「んん……はぁ、ちゅ…………ぁ……けいちゃ、ん、む……」
……抱き合ったまま、俺たちはいつしかキスをしていた。
互いを遮るものがひとつだけ無くなったから、縮まったその距離を確かめるように。
「んんんっ……んく、ん…………っ、あむ……は、ぁ、ああっ……
 はあっ……はあっ…………ぁ、あの、あのね……圭ちゃん、私もう……今度こそ、大丈夫だよ……」
「…………ああ、わかったよ。でも、本当に大丈夫か?
 なんだったら、もう一回、濡らしたほうが……」
「ん…………で、でも……さっきから、圭ちゃんのが私の体に当たってて、なんかすごく苦しそうだけど……」
「ッ!!…………いや、これはっ!えっと、その、決して不埒な目で見てたわけじゃなくて、
 あ、違う……不埒な目でも見てたんだけど、それだけじゃなくって!
 だって、その、そんな格好のお前とこんなにくっつくなんて初めてで、だから、えっと…………」
魅音の指摘どおり、俺の下半身はさっきからずっとガチガチに張り詰めたままだった。
ったく、萎えるよりはマシだけどなんて恨めしい……
「……プッ、くく…………あははッ……!
 もう、圭ちゃんってば……ムード台無しじゃない…………」
「あ、魅音……」
魅音が、笑ってくれた。たぶん、いまはそれがなにより嬉しい。
「圭ちゃんは……やっぱりエッチなんだよね」
「う、うっせえ。スケベで悪いかよ……」
……だから、俺もいつものように軽口で返す。
「ううん、嬉しいよ……だって、私のカラダで興奮してくれてるんでしょ……?」
「…………ああ、すっげえ興奮してる。
 もう一人じゃ収まんない。だから……魅音の中、入りたい」
「うん、いいよ。来て…………圭ちゃん」

魅音が再び布団の上に横たわる。俺はその隣でとりあえず上半身裸になってから、
用意していたコンドームを、昨日の夜に嫌というほど練習した通りにペニスにはめた。
「その、痛いとは思うんだけど……」
「うん……でも、今日はぜったい……我慢するから」
「わかった……じゃあ、挿れるからな」
その言葉を合図にして、ペニスの先を魅音の入口にあてがう。
自分の大きさに自身があるわけじゃないけど、
あらためて見ると魅音のそこは俺が入るのを別にしてもずいぶんと小さいような気がする。
まだ少し不安はあったけど、それでも俺は一度大きく息を吸ってから、魅音の中に入り込んだ。
「ひっ……!うあぁっ……ぅぁぁあああああっ!!」
……最初は割とすんなり入ったのに、それから突然嘘みたいに強い肉の抵抗に襲われる。
本当にこのまま先に進めるのか怖くなってくるくらいだ。
「くっ……魅音、ちから、抜いて…………!」
「ひうっ……く、あ、ああっ、ん……くぅううっ」
魅音が力を抜いているのかも分からないし、それで本当に効果があるのかも分からない。
だから俺は仕方がないと覚悟を決めて、無理矢理押し込むように奥へと進んだ。

