「お姉、起きてくださいよ。……お姉ったら」
「う、う~ん…。も、ダメ…無理ぃ…」
綿流し祭の打ち上げ後、すっかり出来上がってしまった魅音は私の膝を枕にして伸びていた。
厄介な事になったもんだ。既に今日は泊まると言ってしまった。
一晩これの面倒を見なきゃならないのか…うんざりしながら、今日の事を思い出す。

「本当に二人はそっくりだなぁ」
「そっくりなのは顔だけじゃないんですよ?ほらっ!下着の色も……」
「ぎゃああああっ!!?あ、あんた何すんのよぉおぉお!!!!!!」

真っ赤になって泣きそうなお姉の顔を思い出すだけで笑えてきた。今日は随分とお姉をからかった気がする。
……こういうスキンシップを、笑って出来るようになるなんて、凄い進歩だ。
ここまで思考を巡らせて、私はまた苦笑した。
今更こんな事を思い出すなんて、……今日は私も酔ってるのかな。
柱に頭を預けて、ゆっくりと目を閉じた。

――数年前。それはまだ私が『魅音』だった頃の、ほんの些細な悪戯だった。
友人達との隠れんぼの途中、私は少しでも鬼の子の裏をかこうと、普段訪れる事のない河原へと駆けていった。
予想通り、そこは私が一番乗り。あとは死角になる岩の影にでも隠れて、戦況を見れば良い。
そう思って一歩を踏み出した時、かさり、と足から砂利以外の何かを踏んだ感覚が伝わる。
何だろ?……紙?足元に視線を落とすと、それはどうやら雨風に晒されて変色し、みすぼらしい姿に変わり果てた週刊誌…のようだった。
流れついたのか、誰かが捨ておいたのか周辺には同じような雑誌が点々と転がっていた。
ったく、汚いなー……。眉を顰めて踏みつけていた足をどける。
再び駆け出そうとした私は驚きに目を見開いた。週刊誌だと思っていたそれは、どうやら、……世間でいうエロ本という物だった。
今なら一蹴するような低レベルの内容だったが、当時の私は色褪せた女の裸体から目を逸らせないでいた。

――暫しの間の後、私はゆっくりそこに腰を落とす。そして、石を使って直接触らないよう注意しながらページを捲る。
初めて見るものばかりだった。気持ち悪いけど、……もっと見たい。
妙な背徳感と好奇心に背中を押され、更にページを捲って凝視する。
何度か繰り返した時、私はぎょっとした。
見開きには何枚もの絡み合う女の写真。――そう、所謂レズ物ってやつだ。
「うっわ……」思わず声が漏れる。こんなの女同士で出来るんだ。変なの。ばっちいな。
なのに、私はそれらの記事から目が離せなかった。日が暮れ始め、辺りがオレンジ色に染まっても、睨み付けるように、ずっと見ていた。

「魅音ちゃんみっーけ!」
遠くから聞こえる友人の声にハッとする。隠れる事を忘れていた私はあっさりと見つかり、その日はお開きとなった。

―――――――
「あっ。お姉ちゃん、お帰り!」
「お帰りなさい、魅音さん。もうすぐお夕飯ですよ」
「んー……ただいまぁ」
出迎える詩音と葛西に適当に相槌を打つ。
家に帰ってもずっとアレが頭から離れない。私はご飯中も、風呂に入ってもずっと上の空の侭だった。

「じゃあお姉ちゃん、おやすみ」
「…おやすみ」
パチリと電気が消される。真っ暗で静かな部屋。……目を瞑るとアレが鮮明に浮かんできて眠れない。
イライラしていると、ふと背中越しに聞こえる詩音の寝息に気付いてそちらを見る。
「…………」

――どんな感じ、なんだろう。
気付いたら私は体を起こし、もぞもぞと詩音の布団に潜り込んでいた。
ちょっとだけ、……ちょっとだけ、試してみよう。詩音は妹だし、そういうのは知らない筈だから大丈夫。
私は頭まで布団で覆うと詩音の上に重なった。
そっ…とパジャマの上から体を撫でる。詩音は小さな呻き声を洩らして身を捩った。
ゆっくりゆっくり、パジャマの中に手を忍ばせて、鎖骨辺りまでたくし上げる。緊張と興奮で、ゴクリ…と喉が鳴った。

