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鬼畜王K1 〜鬼し編・其ノ陸〜<聖職者>

その27からその30まで収録





  最も強い力で婦人を護り得るものこそ
  婦人の愛をうける値打があるのです。

   ゲーテ『ファウスト』第二部第三幕より


  婦に長舌(ちょうぜつ)あるは、維(こ)れ厲(れい)の階(はし)なり。

  【女のおしゃべりは、世の中を乱す階段である】

   『詩経』大雅(たいが)・蕩之什(とうのじゅう)・瞻卬(せんぎょう)より


さて。
レナに魅音攻略の秘策を授けた、次の日のことだ。

「あれ~?圭一くん、目の下にクマさんが出来てるよ?なんでかな?かな?」
いつもの待ち合わせの場所に着いた後、レナが俺の顔を見て訊いてきた。
俺は完全に寝不足だった。
夢を見た。それも、『悪夢』と言って差し支えないような内容の。
…俺が殺される夢だ。いや、正確には——俺が死ぬ夢だ。
俺は自分が殺される瞬間を、まるで傍観者のように見ていた。霊魂だけが肉体を離れたように、自分の死を眺めていたのだ。
夢の中で客観的に自分を眺めている、というのは時々ある。だが、昨晩の夢が異様に感じられたのは、俺の死に方だった。
俺は夢の中で、包丁を手に、喉を貫いていた。キッチンに血溜まりを作りながら、何度も何度も。
やがて包丁が喉に突き刺さったまま、前のめりに倒れる。それをずっと、もう一人の——意識が有る方の俺は見続けていた。
そして、死んだ俺を茫然と見ていた時だ。キッチンに入ってくる人影が、二つ。
レナと、魅音だった。
彼女たちは死んだ俺に歩み寄って、無表情のまま見ていた。
しばらくすると、レナがしゃがみ込んで、死んだ俺の頭を撫で始めた。そして、ぼそりと言った。
「…あーあ、圭一くんも駄目だったかぁ」
抑揚の無い声で。まるで、実験に使ったモルモットが予想通り死んだ時のように。
その時、俺は——彼女たちを見ている、意識が有る方の俺は、戦慄を覚えた。
夢の中で寒気を覚えた瞬間、目が覚めて——悪夢から解放されたのだ。
時計の針は三時半を指していた。その後、なかなか寝付けずに——陽が登ってしまったというわけだ。
こんな夢を見て。気分がいいはずがない。
「…昨日は遅くまでテレビ観てたんだよ…」
レナにはこう弁解しておく。
「はぅ~…夜更かしはいけないんだよ、だよ?ちゃんとお眠りして、明日のために元気を蓄えなきゃ」
「あぁ…そうだな…ふあぁぁぁ~」
欠伸で返答するが、レナは心配そうに俺の横顔を見ていた。そのうちスッと視線を落とし、ボソボソと何か呟いている。
「…レナが圭一くんの…めさんなら、テレビで夜更かしなんてさせないのに…」
「は?レナが俺のなんだって?」
「!…う、ううん!何でもないよ、只の独り言だよ、だよ!」
…まぁいいか、今の俺はマジでパワーダウン中だ。学校でも大人しく居眠りさせてもらおう。
…『弓』こと知恵先生が、指に挟んだチョークを飛ばしてこないことを祈るが…。
眠気眼をこすりつつ、今度は魅音と合流する。
「レナに圭ちゃん、おはよ!…って…なぁ~んか圭ちゃん眠そうだねぇ?」
「…夜更かししちまったんだよ…悪いが今日は大人しくさせてもらうぜ…」
「ありゃ、つまんないなぁ。…じゃあ、おじさんのぱふぱふ攻撃で起こしてあげようかな?」
「はぅ、魅ぃちゃん…そんなことはいけないんじゃないかな、かな?」
「じょ、冗談だってレナ!そんな構え取らなくても…って、もう8の字ウィービング始めてるし!?」
俺は眠気に襲われつつ、コントを演じる二人を眺めていた。
…ミンミンゼミのなき声に混じって、「まっくのーうち!」「まっくのーうち!」と連呼する声が聞こえた気がした。
…こうやって、微笑ましいやり取りをしている二人だが、夢の中でのこいつらは、その瞳に冷ややかなものを秘めていた。
…あれは俺の意識の底にある、彼女たちへの「恐れ」が夢の中に表れただけに過ぎないのだろうか。
それとも…脳内の未知なる部分にあるという、「予知能力」が見せた、俺の未来だったりするのか。
…そんなのあってたまるか。俺が死んでたまるか。
何より——こいつらに殺されるのも、まっぴら御免だ。
そもそも、「殺す」だの「殺される」だの、そういう話が俺たち『仲間』の中にあってはいけないんだ。

