に圭ちゃんは沙都子を救おうために私たち以上に尽力していたではないか。
「でもね詩ぃちゃん、埋伏の毒って言葉があるんだよ・・・・・圭一くんがそれを考えていたとしても・・・・・・不思議じゃないんじゃないかな・・・・・・」
「でも・・・・・・」
胸の鼓動がさらに高鳴っていくのを私は感じた。
そのときだった。階下から足音が聞こえ部屋のドアが開いた。
「圭ちゃん・・・・・・」
圭ちゃんはすぐに戻ってきた。こんなにも短い時間の電話ならレナさんは圭ちゃんを疑うことは無いはずだ。安堵感が私を包んだ。
圭ちゃんはそんなこと考える人じゃない・・・・・・
『詩音、魅音からだ。代わってくれだってさ』
・・・・・・お姉から・・・・・・? 
私は部屋を後にし、受話器を取った。
「・・・・・・もしもし、お姉?」
私のお姉からの電話の内容はこうだった。二人は何か隠し事をしてないか、圭ちゃんのうちでこんな時間まで何をしているのか・・・・・・私たちの最近の動向を事細かに聞いてきた。
長々と話していると上にいる二人に怪しまれてしまうかもしれない。
適当な返事で姉をあしらった後に電話を切った。結構時間を食ってしまったようだ。
急ぎ足で二階へ上がった。

部屋のドアの前で立ち止まり、私は深く息を吸った後ドアを開いた。
「ごめんなさい、レナさんに圭ちゃん。お待たせしま・・・・・・」
部屋の空気が私の言葉を止めた。刺されるような空気が私を支配する。部屋を出るときに感じていた雰囲気は跡形も無く消え去っていた。
「ねえ詩ぃちゃん・・・・・・魅ぃちゃんから何の電話だったの?」
そんな不穏な空気の中、レナさんが私に問いかけてきた。
「べっ、別に大それたことじゃないですよ。私が今どこでほっつき歩いているのか、聞いてきただけです。遅くなるんなら連絡ぐらいしろって」
私はかぶりを被った。まさかあいつからの電話程度でこの計画が滞るなんてことは無い。
そんな安易な考えが私にそうさせたのだろう。
「・・・・・・そう。ただの所在確認だったんだね・・・・・・」
レナさんは何か私を試すような口調で静かに言った。
「でも、どうして詩ぃちゃんが圭一くんの家にいるなんてわかったのかな・・・・・・詩ぃちゃんめったに圭一くんの家になんか行かないのに」
私はレナさんから何か禍々しい物を突きつけられているような気がした。
それがただの杞憂であることを望みながら答えた。
「お姉はまず私のアパートに電話を掛けたんですよ。留守だと分かってそれから色々私がいそうな場所を探っていったんですよ。まったくお節介なおね・・・・・・」

『嘘だろ』

圭ちゃんの抑揚の無い声が響いた。突然の圭ちゃんの発言に私は身をこわばらせた。
圭ちゃん、それは一体どういうこと・・・・・・?
『・・・・・・あのな、詩音。魅音はお前が俺の家にいることを一発で感付いていたぜ。何でそれを魅音が知ってたかわからねえが・・・・・・さっき魅音から聞いたから間違いない。詩音・・・・・・なんでお前、今嘘付いたんだよ・・・・・・』
墓穴を掘っていた。レナさんと圭ちゃんを心配させまいと思ってやった行為が裏目に出たのだ。
まさかあいつ・・・・・・圭ちゃんに既に私の行動を話していたのか?