ようやく根元までを魅音の中に侵入させると、動くのを止めて魅音に声をかけた。
「これで、全部、入ったけど……っ、大丈夫か…………?」
「ん、ううっ……だいじょうぶ、じゃ、ないい……っ、いたい…………いたい、よおっ……」
目を向けると、さっきやっと笑ってくれた魅音がまた涙を流していた。
さっきまでの涙とは違うって分かってるのに、どれだけ痛いって言っても退いちゃいけないのに、
その辛そうな表情に、つい余計な言葉が口をついてしまう。
「その……どうしても我慢できなかったら、一度抜くから……」
「ちがう、の…………っ!いたい、から……いたいから、キス、してよぉ…………」
「…………わかった。じゃあ、もうちょっとだけ我慢しろよ……んっ…………」
「……ん、んんっ……んぷ…………ちゅっ、ぅ、ふうっ……ん、ああっ……!」
これまででいちばん激しいキスを交わしながら俺は再び魅音の中で動きはじめた。
ゆっくりと腰を引いて、まためりめりと音がしそうなほどの圧迫の中を進む。
「あ、む…………ちゅぷ……ん、んっ!ふぁ、ぁ…………やだ……もっとぉ……」
魅音の中は、何もかもが想像以上だった。
ペニスが手の中で握り潰されてるみたいにキツくて、人間の体温とは思えないくらいに熱い。
……なのに、頭が痺れるほど気持ちいい。
これは、絶対にまずい。こんなこと本格的に覚えたら、間違いなく溺れちまう……
「あ、あああっ!…………くっ、うぅ……ううううっ…………」
出し入れしているペニスに破瓜の血が付いているのに今さらになって気付いた。
だけど、動きが自然と早くなってしまうのをどうしても止められない。
せめて少しでも痛みが紛れればと思い、胸の膨らみに手を伸ばして優しく揉みしだく。
「ふあああっ、あっ、あんっ……圭ちゃん…………やぁ、あ、あ……!」
「魅音、みおん…………っ!」
コイツに、俺の気持ちが届いていますように。俺が、そばにいるって信じてくれますように。
快感に全てを任せてしまいそうになって、後はもう祈るようにそれだけを考えながら魅音を貫いていた。
「あぅ……んんっ、ねぇ…………っ、わたし……きも…………ち、いい?」
「くっ…………っていうか、気持ちよすぎて、そろそろやばい…………っ」
……実を言えば最初に挿れた時からかなり危うかった。なんとか我慢してたけど、もう限界が近い。
ペニスの先っぽの感覚が痺れてきて、今にも弾けそうになる。
「……ごめん、魅音。最後だけ……あとちょっとだから……」
「……ぇ?…………ん、んうっ!ああっ……ああああぁぁっ!!」
俺は魅音の腰をおさえつけると、一切の加減をせずに速度を上げた。
「魅音……ぜったい、忘れんなよ…………
 お前は俺の彼女なんだから……何があっても、俺はお前のこと好きなんだからな…………!!」
「うん…………うんっ!ぁ、ああっ……わ、わたし……もっ、けいちゃん、だいすき…………
 すき、だいすき……ふぁああっ、あっ、あ、あ、あああああああああっ!!」
最後に力の限り魅音を抱きしめて、突き刺すように腰を押し入れる。
……そうして全身が強張り、目の前が真っ白になりそうなほどの快感を伴いながら、俺は魅音の中で果てていた。
「……ぁ、ぁ…………けい、ちゃん……終わった、の…………?」
「……………………ああ、ホントに気持ちよかったよ……ありがとな…………」
それだけ言葉を交わすと、俺たちはまだ繋がったままでキスをしていた。

「……結局、制服にシワついちまってたな」
「そうだね……でも、アイロンかければ平気だから。朝になったら、圭ちゃんちの借してくれる?」
「そりゃあいいけどさ。けど、ああいうスカートにアイロンかけるのって、なんか大変そうだよな」
「あはは……まぁ、コツはあるけどね。そんなに難しいわけじゃないよ」
あれから俺たちは最低限の後始末だけを済ませて、今は明かりを消した部屋の中。
2人で寝るにはちょっと狭い布団の上で、眠気がやってくるのを待ちながらあれこれと喋っていた。
昨日までの俺だったら、女の子とひとつの布団で寝るなんて言われても
とにかくガチガチに緊張しちゃって眠れるわけがなかったと思う。
でも今は、完全とまではいかなくとも満ち足りてるから、隣にいる魅音の体温がすごく心地いい。
なにより、魅音と今までと同じように話ができているのが本当に嬉しかった。
「ふぁ…………」
……さすがにこんな安心感の中にいると、まぶたが重くなってくる。
「あ……そろそろ、寝る?」
「そうだな…………明日は早起きしなくちゃだし……」
なにしろ今日のことは詩音にしか教えてない。レナ達には……まだ少し言いづらいから、
朝の待ち合わせまでに魅音は一度家へ帰ることになっていた。
「じゃあ、寝る前に……さ、圭ちゃん…………」
「ん…………?」
魅音が体ごとこちらに向けて話しかけてきた。
今は頭のポニーテールを解いている。こうするだけで詩音と見分けがつかなくなるはずなのに、
俺にはもう、目の前にいる女の子が魅音以外の誰かだなんて思えなかった。
「今日は、本当にありがとう…………私、圭ちゃんのこと好きになってよかった」
「……俺の方こそ、ありがとな、魅音」
「いつか……いつか、ぜったい圭ちゃんに見てもらうから。だから……」
「……あんまり意気込まなくてもいいんだからな。俺、ちゃんと待ってるから」
「…………うん」
それだけ言うと、魅音は俺の手を握ってきて満足そうに目を閉じた。
このまま幸せだけに包まれていたくなるけど、俺は俺で考えなくちゃいけないことがある。