…俺はこいつらを、自らの愉悦のために使いたいとは思うが。命のやりとりなど、あってはならない。

——ん?ということは…つまり。こいつらの命が危険に迫った時は、守らねばならないという論理も成り立つな。
——それはそれで、いいかもな。

レナと魅音のじゃれあう様を見ながら、俺は知らないうちに微笑していた。

学校に着いても、俺の調子は上がらなかった。
昼休みになっても机の上でゴロゴロする俺に沙都子がちょっかいを出そうとするが、梨花ちゃんに諭されて離れていった。
窓際では、レナと魅音が二人で何か話しているようだ。
深い眠りに落ちそうなのを耐えていると、不意に思いもよらなかった単語が聞こえてきた。

「綿流しの晩に失踪したらしいよ」

…ナニヲイッテイルンダ?
声の主は魅音だ。まさか…レナに、富竹と鷹野のことを話しているのか!?
「…けさん、…たけさんなの?」
「…知る限りではね」
「…他にもいるんでしょ?」
「彼女が祟りにあったのか…『鬼隠し』にあったのかはわかんないけどね」
やっぱり魅音の奴…!
よりにもよって、レナに今年の『鬼隠し』のことを不用心にベラベラと…!
俺は今すぐにでも起き上がって魅音の口を塞ぎたい一心だったが、それはマズい。
なぜなら、表向きとして雛見沢においては、俺はまだ『鬼隠し』も知らない新入り扱いである。
その立場を崩さずに真相を探らねばならないのだから、畢竟『無知』を装わねばならない。
ゆえにこの場は大人しく会話の内容を探るしか出来ないのだ。大それた発言も動きも、今は許されない。
俺は居眠りしているふりをしつつ、二人の会話に耳を傾ける。
「いずれにせよ、もう一人いるんだよね…だよね?」
「オヤシロさまなら…ね」
「じゃあレナたちが知らないだけで…誰かが…たかもしれない…ってこと?」
「…かも、ね…」
「…次は…レナ、かな…」
「…大丈夫だよ、レナはちゃんと帰ってきたよ」
「…でも…くんは駄目だったんでしょ?」
「昔の話だよ…もうやめよ、この話」
…まずい。やはり、レナに今年も起こってしまった『オヤシロさまの祟り』を教えるべきではなかったのだ。
あいつの祟りに対する恐れは尋常ではない…それは大石に言われたことでもあるが、俺自身もレナと交わりながら感じたことでもあった。
レナを心底から服従させるためにも、今年の祟りのことは絶対にレナの耳に入れてはならない。…それが俺が出した結論だった。
…なのに、魅音はそれをベラベラと喋ってしまった。
散々レナの恐怖心を煽っておいて、「もうやめよ、この話」はねぇだろうよ、魅音…!
しかし、今やレナが知ってしまった以上、早く『オヤシロさまの祟り』の正体を暴いてあいつの不安を払拭してやらねばならないだろう。
そのためにも、やはり…魅音を俺の意志に沿うモノに仕立て上げねばならない。
今回のような、空気を読まないことを平気でやらかす奴だ。俺が御しなければ、いずれどんな動きを見せるか分からない。
…そもそも、何故魅音が『今年のオヤシロさまの祟り』が起きたことを知っているのか?
おそらく園崎家の情報網があるからだろうが、警察内部の機密まで入手出来ているとはな…さすがに雛見沢の暗部を司る一家はあなどれないということか。
やはり園崎家が黒幕に近いのか…あるいは、黒幕自身なのか。
そうであるならばリスクの高い正面対決ではなく、園崎家次期当主を俺の配下にすることが上策だろう。
『オヤシロさまの祟り』の正体を暴き、雛見沢における俺の名声を高め、影のフィクサーとしての前原圭一=雛見沢の『神』としての地位を安泰にする…。
ならば俺とレナの手で、園崎魅音を「陥落」させることが先決だ。計画を早めねば…!
俺は眠気をようやく一蹴し、「あー、よく寝たぜ」とぼやきながら立ち上がる。
…その瞬間、みんなの外履きが俺の頭上にポコポコと落ちてきた。沙都子のトラップに引っかかったらしい。
…まったく、今日は散々だぜ…。だが、魅音を堕とすことだけは失敗しないさ。
…そう、俺には頼もしい『仲間』…いや、『配下たち』がいるからな…くっくっくっく!