出過ぎた真似をした自分の姉といまさらになって気がついた鈍い自分を恨む。
「ねえ詩ちゃん・・・・・・どうして嘘つくのかな・・・・・・もしかして、魅ぃちゃんと組んでレナ達を裏切ろうとしてたの?」
キッとした鋭い表情が私を襲った。その時のレナさんの目は恐ろしかった。頭首の目、あの鷹のような鋭い突くような目とは種類が根本的に違う・・・・・・レナさんのはそんな目じゃなかった。
冷凍庫でできた氷のようにくぐもった目。冷たくて、もっとおぞましい何かが取り憑いていた。
「・・・・・・っ!・・・・・・っは・・・・・・・・・・・・」
声など出なかった。レナさんの目に魅入られてしまったのだろうか、私の声帯は固まってしまっていた。
瞳を動かして圭ちゃんに助けを求める。でも無駄だった。
圭ちゃんも強い疑心暗鬼の目で私を見つめていたから。
「ねえ詩ぃちゃん、どうして答えないの? 質問は沈黙で返せって学校で習っちゃったのかな?・・・・・・ねえ答えなよ。詩ぃちゃん・・・・・・」
「そ、そんな、違う・・・・・・私は・・・・・・ただ心配・・・・・・かけないように、レナ・・・・・・さんと圭ちゃんに・・・・・・」
私は絞り出すように弁解した。裏切ろうだなんて気持ちを表に出したわけではない。
ただ理解してもらおうと必死になったが、私から出てきた言葉はそれだけだった。
「白々しいんだよ!! 園崎詩音!」
「・・・・・・!!!!」
激しい言葉を突きつけられて、頭を殴られたような感じを覚えた。初め、圭ちゃんから発せられた罵声だと思った。
違っていた。目の前にいる激昂したレナさんから発せられたものだった。
それに気づくのに少し時間がかかった。
恐い・・・・・・体の震えがさっきから止まらない。ここから逃げたい・・・・・・逃げないと私の身が・・・・・・
私は自然と後ずさりをしていた。蛇に睨まれた蛙はこんな心境なのだろうか。自分の本能が逃げることを優先させている。
「・・・・・・え!?」
私の背中が何かにぶつかった。直後、私は自分の後ろにいる何かに拘束された。
背中にぬくもりを感じる。見ると私の両脇からぬっと筋骨の深い腕が出てきていた。圭ちゃんだ。
圭ちゃんが私を捕まえている・・・・・・?
「ちょ、ちょっと圭ちゃん?!な、何を? 離してください!!」
必死になって振りほどこうとしたが相手は男だ。羽交い絞めにされた私は圭ちゃんによって完全に動きを封じられた。
『詩音どうして逃げるんだよ・・・・・・やっぱりお前、俺たちを売ろうとしてたのか?
レナの言うとおりに』
「そうだよ圭一くん。その女はレナ達を謀って裏切ろうとしたんだよ。沙都子ちゃんなんてどうでもいいんだよ・・・・・・村の汚い大人たちとおんなじ・・・・・・」
 沙都子のことを引き合いに出され、私は必死になって答えを探した。
「そんな・・・・・・!違います!私は本気で沙都子を救おうと・・・・・・」
「詩ぃちゃん・・・・・・いまさらだよ、そんなの・・・・・・」
沙都子が心配なのは紛れも無い私の本心の一つ。
「沙都子を救えるなら命だって惜しくない!沙都子は私の大切な・・・・・・仲間だから!・・・・・・だから私を信じてください。レナさんを裏切るなんて毛頭無い・・・・・・!」
沙都子の笑顔が脳裏に浮かんだ。体の震えが止まっていく。
そうだ。これは沙都子のためでもあるのだ・・・・・・
しばしの逡巡の後にレナさんは答えた。
「そう・・・・・・でも言葉だけじゃ何とでも言える」
レナさんはゆっくりと私に近づきながら続けた。
「だからね、詩ぃちゃん。あなたが本当にレナたちを裏切らないか・・・・・・」
目の前に来た。
「詩ぃちゃんを・・・・・・尋問させてもらうよ」
あのおぞましい目が私の数センチ前まで近づいていた。私はまたもやレナさんの目に魅入られた。
覚悟を決めて私はゆっくりとうなずいた。
「大丈夫・・・・・・痛くなんかしないから・・・・・圭一くん。圭一くんも手伝って・・・・・・」
痛くなんかしない・・・・・・
その言葉が脳裏にこびりついた。私の体の自由を奪ったまま圭ちゃんは言った。
『詩音、お前の疑いを晴らすための尋問だ・・・・・・悪く思うなよ』
えっ?何なの・・・・・・尋問?尋問て何を私に・・・・・・?