「……。お姉ちゃん…?」突如聞こえた、寝ぼけた詩音の声。驚いて思わず手を引っ込める…が、既に遅し。こんな状況、どうやって説明すれば良いんだ。
「な、何して……んっ…?」
手で詩音の口を塞ぎ、もう片方を人差し指を立てて自らの唇に当てる。
「しーっ!何でもないから、ちょっと静かにしてて」
ぱちぱちと瞬きして不思議そうに私を見る詩音に視線で念を押し、再び体に手を伸ばす。……もう隠す気なんかなかった。……いや、詩音になら別にバレても良いと思ってた。この子が怒ったところでどうってことないし。
「お、おね…ちゃ…!むぐ…」
驚いたような声を無視して、私と同じ程度に膨らみかけた乳房にそっと触れる。
「……詩音、痛い?」
ゆっくりと力を込めて揉むと、それは芯があって堅かった。
ふるふるっと無言で首を左右に振る詩音は恐らく真っ赤になっているだろう。私には容易に想像出来た。
両手で優しく解すように揉みしだく。詩音はパジャマの襟元をくわえて堪ていた。
「っぁ……!」
指が突起に触れた時、びくっと詩音の身が跳ねる。
「……ここ、痛い?」
指の腹でそっと撫でながら視線を上げて様子を見る。
「ん、んん…ち、ちが、う…けど……」
恥ずかしそうに顔を逸らしてもごもごと返す様子に、今日得た知識を反芻する。

「……もしかして、気持ち良いの?」
きゅっと強めに突起を摘むとまた詩音は声を漏らした。
「やっぱりそうでしょ」
「ぁ、ぁっ…ち、ちがっ…!」
いつもと違う詩音の声。息も上がって、摘んだ突起も心なしか硬くなっているようだった。
すごい、あの本の通りだ。
「っ、ひゃ…!ぁ…お、お姉ちゃっ…!?」
すっかり興奮しきった私は満足出来ずに、片方の突起に吸い尽く。
「や、やだぁ……お姉ちゃん、やだっ…」
私の髪を握り込んで、いやいやと首を振る詩音にイジメてやりたい気持ちが膨らむ。

ちゅっ…じゅる、ちゅう…
音を立てて吸い、飴玉のように舐ってやった。そのどこか懐かしい感覚が私にも心地良く、詩音の荒くなった息遣いを聞きながら夢中になって愛撫した。
「はぁっ……はっ…。ん、んんっ…」
長い間覆い被さる私を挟むようにして、もじもじと動く足に気付き、先端から唇を離す。……銀色の糸が隙間から漏れる光できらりと光って綺麗だった。
「どうしたの?もしかして、おしっこ?」
落ち着きない様子の詩音に問うと、潤んだ瞳は戸惑ったようにさまよい、小さく分からないと言った。
「そろそろ、こっちも見たいと思ってたんだ」

丁度良かったので、身を起こし、パジャマのズボンに手をかける。
もうちょっとだけ。もうちょっとだけ良いよね。
びくりと再び詩音の体が跳ね、驚いた表情で私を見る。
「やっ!な、…なんでっ……!?ちょ、待って…お姉ちゃんっ…!」
「…静かにしなって。変なんだったら私が見てあげる。おしっこじゃないんでしょ」
「で、でも……そんな、恥ずかしいよ……」
「どうせ私と一緒なんだから、今更だって。ね?」
「う、うぅ……」
嫌がる詩音を黙らせて、私は半ば無理矢理ズボンと下着を引っ張った。
「……!」
詩音は目を固く瞑って耐えていた。脚を大きく広げて、そこを、見る。

