「ここはね、古手神社っていうの」
「『神社』か…。ってことは、ここには何の神様がいるんだ?」
「…オヤシロさま、だよ…だよ」
「…オヤシロさま…?」
「そうだよ…オヤシロさまはね…雛見沢の守り神なんだよ」
「ふぅん…神様、か…」


               × × ×


東京から雛見沢に引っ越してきて、一ヶ月が過ぎた。
この辺鄙な村落には、ゆったりと流れる時間と豊かな自然の他には何も無い。
確かに、ここはいい所だ。
だが…今の俺には、どうしても我慢出来ないことがある。

『女』だ。

『女』を喰いたい…!

もてあます情熱と若さの日々が、最近ずっと続いている。
だからと言って、この俺が一人エッチをするハメになるなんて…ッ!否、断じて否!

かつての俺は、くだらない勉強に日々を追われ、やりきれない鬱憤を街で女を喰らうことで晴らしていた。
表向きはモデルガンによる児童連続襲撃事件とされているが…。
それは、親父が警察上層部の知り合いと取り引きし、真相を葬るために仕立て上げられたスキャンダラスな見出しの事件に過ぎない。
真相は…連続女性暴行事件だった。
この俺が、何十人にも及ぶ女を言葉巧みに誘い、心酔させ、交わり、調教し、そして堕としていったのさ…!
下は年端もいかない幼女から、上は火照った躯を持て余していた人妻まで。「口先の魔術師」の前では、みんな股を開いた。
これはあらかじめ言っておくが、俺は性行為を強要したことは無い。女の方から望んでしたことだからな…ククク…。
だが、さすがに節操無くヤリ過ぎたせいで、俺は東京を離れるハメになった。
親父が庇ってくれなきゃ、今頃どんな扱いだったか…。ま、金持ちの家に生まれたのが幸いしたな。

そんな経緯を経て、ここ雛見沢にやって来たわけだが…。まったくもって俺は運がいい。
田舎の学校に転校すると聞いて、最初は落ち込んだものだ。
だが、転校初日に出迎えてくれたクラスメイトの女子は…正直、東京の女以上にみんな魅力的だった。
竜宮レナ、園崎魅音、北条沙都子、古手梨花。
俺を歓迎してくれたこいつらを初めて見た時…俺の中に眠っていた『鬼』が目覚めた。

『こいつらを…残らず堕としてやる』

俺無しには生きられないほどに心酔させ、その躯を喰らい尽くしてやろう。
あらゆる欲望・快楽を極め尽くし、善悪定かならぬ果てに届くまで、女を喰らい尽くす!

それは、俺の思い通りの『世界』を創ることに他ならない。
閉じられた『世界』=雛見沢を、俺が望む姿へと創り直す。
…創造は、凡庸な人間に許された行為ではない。『世界』の創造を可能にする存在のことを、人間は『神』と呼ぶ。
そう…俺は、雛見沢に君臨する新しい『神』になる!

その始まりとして、まずは…

竜宮レナ。
俺に一番近付こうとするこの女を、忠実な下僕に変えることから始めようか…。


  神々と肩を並べるには、たった一つのやり方しかない。
  ——神々と同じように残酷になることだ。

   アルベール・カミュ『カリギュラ』より



ひ ぐ ら し の  く 頃 に 〜鬼し編〜




次回

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最終更新:2008年02月06日 18:36