私の頭の中で様々な事が渦巻いていく・・・・・・でもみんなを救うためだ。どんな尋問でも今、私にかけられた疑いの念を晴らす・・・・・・最初はそんな気持ちが私の中にあった。
いったん圭ちゃんが私から離れた。圭ちゃんは部屋に備え付けられた棚の中から何かを
探しているようだった。
ガチャガチャと棚を引っ掻き回す圭ちゃん。
『確かこの辺に・・・・・・あった』
圭ちゃんが取り出したものは二組のはちまきのような細長い布だった。
「圭ちゃん・・・・・・それで何を?」
圭ちゃんではなくて、レナさんが横から答えた。
「今から詩ぃちゃんに目隠しと両手の拘束をさせてもらう・・・・・・尋問をしやすくするためにね」
目隠し・・・・・・?拘束? そんなものが今から必要なのか? ・・・・・・私は今から何をされるのだ?
そう考えている間に私の視界は奪われた。直後に後ろ手を縛られていく。暗闇に晒されて、私の息遣いや鼓動がはっきりと聞こえてくるようになった。視覚が奪われた分、他の感覚が鋭利になったのだろう。
レナさんの声がふいに目の前から聞こえた。
「いい? じゃあ、始めるよ」
目の前にレナさんの気配。恐らく私と向かい合う形になったのだろう。
息を呑んでレナさんの言う『尋問』に備えた。
「まず、詩ぃちゃんは魅ぃちゃんと繫っているの?」
「・・・・・・いいえ。そんなことは絶対ありません」
視界を奪われつつも、レナさんの質問に私は潔白を持って素直に答えた。質問の内容の大半は私が裏切り工作を行っていないかについてだった。しかしながら・・・・・・今までのレナさんからの問いかけはただの質問だ。【尋問】と聞かされていたので私は少し拍子抜けしてしまっていた。
「そう・・・・・・詩ぃちゃん。レナたちを裏切ったりはしてないんだね」
「当たり前です。そんなバカげたことをするわけないじゃないですか」
良かった・・・・・・この調子なら身の潔白はすぐに証明できそう・・・・・・こんなのなら目隠しも拘束も必要なかったのに・・・・・・
私が胸を撫で下ろした、その瞬間だった。
「んん!!? ちょっと・・・・・・レ、レナ・・・・・・さん! な、何を・・・・・・」
私の胸がいきなりぎゅうっと鷲摑みにされていた。視界を奪われていたので、完全に虚を突かれた。
レナさんに届いたのではないか思うほど心臓が高鳴った。まるで心臓を直に掴まれたのではないかと感じたぐらいだ。
「ねえ詩ぃちゃん・・・・・・詩ぃちゃんおっぱい大きいよね・・・・・・魅ぃちゃんとどっちがおっぱい大きいの?」
「んくっ・・・・・・!レ、ナさん? ・・・・・・いきなり何を・・・・・・?」
レナさんの急な行為に思わずたじろぐ。自分の胸の形が変わるほど掴んでいるだろうレナさんの手を振りほどこうと
試みるが、両手が使えずただ弱々しく体を揺り動かすことしかできない。
「どっちがおっぱい大きいの?」
「うぅぅ・・・・・・そ、そんなのわかりっこないです・・・・・・は、離して・・・・・・」
掴む力を強めたレナさんに言う。掴まれた私の胸から痛痒いような感覚が全身に送られてきた。
『ちぇ、分からないのかよ。どっちがでかいか、知りたかったんだけどな・・・・・・』
私の側面の方向から圭ちゃんの声が聞こえた。
そんな・・・・・・圭ちゃんがそんなデリカシーのないことを言うなんて・・・・・・
確かに私は胸が他人よりも大きいという自負はあった。やはり私たち姉妹は巨乳であると見られていたのか・・・・・・改めてそういう目で他人から見られていたことを私は認識した。
「ふーん、分かんないんだ・・・・・・二人の胸のサイズが分かれば、もし詩ぃちゃんと魅ぃちゃんが入れ替わっても見抜けると思ったんだけどなあ・・・・・・」
入れ替わる・・・・・・まさか・・・・・・?