「うわ……」

思わず声が漏れた。初めてちゃんと見る、女の子のあそこ。それは想像以上に複雑な形をしていて……いやらしかった。
私のも、これとおんなじなんだ。そう思うとドキドキした。
まじまじと見た後、大きく息を吸ってから、そっと指で触れる。
くちゅ……。
小さく、響く水音。そこは少し滑っていた。
「詩音……。なんか、濡れてるよ…?もしかしてしちゃった?おしっこ」
「し、してな……」
「でも、ほら……」
もう一度、指を這わせて割れ目をなぞる。先よりも大きく水音が響き、詩音が呻く。
「っぁ…ん!ゃ…」
「詩音……ここも気持ち良い?」
「ちがっ……。は、はぁっ…」
そんな事知っていた。あの本でもここを触ってたから。
「あっはは……、詩音のエッチ」
「っ……!」
陶酔しきった声で煽ると、割れ目に指を挿し入れる。詩音が息を飲むのが分かった。

ちゅっ…くち…ちゅくっ…
初めての感触に指を探るように動かす。その度に詩音は小さく喘ぎ、身を震わせた。
「っん、くっ……ひ、あ、ぁっ…あっ……!」
そのうち、割れ目の中の一番硬い部分を指で押した時に、この子が一番反応する事に気付いた私は、面白くてそこを執拗に弄った。
指先で円を描くようぐりぐりしたり、つまんだり。まるで玩具のスイッチのようで、何度も何度も繰り返した。
「あ、あ、あっ……ゃっ、お、ねぇちゃ……んっ」
背中を仰け反らせ、ビクビクと体を震わせて悶える詩音の顔は、もうぐしゃぐしゃで。
「詩音。詩音のここね、すごいよ。ほら、…もうお布団までびしょびしょなの」
「ん、んんっ…ふっ…、も、も…やっ…!」
顔を寄せて囁いて、示すように大きく水音を響かせる。間近で見る詩音の表情が……あまりに、その………だったから、私は思わず口付けた。
そしたらもう本当にどうでも良くなって、舌で伝う涎を拭い、ちゅうちゅうと夢中で唇を吸いながら下半身を弄る手の動きを早める。
「んっ…む、ぐ…ふ、ふぇっ……」
詩音の手が私の揃いのパジャマを強く強く握り、足が体に絡みつく。
「も…ダメ?もう、つらい?」
返答は無い。…私は名残惜しさを感じつつも、詩音のスイッチを最後にぎゅっと強く摘んだ。
「っ!あっ…ふぁ、あっ、あ……っ!!」
詩音の体が大きく震え、…やがてはぁはぁと荒い息だけを残して静かになった。様子を窺うと、どうやら気を失ってしまったようだ。
取り敢えずそれから私はパジャマを直して証拠隠滅を図る。そして、ぽすんと隣に横になると……詩音を大切なお人形のように抱いて、眠りについた。

――それから私はこの行為の虜になり、夜な夜な詩音の布団に潜り込んでは体を弄ったり、触らせたりして遊んだ。詩音と秘密を共有するのが楽しかった。
そういう関係は暫く続いたけど、……あの事件。
そう。私が詩音になり、あの子が魅音になってからは自然に…というよりかは互いに気まずくて、するのを止めた。物理的にも離れてしまったし。
そうして今に至る訳だけど、振り返ってみると……とんでもない事をしてたと思う。無知故の恐ろしさというか、若さ故の過ちというか。
それはあの子も同じのようで、その件には一切触れないし、私達の間では所謂『黒歴史』となっている。
だから互いにじゃれるのを避けていたんだけど、最近は…そうでもない。何故か自然と戯れる事が出来る。
時が解決してくれたのだろうか。恋の話で盛り上がり、小突きあって笑う。姉妹として健全化していくようで嬉しかった。
私の膝に頭を預けて、相変わらず間抜けた顔で眠る魅音の頬にそっと触れ、撫でる。
「……詩音。ごめんね?」
その時、ぽたりとスカートに落ちる雫。

魅音の、涎だった。


……こんな顔、百年の恋も冷めるってもんですよ。私は脱力すると、静かに魅音をずらして自らも寝る準備を始める。
……そう、互いに思い人が出来た今、忘れた方が良いのだ。
明日になったら今日の酔っ払いお姉の痴態をネタに遊んでやろう。
そんな楽しい未来に思いを馳せて、私も深い眠りについた。

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最終更新:2010年03月05日 22:40