……これからは、もっと魅音のこと気遣ってやらなきゃ。
でないと、コイツはきっとまた今日みたいな無理をするだろうから。
魅音の『背中』を受け入れられるようになるまで、
今度こそ本当に2人が繋がる日が来るまで、俺がしっかりしなくちゃだめなんだ。


…………………………………………あれ?でも、そうすると…………

………………………………………………………………………………


「なあ……魅音」
「……………………ふぇ?」
魅音に声をかける。半分眠りの中なのは分かってたけど、どうしても気になることがあった。
「……あぁ、ごめんな、起こしちゃって。あの……ちょっと聞きたいんだけどさ、
 ええと……魅音がだな、その、背中を見せてくれるまでには……まだ時間がかかるわけだよな?」
「……それは………………ごめん…………」
「い、いや、違うんだ!責めてるんじゃなくて……!
 その間に、その、今日みたいにだな……したりってのは、できないのかなって思ったんだけど……」
「え……っ?それは、その…………
 圭ちゃんが、したいんだったら…………あ、ぁぅ……私も……いいよ…………」
「う……そ、そっか。でも、裸になれないってことは……」
「あ、うん…………服は、着たままにして欲しい」
「………………よ、よしっ!」
……思わずガッツポーズをとってしまった。
「え、なに……?どうしたの?」
「な、なんでもないっ…………なんでもないから、お休みっ!!」
さあ、俺も寝よう寝よう。なんたって明日は早いんだから……

「ねぇ…………圭ちゃん」
……と、その時、空気の匂いが……変わった。

「圭ちゃん、いま……なに考えてたの…………?」
「べっ……べべ別にっ、なんにもっ!」
「本当かなぁ…………だったらどうして嬉しそうな顔してたの…………?」
……ま、まずい、気付かれた!?
でも、言えるわけがない…………こないだ親父の仕事場でメイド服見かけたなんて……!!
「正直に言ったほうがいいよ……おじさんに分からないことなんてないんだから」
い、一人称が元に戻ってる……
っていうか魅音はどこだ?ここにいるのは一匹の鬼だけ……って、え?鬼!?
もう、だめだ……心の防壁がまるで意味を持たない。このままじゃ…………
「さあ、隠さないで……一体なにを考えてたの…………?」
「…………その、魅音さんもああ言ってくれてたことだし……
 次こそはコスプレHを楽しもうかなあなんて…………ハハ……は…………」
そう答えた次の瞬間、魅音が……跳んだ。

「……いでででででッ!!ごっ、ゴメン、俺が悪かったって!!」
「私がっ、あんなに、悩んで、考えたのにっ……!
 なんでっ、さっきは、いらないなんて言っといてっ……!
 どうしてっ、今になって、そういうこと、言い出すのよおおっ!!」
「だ、だ、だけどっ……いちおう合理的だと思って…………
 いでえええええええぇぇっ!!っつーか、苦しい!……死ぬ、死ぬってば!!」
「圭ちゃんなんか……圭ちゃんなんか、いっぺんあの世で反省してきなさあぁぁぁぁい!!」
……その後、エキサイトした魅音を静めるのは本当に大変だった。
だけど、後ろから絞められてる間も、
俺は背中に感じる膨らみとかすかに漂うレモンの香りにドキドキさせられっ放しだった。

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleの プライバシーポリシー利用規約 が適用されます。

最終更新:2006年10月24日 15:56