「詩ぃちゃんたち双子が入れ替わってレナたちに近づいて来たとしたら、正直区別付かないしね・・・・・・詩ぃちゃんが魅ぃちゃんと組んでたら絶対入れ替わりを使ってレナたちに近づいてくるはずだもの」
まさか、レナさんは既に私が組んでいると考えているのか・・・・・・? 違う!そんなこと考えるはずは無い!
私たち姉妹はそもそも、それほど仲は良くなかった。以前の私の言動からレナさんたちだってその事を知っているはずだ。心の通じないような姉妹が入れ替わり起こそうなんて普通の人なら考えない。
「だからね詩ぃちゃん、もし詩ぃちゃんが入れ替わったとしてもそれが見抜けるようにする。詩ぃちゃんの体を今から覚えさせてもらうからね・・・・・・」
目隠しを隔てた向こう側でレナさんが厭らしく笑ったような気がした。
「おっぱいのサイズは判らないって言ったから・・・・・・どうしようかなあ」
「・・・・・・んんぁ!!」
今度は逆のほうの胸を掴まれ思わず声が漏れる。視界を奪われているため、レナさんの行動が全く予測できない。心臓が激しく脈打ち、とどまろうとしない。
「ふふっ、どうしたの・・・・・・?・・・・・・じゃあ、まず、においからいこうかな・・・・・・」
えっ・・・・・・今なんて・・・・・・?
「んっ?!な、何してるんですか!レナさん!?」
私の二の腕と体の間に何かバレーボール大の何かがぞわっと入り込んできた。さらさらっとした髪の毛の感触とわずかな頭髪のにおいを覚え、それがレナさんの頭だとわかった。
「わからない?今から・・・・・・詩ぃちゃんのにおいを覚えるの・・・・・・詩ぃちゃんの腋のね」
嘘でしょ・・・・・・私の・・・・・・腋の? 
信じられないレナさんの行動に思考が止まりそうになる。
「あれ・・・・・・詩ぃちゃん、セーターのところに染みが出来てるよ・・・・・・どうしたの・・・・・・そんなに緊張しなくてもいいのに」
着ていたサマーセーターの裾にできた汗染みを指摘され、私の頬がみるみる上気していくのがわかる。極度の緊張がそれを形作ったのだろう。
「レ、レナさん! ・・・・・・そんなところを・・・・・・やめてくださ、んんくぅっ!!」
「はぁ・・・・・・すごい、誌ぃちゃんの・・・・・・はあぁ・・・・・・においがする・・・・・・くぅぅん」
躊躇無くレナさんは私の・・・・・・腋を嗅ぎだした。何度もくんくんと鼻を鳴らすような声が聞こえてくる。こんな姿をそばにいる圭ちゃんはどう思ってるんだろう。その行為に私の耳が真っ赤になっていくのが分かる。
「んん!!・・・・・・レナさん、そんなの・・・・・・駄目だから・・・・・・ぅううん!!!」
信じられないことだったが、さらにレナさんはついに私の腋に顔を押し付けて直接嗅ぎ始めた。
同時にそこからじわっとした感じがあった。レナさんは私の汗染みのところを直接、唇と舌で舐め取り始めていたからだ。まるで発情した犬のような荒い息遣いとレナさんの生暖かい唾液が私の腋から感じられた。目隠しをされているためその息遣いがより鮮明に聞こえてくる。
「い、いやぁぁあ・・・・・・もう・・・・・・あう・・・止め・・・て・・・・・・っくうう!!」
自分の腋という部分が自分とそう年端の変わらない少女に責められている。非現実的でインモラルな光景が私の脳裏で再生されていった。
『なんかすげえことになってんな・・・・・・どうだよレナ、詩音のにおいと味とやらは?』
事を静観していた圭ちゃんは私が知りたくも無い様なことをレナさんに聞いてきた・・・・・・
その言葉に触発されたのか、レナさんは私への責め苦をようやく止めて圭ちゃんの問いかけに答えた。
「詩ぃちゃんのはね・・・・・・なんか少しだけ濃い気がする。私たちよりも。でも、ちょっとだけ香水っぽい香りがした。・・・・・・そうだね・・・・・・これは多分、ウッディ系の香木の香り。詩ぃちゃんは都会の興宮に住んでるからちょっと意識してるのかも」
当たりだった。このとき私は香水を付けていた。種類まで当てられるとは・・・・・・
このレナという少女はいったい何なのだ? 初めて出会った頃は純情そうな少女としか認識していなかった。しかし時間が経つにつれ、ときおり見せる何者も圧倒するような冷たい瞳と年下とは思えないほどの鋭い観察力は形容しがたいほどの強列な印象を刻み付けてくる。
やっと解放された私は鼓動を抑えようと深呼吸を繰り返す。
これで・・・・・・終わるのか・・・・・・?
