「はぁ……はぁ……はぁ……はぁ……」
 俺はいつもと明らかに違うその棒を放心状態で見つめながら、肩を息をする。
「……ふふふ、どう? 気持ち良かったかしら?」
 鷹野さんが相変わらず嗤いながら言う。だが、俺はそんな物は耳に入らず、魂の抜けたような顔で変わり果てた俺のモノを見ていた。
 女性の前で思いっきり射精してしまったことへの羞恥心、絶望感。
 皮が剥け、明らかに異変が起こっている俺のモノへの不信感と、ある意味での恐怖。
 そして、それらを静かに覆う、オナニーとは比べ物にならない快感への興奮と名残惜しさ。
 そんな物が俺の中を渦巻き、この頃には鷹野さんの目的の疑問や、俺が縛られていることへの恐怖心などすっかり抜け落ちていた。最早そんなことはどうでも良いようにすら感じる。
 ……そう、既に俺の頭は今の鷹野さんとの行為で一杯になっていたのだ。
 もっとあの快感を味わいたい。俺のモノを鷹野さんの体に擦りつけ、射精し、精液を塗りたくりたい。これで終わりだなんて、考えられない。そんな欲望が、俺の中を静かに渦巻いていた。

 ……これは、どう考えても異常だった。
 何故なら男の体という物は、一度射精すればそれまでどんなに興奮していようが一瞬で静まるように出来ている。射精してオーガズムに達すれば、それからしばらくは性的興奮は起きないようになっているはずなのだ。
 現に、俺のモノもさっき射精をした後、それまでの怒張が嘘のように静まり、重力に従って垂れ下がっていた。
 ……だが、どういうことだろう。俺自身の興奮は、さっきから全く冷めようとしないのだ。射精の直後こそは、羞恥心と絶望感に覆われその興奮が一旦隠れはした。
 しかし、今は全く逆で、むしろ俺の内に眠る快感への欲望が全てを隠し、飲み込んでしまいそうになっているのだ。
 そして、そうこう疑問に思っている内に、その欲望に反応するかのように、俺の肉棒へ体中の血液が流れ込んでいく。肉棒は、俺の懐疑心など初めからなかったかのように無視をし、その身を徐々に硬く、大きくさせていく。
 その姿は、もはや本当に別の生物だと言っても差支えがないかもしれない。

「あら、元気ねぇ。くすくすくす……」
 鷹野さんは、そんな俺のモノを見てクスクス嗤い、……そしてその場から立ち上がる。
 ずっと後ろから感じていた乳房の感触が急に無くなり、俺は寂しさを感じた。暗い森の中に取り残され、何処へ行けば良いのかわからなくなったように、背中の神経が戸惑う。
 立ち上がった鷹野さんは、こちらに笑みを向けたまま、窓の前まで静かに数歩下がり、丁度光がよくあたる場所で足を止めた。
 俺は、体を捻りながらその様子を見つめる。このまま鷹野さんが帰ってしまうのではないかと心配し、寂しさで体が震えた。
「心配しなくても大丈夫。お姉さんはいなくなったりしないから。……くすくすくす」
 そんな俺の様子を完全に見越したように、鷹野さんは笑いながらそう言う。さっきまでの俺なら、恥ずかしさで顔に火が付いたかもしれないが、今の俺はその言葉に深く安らぎ、安堵した。
 さっきまで子悪魔や悪魔のように見えていた鷹野さんの笑みが、今や女神のように見える。

 ……そして、数瞬の後、鷹野さんは笑みを保ったまま、自身のナース服のボタンへ手を掛けた。
 一つ、また一つ、プチプチと音を立ててナース服のボタンが解かれていく。俺はその光景を食い入るように見つめていた。
 真ん中の下までボタンが外され、胸元が開く。そして、さっき俺の背中を散々魅了した豊満な乳房が、黒いブラジャーに包まれてこちらへ姿を現す。
 それに反応して、俺の股間が直立に勃起した。もう、今すぐにでもその感触を味わいたくて仕方が無かったのだ。この手に縄がされていなかったら、とっくに飛び掛っていただろう。
 俺がその乳房に興奮している間に、鷹野さんは全てのボタンを解き終えた。そして、そのナース服を脱ぎ、傍らに落とす。
 そうして、俺の目の前には、上半身を黒いブラジャーのみで隠し、下半身はミニスカート姿の鷹野さんが残った。鷹野さんは妖しく笑い、こちらへ挑発的な目を向ける。

「……あらあら、血走っちゃって、怖い怖い。前原くんは、よっぽどお姉さんのおっぱいが好き見たいねぇ。くすくすくす。……だったら、少し面白いことをしてあげるわね。」
 鷹野さんはそう言うと、布団の傍に転がっていたローションの容器に手を伸ばす。そして、その容器を自分の胸の上で逆さまにし、中身を搾り出した。
 容器からトロリと出てきたローションは、そのまま鷹野さんの乳房へゆっくり落ち、谷間に沿って形を変える。俺はその光景を息を呑んで見つめた。
 そうしてしばらく絞り、容器の中が空になろうとした頃には、鷹野さんの柔らかい双丘の間に、大きな水溜りが出来ていた。無論、その水溜りを構成する液体はヌルヌルのローションだ。
 鷹野さんは満足そうにそれを見ると、容器を適当なところに置く。そして、先ほどの射精で汚れた両手を乳房の方へ持って行き、揉みしだき始めた。
 手の動きの通りに乳房が形を変え、精液とローションが混じった液体を塗りたくられる。鷹野さんの手はブラの中にまで及び、乳房全体に馴染ませるようにヌルヌルとした液体を広げていく。
 それにより、大きな双丘を包む黒いブラがローションに塗れ、艶やかに乱れた。しかし、それでもその中身は露出されず、俺は焦らされているような気分になる。

「……ふ、はぁ」
 ローションの刺激が大きいのか、鷹野さんは自らの乳首辺りに手が触れる度に少し呼吸を乱し、頬を薄く朱色に染める。その姿はひどく官能的で、つられて俺も自然に呼吸を乱していた。
 更に、ローションに混じった俺の精液が鷹野さんを感じさせているという想像が、俺の変態的な感性を強く刺激し、それに連動して、俺のモノはいよいよ主の腹に触れるくらい反り返し、その身を醜く痙攣させていた。
 ……いい加減、我慢の限界に近い。鷹野さんが何のつもりでこんな焦らすようなことをしているのかわからないが、そろそろ理性が吹っ飛びそうだった。
 後頭部、……いや、体全体が燃えるくらいに熱くなり、内から吹き出る獣のような欲望が俺を支配しようとしているのがわかる。それは、いつ俺がこの縄を引き千切り、鷹野さんに飛び掛ってもおかしくないくらい、猛々しかった。
 実際、引き千切るのは無理だろう。だが、俺の獣欲はそんな単純な論理すら判断できないのだ。犯したいから犯す。その動因と結果が絶対で、その過程にある障害とその後のリスクは全て省略される。
 そんな無茶苦茶な思考回路が、俺を徐々に満たしていた。
 そこには、自分が縛られたことへの恐怖心や、陰部を見られたことへの羞恥心に悶えていた頃の俺は、もはやミジンコほども残っていない。

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最終更新:2007年08月01日 16:45