俺はレナを廊下に呼び出し、こう耳打ちする。
「…今日の放課後。魅音を『俺たちの部活』にご案内する」
「…ッ!」
息を飲むレナに構わず、俺は口元を歪めながら言葉を続ける。
「…いつもの『部活』は今日だけ中止にする。レナは魅音を××し、その後…」
「…」
「…という風にな。…首尾良く行ったら…レナにかぁいい『ご褒美』をやろう」
俺はレナの胸をむにゅっと掴む。
一瞬「んうっ」と声を上げるレナ。だが喘ぐ声を押し殺しつつ、俺に囁く。
「…分かったよ、圭一くん…。レナ、魅ぃちゃんをうまく『部活』に誘うよ…」
「クク、その意気だ…楽しい楽しい『部活』にしような、レナ」
最後に乳首をつまみ上げ、俺とレナは教室へ戻る。
…平静を装って俺の後ろを歩くレナ。だが、俺だけは知っている。
牝狗としてのスイッチが入ったレナが、顔を紅潮させてしまっていることを。
…そして、その牝狗が明日には『二人』に増えることをな…あははははははははははははは!!!!

放課後。
「さて、いつもの部活の時間でございますわね」
「今日は負けないのですよ、み~☆」
沙都子と梨花ちゃんが、俺たち上級生組の机に集まってきた。
だが、そこで魅音が顔の前でパンッと手を合わせてこう切り出す。
「あ~、三人ともごめんね~。おじさんさぁ、これからレナと行かなきゃいけないところがあるんだよ」
突然の部活中止に、沙都子と梨花ちゃんがきょとんとしている。
「ごめんね、みんな。今日は魅ぃちゃんと、興宮まで行かなくちゃいけないの。
レナのお家で家具を買うことになって、魅ぃちゃんのお知り合いの家具屋さんで選べることになったから、魅ぃちゃんにも付き添いを頼んだの…」
レナも二人に謝る。
…いいぞレナ。こういう理由なら、沙都子と梨花ちゃんが入り込める余地はない。
俺が指示した通り…全ては俺の計画通りだ。
「なぁんだ、そういうことがあるなら仕方ねぇなぁ。んじゃ、今日の部活は中止だな。
…ま、明日は今日の分も含めて盛り上がればいいさ」
俺は何も知らないふりをする。
沙都子と梨花ちゃんも「そういう事情なら、仕方ありませんわね」「レナと魅ぃなら、きっといい家具を選べるのですよ。にぱ~☆」と部活中止を受け入れ、荷物をまとめて帰宅した。
…年少組には悪いが。ここから先は俺たちの『部活』の話なんだよ…。
沙都子と梨花ちゃんが帰ったのを確認すると、俺も荷物をまとめてレナたちに「じゃあな」と手を振り、教室を出る。
…昇降口に出ると、知恵先生が待っていた。
「知恵先生。…俺たち以外は、もう学校には誰もいませんよね?」
「ええ、全員帰宅しました。校長先生も、今日は興宮で教育委員会の会議があるために出かけられていますから、戻ることもありません」
「じゃあ、学校の鍵も、今は知恵先生が持っていることになるんですね?」
「ええ。…校舎と校門の鍵なら、ここに」
知恵先生が、ワンピースのポケットからキーホルダーについた鍵を取り出した。
俺はそれを受け取ると、ニヤリと笑う。
「…くっくっく。…よくやったぞ、『知恵』」
演じていた『生徒』の仮面を引き剥がす。それは俺だけではない。…目の前にいる『女』も、『教師』の仮面を引き剥がした。
「…ありがとうございます、前原くん」