「まだだよ。詩ぃちゃん」
私の考えを見透かしたようにレナさんの声が飛んできた。
「こんなんで終わるなんて虫が良すぎるよ、詩ぃちゃん。もっと覚えさせてもらうよ・・・・・・詩ぃちゃんの体」
まだ足りないの? 次はどこを・・・・・・責められるの?
「つ、次は何を・・・・・・ひゃあん!?」
「あはは、どうしたの詩ぃちゃん? ちょっと詩ぃちゃんの膝を触っただけなのに・・・・・・」
今度は頬を触られた。目隠しをされているためどこを触られようとしているのかまったくわからない。そのため急に体を触れられてしまうと、その度に体がぴくりと反応してしまうのだ。さらに先の責めで敏感になった私の触覚がそれに拍車を掛けていた。
「すっごーい! 詩ぃちゃん触られただけでお魚さんみたいにビクンビクンしてるよ。圭一くんも触ってみてごらん」
『本当だ・・・・・・なんか全身性感帯て感じだな』
まるで新しいおもちゃに戯れるかのように二人は私の体をもてあそんだ。
「ちょっ、ちょっと、やだ! ふ、ふざけないでください」
着ている服から柔肌が露出した部分。太ももを肘を手の甲をうなじを唇を触られる。
目隠しというものはこうも体を敏感にしてしまうものなのか。触れられるたびに私は無様に体をくねらせた。
「ふふふ・・・・・・じゃあおふざけもこれくらいにしといて・・・・・・」
「・・・・・・!?駄目です!!そ、そこは・・・・・・!!」
ついにというか予想通りというか・・・・・・レナさんはスカートの中に探りを入れてきた。
「んんん!!そんなとこ・・・・・・触っちゃ・・・・・・だめ・・・・・・」
私は自由の利く両足に力を込めレナさんの侵入を防ごうとした。
「ちょっと詩ぃちゃん、力抜いて・・・・・・そう・・・・・・どうしても嫌なんだ・・・・・・圭一くん!」
レナさんが圭ちゃんを呼んだ。
「詩ぃちゃんの足、開かせて」
『ああ、わかった』
圭ちゃんの気配が私の後ろに感じられた。回り込まれたようだ。
「!?圭ちゃん!!!嫌だ!離してください!!」
両足の膝のところに圭ちゃんの腕が回され、そのまま両足を担ぎ上げられた。もちろんそれに抗おうとしたが、所詮、男と女、そして私の両手は縛られている。敵うはずも無かった。
そのまま秘所を晒された。私の中で羞恥心が波となって押し寄せてきた。頭のてっぺんから足の指先までジンジンするような熱い血の流れを感じる。無意識に私の体が熱くそして息も荒くなっていく。
「くすくす、いい格好だね、詩ぃちゃん。丸見えだよ・・・・・・緑色のパンツかあ、ちょっと予想外だったな」
視界の無い私に教えるようにレナさんは私に言った。自分の下着の色まで暴露されるという恥辱が私の心を襲う。
後ろにいる圭ちゃんにも聞こえたはずだ。私の動きを封じている圭ちゃんから少し荒くてぬるい吐息を感じる。首筋にわずかにかかりくすぐったい。
そしてまたレナさんの責めが始まった。
「ぅぅうん!!レ・・・・・・ナ、ん、んん!そんな・・・・・・汚い・・・・・・ところ」
「すううう・・・・・・はあぁ・・・・・・いいよ、詩ぃちゃん。一層においが濃くなって・・・・・・すううう」
私のパンツ越しに大きな温かい塊が押し付けられている。レナさんの顔だというのは言うまでも無い。レナさんはさらに私のにおいを覚えようと秘所に顔をうずめているのだ。
レナさんの息と押し付けている鼻の感触が感じられてじわじわと下半身が熱く湿っていく。
「あれ・・・・・・詩ぃちゃん。なんかこっちも染みが出てきたよ・・・・・・これはなんなのかな?」
・・・・・嘘! 染みが出来るまで感じちゃっていたのか・・・・・・? こんな状況で?
