「あうあうあうあうあう・・・梨花!お酒を飲むのはやめてくださいです!」
 月夜にどたどたと抗議している羽入を梨花はワイングラス片手にうっとうしそうに眺めている
「はいはい!分かったわ!今の私はワインなしでも十分幸せだから今回はしまっとくわ」
 そう言った私は二階の窓から赤ワインを捨てる。ぎょっとした顔で羽入は私を見ている
「聞き分けの良い梨花なんて見てて気持ち悪いのです・・・あうあうあう・・・」
 張り倒したい衝動に駆られるが我慢しておく。幽体だしね。私は代わりに冷蔵庫から出したオレンジジュースをなみなみグラスに注ぐ
「あの・・梨花・・機嫌の良いついでと言ってはなんなのですが・・・もう一つお願いがあるのですよ・・・」
「ふぅ・・いいわよ・・今回切り抜けられたのはあんたのおかげでもあるしね・・・っで?何?」
 オレンジ入りのグラスを口へと運ぶ
「お酒の次に僕が梨花にやめて欲しい事なのですよ・・・」
 む・・酒以外にやめて欲しい事・・・?キムチ?
「やーよ!あれをやめたらあんたの懲罰はどうすんのよ!」
「あう!梨花!あれを僕への罰でやっていたのですか!?ぁぅぁぅぁぅ!!!」
「それ以外に何かあるのかしら?」
「ひどいのですよ!僕は寂しそうな梨花の為にあんなに我慢して耐えてあげたのに!全部知っていたのですか!?」
 ?羽入の奴何を言っているの?そりゃあキムチは私が食べているのだから知ってるに決まってるじゃない?
「もちろん知っているに決まってるじゃない?私と羽入は一心同体な訳だし」
 口をパクパクと赤い鯉のような顔でこちらを見ている・・・何かを言葉にできない様だ・・そしてプルプル震えながら顔を下に向けブツブツと喋るように何かを言いはじめた・・

「・・・・・・・・・・さい・・」
「・・・羽入?声が小さくて聞こえないわよ?今なんていったの?」
「・・・・・をやめてくださいなのです・・・」
「はっきり言いなさいよ!だから聞こえないって!」
 と言って一息つきながらオレンジジュースを口へと運んだ瞬間・・・


「「「自慰行為をやめてくださいなのです!!!!」」」


 ぶほ!と口に含んだ物が羽入めがけて飛んだが、全てがすり抜けて畳にボタボタ飛び散っていく・・・今度は梨花の方がパクパクと赤い鯉状態になっている・・・口の周りにはだらしなくよだれの様にオレンジジュースが垂れている・・
「ッな・・ななななななななななななななななな!?ああああんた・・・覗いてたの・・・!?」
「あう!梨花は何を言っているのですか!一心同体だから分かると言ったのは梨花じゃないのですか!!!梨花が・・それを・・す・・・するたびに!僕も一緒にか・・か・・か・・感じてしまうのですよ!!あうあうあう!」
「そそそそ・・・それは!キムチの話じゃなかったの!!!?」
「あ・・あぅ?」


「ふぁ~梨花~~~?うるさいですのよ~むにゃむにゃ・・・」
「・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・」
 沙都子の寝言が終わった後、梨花は苺も真っ青な赤さで猛然と小声で羽入に語りかける
「(あああああああ!あんた!なんで今までそんな重要な事を黙っていたの!!!!?)」
 羽入が赤い顔でもじもじしながら答える
「ぁぅぁぅぁぅ・・梨花ならなんて言うんですか・・・ぁぅぁぅぁぅ・・・」
「(ッぐ・・・!じゃあ何!?いままで100年間は・・私が何処で・・・な・・・何をしてたか全部把握してた訳!?)」
「梨花が・・そ・・その行為を始めたのはだいたい・・ここ10年ぐらいで大体月一なのですよ・・・ぁぅぁぅぁぅ・・・」
「(ふぎゃーーー!!!!ホントにばれてる!???ぐにゃーーーー!!!?)」
 そう言ってゴロゴロとその場をのた打ち回っている梨花・・・ぁぅぁぅぁ・・やっぱり言うべきじゃなかったのですぁぅぁぅ・・・
 そして回るのがピタリと止まった。しばらくするとッガバ!!っと起きて羽入に向かって言った
「(じゃあ・・何?この先・・私が・・オ・・・・・・・・・・・じ・・自慰や・・た・・た・・た・・た・・他の人とし・・し・・したら・・あんたにも伝わるわけ・・・?)」
 そう言ったら羽入が両手をほっぺにおさえて、顔が「ッポ」と赤くなりやがった・・・・・・・・・・・・・・・
「ぼ・・僕は他の人とはしないでとは言いませんですよ・・・?で・・できれば1人でするときは・・・一言かけてほしいのです・・・急にされると・・ぼ・・僕にも・・構える覚悟が欲しいのです・・・ッポ」
「言えるかーーーー!!!!!!!!!!!!」
 梨花がポコポコ僕に拳を振り上げていますですが・・・相当切羽詰って僕が幽体なのを忘れてるみたいなのです・・・そして空中を殴る事に疲れた梨花が飛び散ったオレンジジュースの脇で力なく崩れ落ちてるのです・・あうあう・・・
「・・・・・・私達ってマジで一心同体なのね・・・・・プ・・プ・・プライバシーの侵害だわ・・・」
「ぁ・・あうー・・梨花・・ボ・・僕も昔はたまにはやっていたのですよ・・・?気持ちは分かるのですよ?ぁぅぁぅ・・・」

 羽入の慰めも空しく梨花は朝までブツブツ言いながら寝ずにすごしたとさ

END

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleの プライバシーポリシー利用規約 が適用されます。

最終更新:2007年05月23日 20:59