知恵留美子…表向きは、雛見沢分校のただ一人の教師。
だが、もう一つ…俺が雛見沢で最初に――転校初日に――堕とした『女』としての顔も持っている。
…レナたちは牝狗として従えるつもりだが…こいつは別枠だ。
教師としての立場がある以上、あまり露骨に接すると周りに勘ぐられてしまうかもしれないからな。
あくまでも『協力者』であるが…それでも俺にとって大事な手駒であることに変わりはない。
…命令を忠実にこなす点でも信頼出来る上、本当に素直で可愛い奴だ…。
「知恵、感謝するぞ…お前の協力が無ければ、今回の策は破綻するからな」
俺は口元を歪めつつ、知恵の白いワンピースの上から形の良い乳房を揉んでやる。
「あ…ん、あ、ありがとうございます…私が、前原くんに『ご奉仕』出来て…むしろ光栄です…」
愛撫に耐えながら、知恵は息遣いを荒くしていく。
俺は右手で乳房を愛撫しながら、左手をワンピースの下から突っ込み、知恵の秘部をヌチャヌチャといじくる。
「んんッ、ああんッ!…前原、くんッ」
「くくくく、知恵…ちゃんと言い付け通りに、毎日ノーパンで教壇に立ってるようだな」
そう、俺は初めてこの女をモノにした後、ある条件を出した…「これからも俺に抱いてほしければ、毎日ノーパンで教壇に立て」と。
「は…はい、今日も、明日も…んくぅッ!…前原くんの言い付け通り、ノーパンで教壇に立ちます…あぅッ!!」
「クク、お前はとんでもない淫乱教師だな!聖職者でありながら、純真な子供達を導く立場の教師でありながら、ノーパンで感じる変態だとはな!!
生徒に見られるかもしれない、気付かれるかもしれないというスリルでオマンコを濡らしてるんだろ、お前はッ!!」
「ひぁッ!!…あ、あんッ、そ、そうです…!知恵留美子は、子供達に気付かれたらどうしようって思うだけで濡れてしまう、変態でドスケベな淫乱教師なんです…んんうッ」
俺は胸への愛撫と秘裂への責めを激しくしながら、知恵の唇を塞ぐ。
無理矢理舌を侵入させ、口内を蹂躙する。それに応えるように知恵も舌を絡め、お互いの唾液が混ざり合う。
「…ぷはッ!…くっくっくっくっく!大変良く出来たで賞、だな!…いい子にはご褒美あげようか、そらぁ!」
「んん、んふッ!…ん、あ、あああ、イ、イク!イッちゃいます…ッ!!」
知恵は俺にしがみつき、崩れ落ちそうになるのを堪える。だが俺は手を休めず、むしろ激しく手を動かし、知恵を責め立てる。
「ははは!いいぞ、ここでイっちまえ!ただし声はあんまり上げるなよ、レナたちに気付かれたらヤバイからなぁ!!」
「ん、あ、あ、んん、あああ、イ、イク、イク!んんんんんーーーーッ!!!」
知恵は俺の胸に顔を押し付け、なんとか声を大き過ぎない程度にして果てた。
俺は知恵の身体を抱きとめ、ビクビクと身体を震わせる知恵が落ち着くまで待ってやった。
…息が落ち着いてきた知恵は、俺を潤んだ瞳で見つめてくる。…哀願する牝狗の瞳。…やはりこいつも、そこまで堕ちている女に変わりないか…!
俺はニタリと笑みを浮かべ、知恵に囁く。
「くくくく、知恵…。レナが魅音で『遊んで』いる間…もうちょっとだけ『ご褒美』をやってもいいぜ…?」
知恵は瞳の奥で欲情の炎が点いたようだった。
…それは、さらなる快楽を得るためなら狗にでもなんでもなろうというスイッチが入った証拠。
「…はい、ありがとうございます…前原くんのコレで…私の膣内を存分に楽しんで下さい…んっ」
知恵はズボンの上から俺の逸物を擦りつつ、唇を重ねてきた。
俺は知恵とキスしつつ、レナたちのことを思った。
うまくやれよ、レナ…こいつへの『ご褒美』後になっちまうが、お前たちにもちゃんと『ご褒美』くれてやるからな…!
はは、はははは、あはははははははははははははははははははは!!!!!


次回

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最終更新:2008年02月08日 02:13