「そんな・・・・・・じょ、冗談・・・・・・そ、れはレナ・・・・・・さんの、唾じゃあ・・・・・・?」
「違うよ。レナの唾じゃない。詩ぃちゃんから出てきたんだよ・・・・・・確かめてみる?」
確かめるという真意を読み取れずに困惑していた私に、さらなる辱めが襲う。
自分の腰にレナさんの両手がかかるとそのまま私のパンツを脱がしにかかったからだ。
「だ、だめ!!レ、レナさん・・・・・・!!」
抵抗しようとするも両手は縛られ、足の自由は利かない。するりとパンツを抜かれ直接秘所を晒されてしまう。
さらなる責めが行われると予感し、目隠しをされているにも関わらずぎゅっと目をつむる。
「・・・・・・・・・・・・・・・」
しかし、誰の声もしなかった。ただ鼻で必死に何かをすんっと吸っているような音だけが私の暗闇の中で聞こえていた。
何をしているのだろう・・・・・・?
「詩ぃちゃんのパンツ・・・・・・すごい、いいにおい・・・・・・特に染みの部分から強くにおってきて・・・・・・」
ま・・・・・・さか・・・・・・
「レ・・・・・・ナさん?何をいったい・・・・・・?」
「うふふ・・・・・・詩ぃちゃんの生パンのにおい嗅いでるんだよ・・・・・・はぁぁ・・・・・・いい・・・・・・」
「嘘、でしょ・・・・・・なんて・・・・・・・・・・・・」
自分の履いていたパンツを嗅がれるという変態的な行為を私の目の前でやられた。しかも女の子に・・・・・・
「ほら・・・・・・これが詩ぃちゃんの出した染みだよ・・・・・・て言っても見えないか・・・・・・圭一くん見えるでしょ?」
「ああ。本当だな・・・・・・薄緑のパンツが染みの部分だけ濃くなってるぜ・・・・・・詩音」
・・・・・・私はこんな異常な下で感じてしまっていたのか・・・・・・?
「ほら詩ぃちゃん。これだけ近づければわかる? 見える? ・・・・・・ねえ詩ぃちゃん!」
そう言うとレナさんは私の顔に私の脱いだパンツを押し付けてきた。
「んんん! やだ! やめてください!!」
無理やり押し付けられる生暖かいそれに対して、私は顔を捻って遠ざけることしかできない。
レナさんは私の唇や鼻腔の中にそれを無理に押し込もうとする。私への行為に満足したのか、レナさんが笑いながらつぶやいた。
「ふふふふ・・・・・・これで詩ぃちゃんにも分かってもらえたよね・・・・・・じゃあ今度は・・・・・・」
私の秘所にレナさんの指が触れた。慣れることができず、また体を震わせてしまう。そんなことに構うことなくレナさんの指に力が入り、私の秘所をぐっと押し広げてきた。
「びしょびしょだよ・・・・・・詩ぃちゃん。ただ尋問してるだけなのに感じちゃったのかな・・・・・・」
レナさんの嘲笑めいた声が聞こえてきた。
「ここの味も確かめないとね・・・・・・最後に」
「はぁ・・・・・・はぁ、レナ・・・・・・さん・・・・・・やめ・・・・・・!!んはぁぁああぁん!!」
押し広げられた秘所にレナさんの下が躊躇無く進入してきた。生温く蠢くような舌使いに私の秘所はアイスのようにとろけていく。
「んはぁ・・・・・・すごい・・・・・・もっと味が濃いのが出てきてる・・・・・・ん、ん、ん!」
「いや!! 止めて・・・・・・動かしちゃ・・・・・・ぁぁあん・・・・・・レナ・・・・・・さ・・・・・・!!」
私と変わらないぐらい息の荒いレナさんは首を上下させている。ピストン運動のようにして舌を私の膣内に押し込んできた。まだ十代半ばの少女から受ける信じられないような激しい愛撫に私の脳は霞掛かったように麻痺していく。
「もっと・・・・・・もっとだよ詩ぃちゃん・・・・・・!もっと詩ぃちゃんを・・・・・・覚えるから・・・・・・!」
私の様子など歯牙にも掛けずに私を犯していく。暗闇と拘束に縛られた世界でぬらぬらした舌肉と膣内がこすれ合う音が濃密に耳を犯してくる。
・・・・・・あ、熱い。体の奥底から何もかも溶けてしまいそう・・・・・・
「・・・・・・ふう・・・・・・はぁ・・・・・・そうだ・・・・・・圭一くん」
レナさんが圭ちゃんを呼んだ。悪魔がささやく様な声で。
何かされるんだ・・・・・・圭ちゃんからも・・・・・・
「この際、圭一くんも・・・・・・何か詩ぃちゃんの身体を覚えなよ・・・・・・」
一瞬、圭ちゃんが考え込んだ後、
『・・・・・・そうだな・・・・・・悪いが詩音、そうさせてもらうぜ・・・・・・お前のためだからな・・・・・・』
でも、これ以上何を・・・・・・もやのかかった頭でそう思ったときだった。
「はぁん!! 圭・・・・・・ちゃん・・・・・まで、そんな・・・・・・んんん!!」
圭ちゃんは私を後ろから拘束したまま・・・・・・私の後頭部に顔を押し付けてきた・・・・・・
私の耳から荒い圭ちゃんの呼吸音が聞こえる。
『すうん・・・・・・はああ・・・・・・詩音の・・・・・・髪の毛、いいにおいするんだな・・・・・・はあ、はぁ』
圭ちゃんまでにおいを・・・・・・しかも私の頭と髪の・・・・・・
私の出した汗と脂の入り混じった髪のにおいを必死になって圭ちゃんは貪っていた。好意を持った異性からの異常な行為に晒さたのだ。私のうなじから背中にかけてぞわっと総毛立って行くのがわかる。
「んはぁぁぁああ!! 圭ちゃ・・・・・・くふぅぅうん!・・・・・・レ・・・・・・ナ、さん・・・・・・あぁあ!」
「すごい・・・・・・また詩ぃちゃんの味とにおいが濃くなったよ・・・・・・ん、ん、ん、ん!」
レナさんのピストン運動が一層激しさを増した。圭ちゃんの熱い息遣いが私にうなじ付近にかかる。
自分の仲間に陵辱され、私の中に凝り固まった快楽の奔流が飢えた獣のように一気に襲ってきた。
「いやぁああぁああぁ!! とめて!!!!もうだめぇえええぇえええぇぇ!!」
そのまま絶頂を向かえた私は、体を震わせながら横ばいに倒れていった・・・・・・

・・・・・・・・・・・・気を失っていたのか。
横になった体を起こそうとするがうまくいかない。まだ私の目隠しと手枷は解かれていないようだ。そう遠くは無い距離で二人の話し声が聞こえてきた。
『レナ・・・・・・詩音は、お前の言ったとおり俺たちのことを・・・・・・裏切っていると思うか・・・・・?』
「うん・・・・・・やっぱりその可能性は・・・・・・」
レナさんが口ごもったのがわかる。私の覚醒に気が付いたのだろうか。
「でもね・・・・・・圭一くん、大丈夫だよ・・・・・・だって・・・・・・」
レナさんの言葉が私に向けられていくのがわかる。
「もう詩ぃちゃんの身体、全部覚えたから・・・・・・」
部屋の雰囲気がまたもや徐々に凍っていくのを肌で感じた。
「もし私たちを裏切ろうとしても無駄だからね」
氷のような冷たさを含んだレナさんの声は明らかに私に対して放たれたものだった。



真っ暗な闇に包まれて虫たちのざわめきも聞こえなくなったその日の深夜、ようやく園崎本家に帰って来た。
「それで・・・・・・どうでしたか・・・・・・お姉」
私の貸したサマーセーターとスカートに身を包んでいる、私と瓜二つの存在に声を掛けた。
まるで私が二人になったような奇妙な感覚に陥る。
「・・・・・・やっぱり圭ちゃんたち本気だった・・・・・・詩音の言うとおり・・・・・・」
頭を垂れてうなだれたお姉がそこにはいた。私は前原屋敷であった一部始終を聞く。
計画の実行日、場所、方法、アリバイ工作、そしてお姉が受けた【尋問】とやら・・・・・・
「尋問ですか・・・・・・お姉だったってことはバレてませんよね・・・・・・」
「・・・・・・それは多分大丈夫だと、思う・・・・・・でも」
初夏だというのに、自分の肩を寒そうに抱きながらお姉は続けた。
「まさか、レナが・・・・・・あんな事を・・・・・・私に・・・・・・しかも入れ替わりのことを真っ先に疑ってきたし・・・・・・」
どうやら、私が考える以上の辱めをお姉はレナさんから受けたのだろう。
それにしても、あのレナという少女・・・・・・さほど面識はなかったが初っ端からこれほどまで疑ってくるとは・・・・・・
「でも、これであの二人の動きがはっきり判明しますね・・・・・・」

私は今日の夕方、あの二人の計画を聞かされ承諾した。その後、本家に帰りお姉に打ち明けた。
お姉は愕然として固まっていた。それもそうだろう、自分の仲間が殺人の計画を立てているなんて想像も付かなかったのだろう。そして、私の思惑通り、お姉は私との入れ替わりを求めてきた。
「圭ちゃんとレナが本気なのか・・・・・・私が行って確かめてくる・・・・・・詩音はここで私の振りをして待ってて。あと、今から○時間後に前原屋敷に電話を・・・・・・うん、私と連絡するために・・・・・・」
その後、私はお姉の私服を着込み魅音として本家で一時を過ごした。それからお姉に指示された時間通りに圭ちゃんの家に電話をかけて・・・・・・
そう、私は既にレナさんが疑う前からお姉と入れ替わっていた。
お姉としては仲間が殺人者などになって欲しくない一心でこれからあの二人の計画を防ぎにかかるだろう。
私としては・・・・・・
・・・・・・ククク・・・・・・くけけけけけ
レナさんたちの計画通りに進めば、悟史君を追い詰めたあの腐り切った夫婦の片割れをレナさんたちが殺してくれる。私の手を汚すことなく・・・・・・
もし魅音が二人を止めたとしても、沙都子が鉄平に晒され苦しみ続けることになる・・・・・・
悟史君に寄生してボロボロにしたあの憎い沙都子が・・・・・・あんな愚かしい奴など救う気にもならない。
レナさんたちはどうして沙都子のために自ら捨て身になるような馬鹿な真似ができるのだろうか・・・・・・
あんな奴は一生苦しみ続ければいい。
そして、魅音だ。レナさんたちの計画を防ぐためあいつは動く。その過程で、もしヘマを働けばたちまち二人から返り討ちに合うはずだ・・・・・・悟史君を救う力を持ちながらそれをしなかった魅音。その報いを・・・・・・自分の信じた仲間から受けることになる。
つまり、ことがどう転ぼうが私の良いようにしかならないということだ・・・・・・

「詩音・・・・・・?」
少し体を震わせていたお姉はちょっとばかり考え込んでいた私を不安げな目をして見つめている。
さっき受けた尋問とやらの余韻が残っているのか、お姉の頬は少しばかり紅潮していた。
私の術中にいることに気が付かない、私の姿をした愚かで可愛い可愛いお姉をにっこりと見つめ返す。
「心配しないで、お姉。私が一緒についてるから・・・・・・ね・・・・・・お姉・・・・・・」

  • fin-

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最終更新:2007年12月21日 23:28